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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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第67話 リボーン

文字数:2887字

【さぁ、森沢亮次よ。炎の輪舞曲(ロンド)が奏でる舞踏会で死のダンスを踊らせてやる。行くぜ、野郎ども!】


【ウイ】 【アイアイサー♪ マイボス】


 勇者達は好機と見るや、一気呵成(いっきかせい)に攻め込んできた。


 俺は妖刀ツバキを[脇構えの型]で構えながら、口角を上げてほくそ笑む。


(フフフ、目に物見せてやるぞ! 危機は好機、好機は危機だ!)


 この戦いにおいて、要注意人物は勇者と弓士の二人。


 勇者ジークは長剣による近距離攻撃はもちろんだが、黒き炎を操って中距離や遠距離の攻撃ができる。


 (かた)や弓士バークレは遠距離攻撃を得意とし、近距離や中距離の攻撃も難なくこなすはずだ。


 拳闘士ライルは良い言い方をすれば近距離攻撃に特化しているが、悪い方をすれば近距離攻撃しかできない。


 正直、ツルッパゲ男の鉄拳攻撃は脅威じゃない。


 なぜならば、鉄拳を繰り出すための動作がモロ分かりだし、そして何より止まって見えるくらい拳闘士が放つ拳が遅い。


 あの破壊力の鉄拳が目にも止まらない早さなら脅威を感じるかもしれないけれど、どっちにしろ仮定の話。


 奴はいないものとして考えても問題ないだろう。


 勇者達を天に召させるスキルを発動するには、多少の時間を要するのだ。


 だから、まずは勇者、弓士、拳闘士の順で(たお)した後、俺は必殺スキルを放って奴等を天に召させる。


【オラァ、俺様の必殺バーニングブレイドをありがたく食らいやがれ!】


 そう勇者が叫びながら この男を先頭にして拳闘士、弓士が縦一列の布陣を敷き、敵めがけて疾走する。


 一番槍として突っ込んできた勇者ジークが、黒い炎を纏う長剣によって標的である俺を斬り裂くため、己が手にする愛剣を真一文字(まいちもんじ)に振り抜く。


(ク、クソ……)


【よっしゃぁぁあああ、いただきマンモスだぜ!】


 本来なら妖刀ツバキを一気に振り下ろし、赤髪赤目の男の長剣を無効化、返す刀で()()を食らわせてやりたいところだ。


 だが、雷撃をモロに受けたダメージがまだ残っているせいか、自分の思うまま体が動いてくれないのは本当に口惜しい。


(それでも! それなりには動くのだから、いくらでもやりようはある)


〘ブンッ!〙 【ちっ、この野郎!】


 勇者が振り抜いた長剣を素早く()(くぐ)ると、次なる敵の鉄拳が俺に向かって放たれた。


【ダイナマイトパーンチ!】 〘ピョン〙


〘ブンッ!〙 〘ダン!〙


【ワ、ワイを踏み台にした!?】


(悪いな、ツルッパゲ男さん)


 その言葉の通りだった。


 拳闘士ライルの鉄拳を飛び越えるように跳躍して躱すと、筋骨隆々の背中を踏み台の如くおもいっきり蹴って眼前にいる弓士に斬りかかる。


(たお)していく順番はズレたがしょうがない。まずはお前からだ、弓士バークレ!)


【こいつはマジで何なんだよ! い、射抜け〜、ボクのライトニングアローよ】


(させるかよ!)


 あの雷撃を再び食らうのは流石にマズいと思い、俺は〈縮地〉を発動して瞬時に間合いを詰めると、弓士の胸に妖刀ツバキを突き刺した。


〘グサッ!〙


【ぎゃぁぁぁぁあああああ!】


【【バークレ!】】


(よし、ここだ!)


 勇者と拳闘士は弓士が(たお)され、一瞬の隙を見せる。


 この好機を(のが)してなるものかとすぐさま〈空間転移〉を発動、そして拳闘士を飛び越えて勇者の目の前に姿を現す。


【て、てめぇ、森沢亮次〜】


 赤髪赤目の男は眉をヒクヒクさせながら、またしても俺をモリサワリョウジと呼び、悔しそうな表情をする。


【ふふふ、今回の勝負は負けたな。だがよ、俺様たちはアンデッド、すぐにまた復活してやるさ。てめぇを殺すまで何度でもだ。ほら、見ろよ、バークレも蘇ってきたようだぜ】


 負け惜しみでも何でもないだろう。


 それが事実であり現実、勇者達は何度でも蘇ってくるのだから


 しかし、残念だったな。


 神の祝福を受けて覚醒した必殺スキルを繰り出せば、お前達は蘇ることなんてできない。


 天に召すからだ。


 だけど、その前にまずは(たお)れてもらう必要がある。


 紅く妖しく光る妖刀ツバキを勇者の喉元に突き刺そうと構えた時だった。


 紅蓮の炎の中、ある男の怒号が響き渡る。


 俺の背後に立つ男、拳闘士ライル・ゲラの怒号だ。


【ワイ達は負けないぞ。絶対に負けないんだからな! ワイの名はライル・ゲラだ、本名田中健太の若き日のドリーム、それは……レスバ王に、ワイはなる!】


(何を訳の分からないことを言ってやがる。勇者を(たお)したら、次はお前だ! 大人しくそこで待ってろ、拳闘士ライル)


 妖刀ツバキがまさに勇者の喉元に突き刺さる瞬間に、ある音が耳に聞こえてくる。


〘ボンッ!〙


「な、何?」


 今の今まで息を止めていたことなど忘却の彼方となり思わず声を出してしまった。

 

 初めて目にする()()の塊がとんでもない早さで飛んできたのだ。それは間違いなく拳闘士の鉄拳から放たれたもの。


 サムライスキルは[ナゾノカタマリセマルキケン]と警告するが時すでに遅し。


(あれは何だ?)

 

 そう思ったのも束の間、俺の腹部に謎の塊が命中したのである。


〘ドゴッ!〙


「ぐぅっ!」


 その謎の塊を食らい、腹部の激痛と共にくの字に体が折れ曲がると、勇者達のいた場所から遠く離れた紅蓮の炎の手前まで弾き飛ばされてしまう。


 俺はまったく受け身を取れず、激しく地面を転がった後、(むな)しくうつ伏せになって横たわっていた。


(そ、そんな……近距離攻撃しかできないはずの拳闘士が中距離の攻撃もできるなんて……ク、クソ、こんなのいくら何でも想定外すぎるだろ……)


♢♢♢


【ライル、お前はいつの間にあんな攻撃ができるようになったんだよ? 俺様は今でも信じられねぇ、感動してマジでバーニングハートだぜ】


【朗報! 瞑想するために意識の奥の奥までダイブした結果、ワイはリボーンした模様】


【マジかよ! リボーンなんて最高にイカしてるぜ!】


【恐れ入ったよ、ライル。まさかこの土壇場でリボーンするなんて。ボクはマジで(うれ)ション5秒前さ】


【【バークレ!】】


【いやはや、なぜ(ゆえ)にこのボクだけ二度も死ぬんだよとアンハッピーな気分だったけど、今はスーパーハッピーな気分だね♪】


【【【!!】】】


【……ジーク、バークレ。リボーンしたワイが森沢亮次を仕留めるでござるの巻】


【ああ、リボーン祝いだ。ライルの好きにしていいぜ】


【本当なら二度も殺されたボクが、あいつを()るんだとわがままを言いたいところだね。だけど、リボーンしたシン・ライルに譲ってあげるよ】


【サンキューベリーマッチでござる。森沢亮次、ワイのリボーンした必殺ニューブローを食らい、そして血反吐を吐きながらも立ち上がったことは褒めてあげるの巻】


「ゴ、ゴハッ……俺はまだ戦える、こんなところで死ぬわけにはいかない」


【でも、サヨナラでござるよ。なぜって、お毛々のある奴は悪即パンチ&ついでにイケメン野郎も悪即パーンチだから。このワイが再び放つ必殺ニューブローであの世に逝け、我が好敵手()よ。ロケット波動カメハメ穀潰しのダイナマイトパンチ!】


♢♢♢


 そうだ。


 まだ死ねないんだ。


 だって、魔王軍を一匹残らず駆逐してない。


 悪の権化たる魔王だってぶっ殺してない。


 ……けれど、どうやらここまでみたいだ。


 エミリー、カリン、ゲイルさん、ガスさん。


 みんなの力になれなくて本当にごめん。


 俺は人生の幕を下ろすことになりそうだよ。



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