幕間 貴女は誰ですか?
文字数:1646字
「ほっ、良かった。大丈夫、大丈夫です、ゲイルさん、ガスさん。レインは炎柱の中で生きてます、もう心臓が止まるかと思った……本当に良かった〜」
「良かったっす! マジで良かったっすよ! やっぱり凄いっすよ、レイン殿は!」
「このクソ野郎のノータリンめ! 当たり前だろが! レイン殿がそう簡単に死ぬわけがない!」
レインが炎柱の中で生きていたことを確認できて喜びを爆発させるエミリーと二人の騎士。
でも、本当に無事で良かった。
手に手を取って喜び合うエミリー達の横で、わたしはほっと胸を撫で下ろす。
あの時、意を決した表情のレインがいた。
そんな彼がわたしとエミリーに視線を向けると、右手を掲げて別れの挨拶をした時、流石のわたしも愛しの人がこれからやろうとしていることを止めるため、光鏡壁を解除して洞窟から飛び出そうと思ったくらいだった。
今も目の前で降り注いでいる無数の銀矢。
レインは自分の置かれた状況を分析し、合理的な判断をしたのだろう。
10万の銀矢が降り注ぐ中にその身を置くか、それとも勇者達の見事な三位一体の陣容が待ち構える炎柱の中へ敢えて飛び込むか。
レイン・アッシュが下した二つに一つの判断は、己の命を自ら救ったのだ。
(凄い、凄いよ、レイン。あなたはわたしが思った通りこの世界を救う救世主になる人だ……わたしの愛しの人は救世主、わたしの救世主様だよ)
『いやぁ、ホントに凄い凄い♪ ドッキドキのドキドキだった♪ 妾も久しぶりにめちゃくちゃ興奮して手に汗握っちゃったよ♪ もう最高で〜すって感じの感じ♪』
……わたしは難聴ではない。はっきり言って耳は健康そのものであり、良く聞こえるほうだと思う。
だけど今、女の声を耳にしたような気がする。
それも、いかにも軽い感じでアホ丸出しの女の声が。
現在、この洞窟の中にいるのは紛うことなく四人だけのはず。わたし、エミリー、それとゲイルにガスの男女四人である。
わたし以外で洞窟の中にいる女は、エミリーただ一人だけだ。
そのエミリーはというと、相変わらずゲイルとガスの三人でレインの無事を喜び合っている。
……どういうこと? わたしの空耳? 色々なことがあって知らず知らずのうちに疲れていたのかな。
『違うよ、空耳じゃないからね』
(!!)
聞こえた、間違いなくわたしの耳に、ううん頭の中に女の声が聞こえたのだ。
『初めましてだよね、聖女カリン・リーズ』
(……誰? 貴女?)
『妾? 知りたい?』
(別に)
『……い、いや、あのさ、そこは知りたいって言うのが話の流れじゃない?』
(ふん、だいたい察しがつくよ。どうせあいつのお仲間って感じでしょ? 悪いけど、今のわたしは貴女たちの遊戯に付き合っている暇はないの)
『きっつ〜、遊戯とか言っちゃうわけ? でも、やっぱあいつが認めただけはあるね。そのくらいの気概がないと聖女は務まらないからさ。今、聖女がどういう状況にあるか理解してるよ。それでも、妾はカリン・リーズに語りかけている。それはね、あなたとレイン・アッシュに関わるとても大事な話があるから――』
(レ、レイン? わたしとレインの話って何よ? 早く話しなさいよ!)
『ちょっと先程とは打って変わって食いつきいいわね、あなた。しかしながら、その前に妾が誰なのか気になるであろう?』
(貴女がどこの誰かなんてまったく気にもならないし、これっぽっちも興味がない! そんなことよりわたしとレインの話を早くして!)
『もう〜、マジのマジで頭きた! ガチのガチで絶対話さないからね! 教えてやるもんですか! ホントにムカつく〜! キィィィ!』
(もう! 貴女がいったい誰なのかを聞けば、ちゃんと話してくれるのね? 絶対にわたしとレインの大事な話とやらを教えてよね!)
『さぁね、それはどうかしら? 興味あるならば、妾が誰であるかを聞いてみるがよい』
(はいはい、貴女は誰ですか?)
『ふふふ、知りたいの? そんなに知りたいなら教えてあ・げ・る♪ 耳の穴をかっぽじってよく聞きなさい、そしてびっくり仰天なさいよ、聖女カリン・リーズ! 妾は女神! そう、美の化身たる女神様よ!』




