表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/99

第64話 いざ参らん

文字数:2114字

 天の空には数多(あまた)の銀矢。


 その数は、約10万本。


 弓士バークレが一人の男を亡き者にするため、放ったものである。


「さて、どうするかな」


 そんな言葉とは裏腹に、俺は覚悟を決めていた。


 

 ――紅蓮の炎の中に突撃してやる――


 

 ここにいれば間違いなく死が訪れるのは必至。


 なぜなら、サムライスキルにある固有スキルのすべてを発動しても、10万もの銀矢を避けることなんて不可能だからだ。


 それならば、少しでも生き残れる可能性が高い紅蓮の炎の中に突っ込むほうが合理的だろう。


 喫緊の問題は拳闘士ゲイル。


 おそらくあいつが勇者と弓士の護衛役をしているはずなんだ。


 俺と同じく近接戦闘しかできないので、今回の攻撃に一切参加してない。


 勇者ジークが豪語していたからな。


〈パーティーは各々が役割を担い、そして適材適所で力を合わせて敵を討伐する〉


 それを考慮すると、拳闘士は紅蓮の炎の中で万が一に備えている。


 俺の奇襲に備えてだ。


 あの筋骨隆々のツルッパゲ男の鉄拳が待ち受けているけれども、奴の攻撃を何とか凌げれば勝機を手繰(たぐ)り寄せられる。


 10万もの銀矢の攻撃から生き残るにはそれしかない。


 危険地帯でもあり安全地帯でもある紅蓮の炎の中へ、突撃してやる。


 俺は〈空間転移〉を発動する直前、洞窟に(たたず)んでいたエミリーとカリンに視線を走らせた。


 二人は何かを感じ取ったのか、今にも泣き出しそうな顔になった。


 サッと右手を掲げ、かりそめの別れの挨拶を済ませ、紅蓮の炎に視線を戻して雄叫びを上げる。


「いざ参らん、紅蓮の炎へ! 空間転移だ!」


 この瞬間、10万の銀矢が()()()に降り注ぐ。


♢♢♢


 ワイ、拳闘士ライル・ゲラ。

 本名は田中健太でござる。

 素人童貞の26才。

 若き日の夢はレスバ王。

 そして今。

 紅蓮の炎の中、座禅を組んで全神経を集中させている

 の巻。

 黒髪黒目の超イケメン野郎が、いつ何時(なんどき)襲ってきても

 いいように隙間なく網を張っているでござる。

 穀潰しというベストパワーワードを使い、スレ住人達

 を論破できなかったことが唯一の心残りで早漏もとい

 (そうろう)

 万が一、森沢亮次がここに飛び込んできたら今度こそ

 必殺ダイナマイトパンチをお見舞いしてやる所存。

 お毛々ある奴は悪即パンチ!

 ついでにイケメンの奴も悪即パーンチ!

 ワイの名はライル・ゲラ。

 若き日はフッサフサのフサフサのマッシュルームヘア

 を(なび)かせていた模様。

 今はしがないツルッツルのツルツルのスキンヘッドの

 単なるスキンヘッダー。

 ワイの本名は田中健太。

 紅蓮の炎の中で瞑想する。

 敵の襲来に備えて。


♢♢♢


【ヒュー♪ いつ見てもバークレのエンジェルアローはイカしてるな。打ち上がる様は夏の花火を思い出すぜ】


【なるほど〜、言い得て妙だね、マイベストフレンド、勇者ジーク。ふふふ、天の空で爆音と共に美しい大輪の花を咲かせる。でも、花火と違うのは10万の銀矢が大地に降り注ぐのさ、標的を抹殺するためにね】


【ああ、そうだな。森沢亮次は今も動けずにエンジェルアローを見上げてやがる。人生のフィナーレにきれいな花火を見れて奴も幸せだろう】


【だけど、ここまでする必要があったのかい? あいつは初手のシャドーアローは見えてなかった。連射すれば()れたと思うけど】


(おご)るなよ、バークレ。最初は矢が見えず慌てふためくだろうけどよ、スキル持ちなら身体強化〈真眼〉を発動すればシャドーアローは見えるんだからな。確実に敵を仕留めるには幾重にも作戦を張り巡らすのさ。そして、百獣の王ってのはいつも全力で狩りをするもんさ】


【そうだね、ジーク、肝に銘じるよ】


【そろそろ花が開く頃だな、バークレ】


【残り2秒だよ、マイボス】


〘バーン!〙


【たっまや〜! アデューだぜ、森沢亮次!】


【たっまや〜! グッバイ、森沢亮次!】


「やはり、天運我に有りだ!」


♢♢♢


【【な、何で】】


 勇者ジークと弓士バークレが俺を見た瞬間、奇声にも似た声を上げる。


 奴等が驚くのも無理はないだろう。


 いや、俺自身が一番驚いている。


【ク、クソが! まさかライルの網をすり抜けたのか、森沢亮次〜!】


【ボクは夢でも見てるのかな? 信じられない!】


〘スラリ〙


 俺はゆっくりと鞘から刀を抜いて、妖刀ツバキを覚醒させる。


 紅く妖しく光る刀に斬られた古傷が疼いたのか、勇者と弓士は〘ジリッ、ジリッ〙と後ずさりしていく。


「10万の銀矢という豪雨が降り止むまで、ここで雨宿りさせてもらう」


 妖刀ツバキが繰り出す〈死閃〉をもってしても生きる屍、アンデッドを滅殺できないのは百も承知だ。


 俺が決死の覚悟で紅蓮の炎の中に飛び込んだ理由は、10万もの銀矢から身を守るためなのだから。


(勇者達が何度生き返ろうと構わない。とにかく今は、銀矢がすべて地に落ちるまで時間を稼ぐ)


 妖刀ツバキを下段に構え、眼前にいる勇者と弓士との間合いを詰めていく。


【森沢亮次、いくら生き返るとはいえ、よくもライルを()りやがったな! 俺様の炎剣で焼き斬ってやるぜ!】


【本当に許せないよ、ボクはマジでキレちゃう5秒前】


 勇者が長剣を前に突き出し、弓士が弓に銀矢を矢番えして意味不明な難癖をつけてくる。


 紅蓮の炎の中、三度(みたび)相見(あいまみ)える。


 俺が〈疾風迅雷〉を発動して斬りかかろうとした時、三人目の男が目覚めるのだった。


【悲報! ワイ、おもいっきり熟睡していた模様】



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ