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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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第57話 嵐の中で

文字数:2171字

【ジーク、そこで右】


【分かってるって、バークレ。あのな、俺様の方向音痴はダンジョンの中だけだぜ】


【悲報! ワイの耳、ジークの()(ごと)を聞いた模様】


【あっ? 何だと? マジで殺すぞ、ライル!】


【こらこらコーラ。ジークもライルも喧嘩はダメ。気を引き締めてくれよな。黒髪黒目は魔術師メメルを()ったのをお忘れなく。ボク達のお師匠さんをね】


〘キュッ! バッ!〙


 猛スピードで疾走していた三人の男は、急ブレーキをかけると同時に右へ跳ねる。


 そして、ターゲットのいる洞窟に向かうため、さらに疾走するスピードを上げた。


 勇者が拳闘士と弓士を従え、隊列を組んで疾走する様は、まさに三つの流れ星を彷彿とさせる。


 その三つの流星の先頭を走る男、黄金の鎧を身に付け《俺様最強!》と赤い文字で刺繍を入れた黒いマントを纏うジークが鼻を鳴らしてぶっきらぼうに言う。


【ふん! あの女に恨みはあれど感謝なんかねぇよ! 死んでくれてスーパーハッピーだぜ! こんな赤髪赤目にして俺様を召喚しやがってよ!】


 僧侶服を着た筋骨隆々の大男は、スキンヘッドを手で撫でながら涙声でぼやくのである。


【悲報&朗報! ワイのマッシュルームヘアはいずこへ。なぜ(ゆえ)にこの世界に召喚された時、スキンヘッドにされたのかでござる。こんなツルツル頭にした張本人のメメルが死んでくれたので、嬉しくてたまらん模様】


 司祭服を身に纏い、十字架の首飾りをする男は、勇者と拳闘士の言葉を聞くと左右に首を振る。


【YOU達は冷たいよなぁ。メメルは母親代わりみたいな人だったでしょ? そりゃまぁ、確かに《召喚の儀》の際、ボク達三人を彼女好みの容姿に変えたのは、いかんでしょと思うけどさ】


【何を言ってんだ、バークレ。俺様の赤髪赤目は色々と関連性があるから納得するところはまだあるがよ、お前の天パー青髪はスキルと何も関係なくね?】


【悲報! ワイのスキンヘッドもスキルと何も関係ない模様】


【……メメル〜! せめてサラサラストレートの青髪にしてくれよ。洗髪の後、この天パーの手入れが凄く大変なんだから。この豪雨のせいで今のボクの青髪はまるでパンチパーマみたいになってるよー。キィエエエエ!】


(よわい)16でこの()()()に召喚されて10年、あのクソ魔術師にいいように利用されてきたんだぜ。ざまぁ以外の何物でもねぇよ。この件に関しては黒髪黒目にあざぁーすと感謝だわ】


【速報! ワイ、ジークに禿同な模様】


【それは、うん。ボクもジークに同意するけどね】


【というわけで、メメルをぶっ殺してくれてあざぁーすの感謝の気持ちを込めて黒髪黒目を殺してやろうぜ】


【ウイ!】


【オッケー!】


【よし、洞窟だ! てめぇら、武器を顕現しろや!】


 森沢亮次がいる洞窟に到着した三人の男。


 佐藤一郎こと、ジーク・カスターは王宮に代々伝わる神器、炎剣を手にして仁王立ちをする。


 田中健太こと、ライル・ゲラは両拳に鈍く光る鉛色のカイザーナックルが装着されると拳を合わせた。


 高橋翔こと、バークレ・ゴルドは金色に輝く弓に銀矢を矢番(やつが)えして身構える。


 その三人の男の視線の先に見えるのは、白いローブを纏った黒髪黒目の男、森沢亮次が洞窟を背に抜き身の刀を手に持って(たたず)んでいた。


【【【あいつが黒髪黒目の男、森沢亮次か】】】


「生きる屍が魔王の手によって生み出されたのか。勇者ジーク、拳闘士ライル、弓士バークレ。勇者パーティーのお前らは紛れもなくアンデッドだ」


 運命は残酷なのか、異世界の地にて同じ日本人である召喚者の男達と転生者の男が嵐の中、相見(あいまみ)える。


 お互いがお互いを亡き者にするためにだ。


♢♢♢


「レイン、待って! まだ話は終わってない!」


 エミリーの金切り声は、嫌というほど何回も耳にしたが、カリンのキンキンする声を初めて聞いた俺はクスッと笑ってしまう。


 いつも冷静沈着な聖女様も幼馴染と何ら変わらないんだなと。


「バヵお……聖女様、うるさい! レインは()()ために矛となり盾となるために戦いへ(おもむ)くの。黙って見送ってください!」


「は? 今、何て言った? ねぇ、今さ、()()って変に強調したよね? ()()()()のためにでしょ!」


「違います! ()()ですから!」


「違うから! ()()()()なの!」


「何よ、バカ女!」


「何よ、クソ女!」


(はぁ……これからまだ見ぬ敵が来るというのに、三聖同士が敵となって口喧嘩を始めたら世話ないだろ)


 俺はエミリーとカリンを怒る気力もなく、洞窟の出口に立つ。


「「レイン殿、ご武運を!」」


 やはり、持つべきものは男の友だ。


 洞窟内で二人の女がギャーギャーと声を響かせる中、ゲイルさんとガスさんが声を掛けてくれた。


 二人の騎士からの声援を背に受け、俺は嵐の中へ歩を進める。


 暴風と豪雨が容赦なく、俺の体に当たり散らす。


 そして、闇と世界と光の世界が交互に目の前に現れていく。


 ――来た!


 俺は鞘から愛刀をスッと抜き、刀身を露わにして敵の攻撃に備えた。


〘バッ! バッ! バッ!〙


 嵐の中、探知数3の敵がその姿を現す。


 サムライスキルを始め、聖騎士スキルも聖女スキルも今回の敵を完全に把握できなかった。


 でも、これからは大丈夫だろう。


 俺達のスキルは、この反応が何であるかを学習したのだから。


【ハロー! 会えて嬉しいぜ、黒髪黒目の森沢亮次!】


「…………」


 俺の眼前には、()()()間違いなく死んだはずの勇者、拳闘士、弓士が立っていた。


 生きる屍、アンデッドとして。


【俺様がお前をぶっ殺してやるぜ】



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