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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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第63話 今のままなら

文字数:2114字

「通して! 私はレインを助けにいく!」


「ダメよ! 聖騎士様はまた同じことを繰り返すつもりなの?」


「「エミリー様、カリン様」」


 ゲイルさんとガスさんは、この場をどう収めたらいいのか分からずあたふたしている。


 でも、この()()()は簡単に収まるはずなのだ。


 聖女様、いやバカ女が窮地に陥っているレインの元へ私を行かせてくれればいいだけ。


 ただそれだけでいいのに、意地でも首を縦に振らないバカ女こと、カリン・リーズ。


 だけど、私は諦めない、諦めてたまるもんか。


「同じことを繰り返す? さっきは申し開きもできないくらい私に落ち度があった、それは認めます。だから、今度は油断などせず事に当たる。お願い、私をレインの元へ行かせて! このままじゃ、勇者達に負けちゃう、レインが死んじゃうの!」


「聖騎士様、あなたはレインが言ったことを全然聞いてなかったの? わたしは光鏡壁(リフレクト)でみんなを守ってくれと言われたよ。聖騎士様は? あなたは何て言われた? ゲイルとガスを頼むって言われてたよね?」


「そ、それは……」


 ……バカ女の言っている意味なんて重々承知してる。


 そんなの全部分かったうえで言っているのだから。


 けれど、私が世界で一番大事なのはレインだ。


 他の誰でもないレイン・アッシュ、ただ一人なのだ。


 嵐の中、勇者達と戦う愛しき人に視線を合わせる私。


 ――予想外だった。


 拳闘士ライル、弓士バークレ、そして勇者ジーク。


 生きる屍、アンデッドとしてこの世に蘇ってきた三人の男。


 そうだ、よくよく考えれば分かる。


 こいつらは魔物じゃなく()()()()()、それも百戦錬磨の勇者パーティーの面々だったのだ。


 たった一度だけのあの短い戦闘を経験しただけで、敵の弱点を見抜く力を持ち合わせる猛者中の猛者。


 レインを亡き者にするため、勇者達が整えた三位一体の陣容を見た時、私とカリンは驚愕し思わず声を出してしまう。


 まさしくサムライスキルの弱点、致命的弱点を突いていたからに他ならない。


 敵である男は中長距離からの攻撃は一切なし、そして刀による近距離攻撃しか手段がない。


 逆に自分達は中長距離はもちろんのこと、近距離にも対応できる。


 この手を打つことによって、勝利は我々の手中にあるだろう。


 勇者達からそんな言葉を聞かなくても三位一体の見事な陣容がそう語っていた。


 事実、レインは防戦一方を強いられる。


 だからだ、だからこそ今の不利な状況を打開するためにも私が戦闘に参加すると言ってるのに、バカ女は首を縦に振らない。


 このままでは間違いなくレインは負ける。


 負けるということ、それは死を意味するのだ。


 そんなの嫌だ、絶対に嫌だ。


 ……こうなったら最終手段を行使するしかないかな。


 聖女カリンを今すぐ殺してレインを助けにいく。


 ――()るか。


 私は聖剣と神剣の(つか)に手をかける。


「わたしを斬り殺してレインを助けにいくつもり?」


「!!」


(ちっ、殺気が漏れたか)


 しかし、私の覚悟はバカ女に伝わったはず。


「はい、聖女様を殺してでもレインを助けにいく」


「そう、その覚悟はとてもいいね。でも、わたしの覚悟も変わらないよ。聖騎士様をレインの元には行かせないから。それが彼のためでもあるのだから」


「……意味が分かりませんね。どうしてそれがレインのためになるんですか?」


 本当に意味が分からなかった。


 だって、このままだと愛しき人は間違いなく勇者達に敗れ去り、死んでしまうのだ。


 きっと、レインだって分かっているはず。


 サムライスキルの弱点、致命的弱点を。


 そして、このままだと自分は死ぬということを。


 そんなことを考えていると、聖女カリンが私の問いに答えるため、透明感のある声でゆっくりと話し始める。


「レインってさ、ほら優しいじゃん。もしあなたが参戦なんかしたら、彼は自分のことよりエミリー、あなたを優先して物事を考えるよ。エミリーは大丈夫かな、俺が幼馴染を守るんだとか考えてさ。もうね、矛となり盾となるなんて言ってるのがその証拠だよ。自分のことより他人を優先する人で、本当にとても優しい人だからね。今、わたしとあなたができることはたったの一つだけ、レインを信じて見守る」


「………」


 私は思うところがあって黙っていると、カリンは言葉を紡いでいく。


「確かに今、レインは窮地に立っている。今のままなら間違いなく負けるし、死ぬことになる。だけど、それは()()()()()()と限った話ね。大丈夫、聖女のわたしが命を懸けて保証する。レインは絶対に勝つよ……だって、あの人はこの世界を救う救世主になる人だから」


 そう言って満面の笑みを浮かべる聖女。


 私、ゲイルさん、ガスさんは、カリン・リーズの話を聞いて驚嘆してしまう。


 ……レインがこの世界を救う救世主?


 三聖である私達ではなく愛しき人が救世主になる人?


 あり得るかもしれない、そうかもしれない。


 私は聖女の話を聞いて妙に納得してしまう。


〘ドン! ドン!〙


 聖女カリンの話に聞き入り思いに(ふけ)っていると、大砲のような轟音と共に二本の炎の矢が、勇者達を取り囲む炎柱から飛び出すのが見えた。


 これからレインと勇者達の戦いは、最終局面を迎えることになるだろう。


 うん、私だって信じている。


 分かったよ、レイン、ここからあなたを見守るから。


 だから、必ず勇者達に勝ってね。


 私の救世主様。



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