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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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幕間 光に包まれて

文字数:2661字

 俺様の名は、佐藤一郎。

 

 高1の16才だぜ。

 

 今日もバッチリキメるため、朝から1時間を費やして自慢のリーゼントをセット。


「ふふふ。一郎、お前は最高にイカしてるぜ」


 鏡に映る自分の姿を見て、いつものセリフが自然と口から出てしまう。


「パパ、ママ、行ってきま〜す」


 これまたいつものセリフを格好良く言い放ち、学校に向かうべく颯爽と玄関から飛び出す。


 もちろん、俺様の口には食パンがある。


 ラブコメ主人公にありがちな登校時の王道だが、それが最高にいいのさ。


 そう、きっといつしか通学路の曲がり角で可愛いJKと衝突、そして運命の出会いが俺様を待っているはず。


「さぁ、カモーン♪」


 ルンルン気分で勢いよく通学路を直角に曲がる。


「……ちっ、今日も出会いはナッシングかよ」


 食パンを道端に投げ捨て、お決まりの愚痴を漏らす。


「しゃーない、明日明日!」と気持ちを切り替えた俺様は、これまで何回言ったか分からないくらいのセリフを吐き捨てた。


 いつもの光景、いつもの日常にウルトラスーパーブルーな心模様だが、今日はなぜかいつもと違うものを目にする。


「あっ、何だこれ?」


(さわ)るな、危険! 超危険! 絶対この白い紙に()れるべからず!》


 電柱の白い紙に書かれた文字を読み、俺様はハハハと乾いた笑い声を上げる。


「これは触れってことだろ? だが、断る!」


 佐藤一郎、渾身のセリフを張り紙に向かってビシッと指差して言った時だった。


〘ドンッ!〙


「す、すみません」


 どうやら女の子がよそ見をしていたのか、俺様の背中にぶつかってしまい、とても申し訳なさそうにプリティな声で謝罪してきた。


(やったぜ! やっと運命の出会いが訪れた)


 これはチャンス到来とばかりに振り返って「何だよ、()てぇな」と満面の笑みを浮かべ、ちょっとはにかんだ感じでそう言おうと思ったができなかった。


 なぜなら、ぶつかった反動で白い紙に触れてしまった瞬間、(まばゆ)い光が俺様を包み込んでこの世界から消し飛ばしたからだ。


 こうして、佐藤一郎は異世界へと旅立つのである。


♢♢♢


 ワイの名前は、田中健太。


 高1の16。


 でも、学校には登校してない。


 それはなぜか? ワイには夢がある。


 I have a dream.


 レスバ王に、ワイはなる! 


 今日もいつものようにパソコンの前に座って、インターネット掲示板のスレで自分語りをする。


 スレ住人達をことごとく論破したワイは、もう日課となった勝利のオナニーをしようとした時だった。


 母親が「穀潰し、買い物に行ってこい!」と言う。


 穀潰しか。


 言い得て妙だなと笑ったワイは、次のレスバでのパワーワードを手に入れられてご満悦な模様。


 フッサフサのマッシュルームヘアを(なび)かせながら、近くのコンビニに向かうワイ。


「ん? 何だこれ?」


 とある電柱の張り紙が目に飛び込んできた。


(さわ)るな、危険! 超危険! 絶対この白い紙に()れるべからず!》


 ふふふ、ワイに文字でのレスバを仕掛けてくるなんて100年早いねと思い、何の躊躇もなく白い紙を触る。


 次の瞬間、神々しい眩い光が現れ、もやしとあだ名されていたガリッガリの貧相な体の少年であったワイを包み込んでいく。


「な、何や? この優しく暖かな光は? とってもハートフルな気持ちになるでござるの巻」


 ワイ、田中健太はこの世界から遥か彼方の時空へ(いざな)われて異世界に旅立つのだった。


 ……気のせいだろうか。


 光に包まれていく中、ワイの自慢であるサラッサラのマッシュルームヘアが抜け落ちていく感覚に襲われる。


「きっと気のせいだな。うん、そう、きっとワイの気のせいだ」


♢♢♢


 ボクの名前は、高橋翔。


 あっ、しょうじゃないよ、かけるだからね。


 年齢は16で、花の高校1年生。


 ぶっとい黒縁メガネと坊主頭がボクのトレードマークになる。


 趣味は、大好きなラノベを読むことかな。


 今日はお気に入りであるラノベの新刊が発売される日。


 ボクはお小遣いを握り締め、愛機の自転車を駆り本屋に向けて出撃する。


「かける、行きまーす」


 いつもの掛け声と共にボクは家から飛び出す。


 そして、本屋でラノベを購入して意気揚々と帰り道を急ぐ。


「あっ、マジで漏れちゃう5秒前」


 いきなり小がしたくなったボクは、回りを見渡して誰もいないことを確認すると電柱に激しく放尿する。


「ふぅ、危なかったな」


 チャックを上げ、いざ我が家へと思った時だ。


(さわ)るな、危険! 超危険! 絶対この白い紙に()れるべからず!》


「な、何これ?」


 野ションした電柱にガッチリ糊付(のりづ)けされている一枚の張り紙が目に止まる。


「……ま、まさかね。こういうのを触った途端、異世界に飛ばされるなんてオチは……」


 異世界に行けるなら、ボクは行きたい。


 心から信頼できる仲間と一緒に数多あまたのダンジョンに潜り、そして金銀財宝を手にする。


 夢と希望で満ち溢れている異世界に行きたい。


 高橋翔は異世界でヒーローになりたいんだ!


 まぁ、そんな都合良くボクの願望が叶うわけないか。


 それにラノベにある異世界なんてものは、紛れもなくフィクションなのだ。


 夢を見るのもいいけど、現実を見ようなと自分自身に言い聞かせながら、バイバイ、マイドリームという意味を込めて電柱の張り紙にポンと触れた。


 その瞬間、ぱぁと光が広がりボクを包み込んでいく。


「ふふふ、何だよ〜、異世界あるじゃん。ボクは仲間とパーティーを組んでヒーローになるんだ! さよなら、お父さん、お母さん。今日まで育ててくれてありがとうございます。ボクは異世界に行くよ」


 ボク、高橋翔は夢を叶えるために異世界へ旅立つ。


♢♢♢


 ()しくも、魔術師メメル・フロストの〈召喚の儀〉で異世界に召喚された三人の少年。


 この(あと)、勇者パーティーを結成した三人の少年は大人の階段を登っていく。


 数年の時を()て、王様の守護者にして王宮お抱えの冒険者となった彼らは、異世界の地で名を馳せることとなる。


 だが、その名声は突如終わりを迎えるのだ。


 ――魔王軍の襲来。


 魔王軍の魔物達を倒すため、果敢に戦いを挑むが敗北を喫し、サキュバスに腹上死させられる男達。


 しかしながら、悪の権化たる魔王倉木鷹也の手により生きる屍、アンデッドとなってこの世に蘇る。


 そして今、絶対的(あるじ)の命令を遂行するべく黒髪黒目の森沢亮次を亡き者にしようと三人の男は襲いかかるのだった。


 勇者ジーク・カスター、拳闘士ライル・ゲラ、弓士バークレ・ゴルド。本名は佐藤一郎、田中健太、高橋翔である日本人の男達。


 彼ら召喚者の命運は、もうすぐ尽きるだろう。


 神の祝福を受けた男。


 森沢亮次の転生者、レイン・アッシュが新たに覚醒した必殺スキルによって。


 この世界の神は、ただただ願うばかりだ。


 彼らに幸せな未来が訪れることを。



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