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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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第56話 詰問

文字数:2361字

 暴風が吹き荒れ、豪雨が降りしきる嵐の中、交易路をとある三人の男が疾走している。


 その三人の男とは、勇者ジーク、拳闘士ライル、弓士バークレ。


 そう、勇者パーティーの面々である。


 かつて、この大陸では老若男女問わず誰もが知るほど名を轟かせていたのだ。


 しかしながら、魔王軍に敗れ去った英雄たち。


 魅惑の魔物サキュバス達によって、あらん限りの精を抜き取られ腹上死した男達は人生の幕を閉じる。


 だが、悪の権化たる魔王の手によりこの世に蘇った。


 生きる屍、アンデッドとして。

 

 そして今、魔王の手駒となった勇者、拳闘士、弓士は絶対的(あるじ)の命令を成し遂げるべく、嵐の中を駆け抜けていく。


 黒髪黒目の男を殺すために。


♢♢♢


【ったくよ、ふざけんなって感じだぜ。このクソ暴風とクソ豪雨のせいで俺様ご自慢の超イケてるリーゼントがクソ台無しよ。ビシッと決まった姿で敵の前に登場したかったぜ。マジふざけんな、クソ嵐野郎が!】


【朗報! ワイのツルツルスキンヘッドなら暴風や豪雨などまったく関係なしの模様】


【佐藤君と田中君はお気楽でいいよなぁ。ボクは怖くて失禁しそうだよ。マジで漏れちゃう5秒前なのにさ】


【おい、高橋、いやバークレ! 本名で俺様を呼ぶな。フフフ、その名は()うの昔に捨てたのさ。日本人、佐藤一郎という名をよ】


【悲報! ワイ、田中健太。日本が恋しくなった模様】


【何ワケワカメなことを言ってるの、佐藤君、田中君。これからボク達は同じ日本人である男を殺すんだよ? YOU達は何とも思わないのかい?】


【そんなの関係ねぇよ。偉大なる魔王様のご命令が絶対なんだ。俺様の炎剣で真っ白な灰にしてやるぜ。必殺のバーニングブレイドでな。勇者ジーク・カスターの名においてだ。待ってろよ、黒髪黒目のクソ野郎!】


【速報! それは無理な模様。なぜなら、ワイ、拳闘士ライル・ゲラのダイナマイトパンチが炸裂して日本人が死ぬ。お毛々のある奴は悪即パンチ!】


【ホントにYOU達はいい性格してるね〜。ボクも二人を見習うことにするよ。標的である日本人は、高橋翔こと弓士バークレ・ゴルドがライトニングアローで射抜く】


 この三人の男のターゲットは、黒髪黒目の日本人。


 森沢亮次がいる洞窟は、もう目と鼻の先にある。


♢♢♢


〘パッ〙


「来ちゃった、レイン」


「カリン!?」


「「カリン様?」」


「バカ女!」


 聖女、突然の登場に各々が声を上げる。


 しかし、約一名が登場人物の名前ではなく蔑称を声にしてしまう。


「は? バカ女? バカ女ってまた言った? ホントにムカつく女ね、このクソ女!」


「ふん! ()()()はどうしてまた来たんですか? 今、私達は立て込んでるので、さっさと帰ってください」


「立て込んでる? はん! 嘘つきは泥棒の……!! な、何よ、この反応? えっ? これは……」


 どうやら聖女スキルも初めての反応らしく、カリンはただただ狼狽していた。


「カリン、正体不明の三つの敵がこの洞窟に向かってるんだ。問題はその敵がどんな奴なのかが重要だと思う。これからエミリーとカリンに話したいことがある。二人ともよく聞いてくれ」


 魔術師メメル・フロストが魔法で生み出したゴーレムのこと、そして魔王の手によって生きる屍、アンデッドが生み出されたかもしれないという俺の考えをエミリーとカリンに話した。


「命の概念がないか……それなら、この何とも言えない気持ち悪い反応も納得いくね。レイン、三つの敵の反応はもう目と鼻の先だよ。どうするの?」


 そう言葉を発した後、聖騎士様が《私が迎え討つ》と言わんばかりに聖剣と神剣の(つか)に手をかける。


「いや、ここは俺が一人で出る。あくまでアンデッドの件は俺の憶測に過ぎないし、色々と不確定要素が多い。三聖のエミリーやカリンに万が一のことがあったら大変だからな」  


「……レイン」


「言ったろ? 矛となり盾となるって。まさにこんな時のために俺がいるんだ」


「うん、気を付けてね。こいつら、何だか凄い不気味で底が見えない感じだから」


「分かった、肝に銘じておくよ、エミリー」


「……ねぇ、レイン。ちょっと聞いていいかな?」


 ここまでずっと黙っていたカリンが口を開く。


 その口調は厳しく、聖女様の表情は怒っているように感じた。


「何を聞きたいんだ? カリン」


「あのさ、どうやって66体のゴーレムを駆逐したの?」


「えっ? そ、それは……」


 俺は核心を突かれ口籠(くちごも)っていると、カリンは容赦なく言葉を続けてくる。


「わたしも魔法を使うの。はっきり言わせてもらえば、魔術師メメルの魔法なんかよりも圧倒的に聖女の魔法のが上。だけど、メメルは魔王の眷属となり人知を超えたスキルを手に入れたんだと思う。その一つが()()()()()()()ものを生み出せたこと。わたしはそんなものを魔法によって生み出せない。ねぇ、レイン、教えて。そんなゴーレムをどうやって駆逐できたの? もしかしたら、わたしや聖騎士様の必殺スキルでも駆逐できるか怪しいよ。だって、命がないものは殺せないでしょ?」


「……今、詳しい話はできないよ。それにそんな時間もないだろ。落ち着いた時に話すから」


「ダメ! 今すぐ話してよ! あのドラゴンとの戦いで見せた紅く妖しく光る刀は何なの? わたしはレインのために刀を顕現した者だよ。そう、あんなあなたの命を吸い取ったようなヤバい輝きを放つ刀を顕現した覚えはない。命の概念がないゴーレムを駆逐できたのは、真紅の刀の力と関係あるんでしょ? レイン、答えて、答えなさいよ!」


「レイン、どういうこと?」


 カリンの取り乱した様子を見たエミリーが、只事ではないと思ったのか不安な顔をして俺に問いかけてきた。


「とにかく今はそれどころじゃないだろ? まずは正体不明の敵を討たないと」


 俺は刀を腰に差し、洞窟の出口に向かって歩き出す。


 決して聖女様と聖騎士様の問いに答えるのが嫌だったのではない。


 まだ見ぬ敵が、すぐそこまで迫っていたからだ。



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