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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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第49話 ライバル

文字数:2190字

 ゲイルさんとガスさんのおかげで愛刀をこの手にすることができた。


 俺は刀を腰に差し、戦闘態勢に入る。


 二人には後でちゃんとお礼を言わなければならない。


 そのためにまずは目の前の敵、S級ダンジョンのラスボスであるドラゴンを討つ。


 だが、ただ討つのではなく今の状況を鑑み瞬殺しないとダメだ。


 なぜならば、俺の後方にはゲイルさんとガスさんがいるし、二頭の馬もいて馬車もある。


 まだ多少なりとも距離があるとはいえ、ドラゴンの豪炎の射程範囲内なのだ。


 でも、何も問題はない。


 俺は眼前の敵を瞬殺する自信があるのだから。


〘ガァアアアアアアアアアアアア!〙


 両翼を広げ、咆哮するドラゴン。


 こいつの豪炎は確かに凄いと思うが、連射できないという弱点もある。


 次の豪炎を吐くまで時間的余裕があるはず。


 しかし、尻尾や鱗による攻撃があるので、こちらから仕掛ける。


 攻撃は最大の防御になるんだ。


 この()()で決めてやるぞ。


〘スラリ〙


 俺は(さや)から刀を抜く。


(……あそこか、あれがあるのは……)


 ――六角柱の水晶。


 そう、魔術師メメルの左胸から飛び出した水晶、あのドス黒い六角柱の水晶。


 それがドラゴンの急所になる。


 俺は一つの答えを導き出していた。


 メメルみたいな人間や自然界の動物が魔物化し、ダンジョンに巣食う魔物が地上に這い出てきたのはなぜか?


 すべては悪の権化である魔王による所業。


 奴は何らかの方法で六角柱の水晶を放ち、自分の思うまま動く手駒を作っているんだ。


 そして、俺が最も懸念していることがある。


 生きた人間はもちろん、死んだ人間さえも六角柱の水晶で魔王の手駒にできるのではと。


 生きる屍、アンデッド。


 ……いや、今はそんなことを考えている暇はない。


 それはいずれ答えが出るだろう。


 俺が今やるべきことは、敵の心臓にある六角柱の水晶を打ち砕き瞬殺する、それだけだ。


「!!」


 ドラゴンが豪炎を吐くため、その長い首を後ろに逸らして〘ガバッ〙と大口を開けた。


「ひぇ〜。レ、レ、レ、レイン殿〜」


 ゲイルさんとガスさんの叫び声が聞こえてくる。


(大丈夫、大丈夫ですよ。俺が必ず二人を守ります)


「「レインー!!」」


 俺の名を呼ぶ声に向けて視線を走らせると、とんでもなく愚かな行為をしていたことに今さらながら気付いたのか、アホ女1号2号が必殺スキルを繰り出すオーラを纏い、あたふたしている。


(バカ、遅いんだよ! だけど、そのオーラはそのまま纏っておけよな。ドラゴンは俺が仕留めるけど、スキルに反応している次なる敵の軍勢は、エミリーとカリンに駆逐してもらうぞ。全部が片付いた暁にはお前ら二人に特大のお説教を食らわせてやる! 覚悟しとけ!)


 改めて討つべき敵に視線を戻すと、刀を前に突き出し構える。


 さぁ、目覚めよ。


 俺の命を糧にして、お前の力を示せ!


〘ポアッ〙


 妖刀ツバキはドラゴンの命を狩るために、その刀身が紅く妖しく光り輝く。


〘クルンッ!〙


 (つば)を支点にして持ち手を変えた俺は、ドラゴンの心臓にある六角柱の水晶を砕くべく愛刀を投げ放つ。


〘ブォン!〙


 空気を斬り裂き、敵の急所を目掛けて一直線に飛んでいく真紅の刀。


「貫け、我が妖刀ツバキよ」


〘ドゴォッ!〙


「あばよ。S級ダンジョンのラスボスさん」


〘ドッバーン!!〙


 妖刀ツバキが六角柱の水晶を貫いた刹那、ドラゴンは跡形もなく木っ端微塵に砕け散った。


「フフフ、瞬殺だ」


 こうして魔王が送り込んできたドラゴンはこの世から消え去るが、まだ戦闘は終わっていない。


 先程からサムライスキルが反応している敵の軍勢。


 そいつらが俺達に迫って来ているからだ。


♢♢♢


「「…………」」


「おい、アホ女1号2号。スキルに反応あるよな?」


「「……うん」」


 俺にアホ女と言われても何の反論もしないエミリーとカリン。


 アホはアホなりに反省しているんだろう。


 俺とゲイルさん、ガスさんの前で体を小さくしているのだ。


(まったく、お前らがその身に纏う神々しい三聖のオーラが泣くぞ)


 二人の話を聞く限り、どうやら今の姿がスキルの完全体らしい。


 聖騎士スキルの完全体が〈光の衣のオーラ〉、そして聖女スキルの完全体が〈天女の羽衣のオーラ〉。


「「エミリー様、お美しいです」」


「ありがとうございまーす♪ ゲイルさん、ガスさん」


 二人の騎士は感嘆の声を上げ、エミリーのお礼の言葉に照れていたがカリンに睨みを利かされ、黙り込んでしまう。


 聖騎士様はまんざらでもないのか、エッヘンと言わんばかりに胸を張り勝ち誇っている。


「ちっ、薄らバカども! 殺してやる!」


 反対に聖女様は二人の騎士に殺害予告をして不機嫌な顔になっていた。


 エミリーとカリンは()()を我が物にしようと競い、お互いをライバル視しているみたいだが、今はそれが何なのかを探ってる場合じゃない。


 俺は聖騎士と聖女に状況確認をするため、二人の顔を見据えて語りかけた。


「今度こそエミリーとカリンに活躍してもらうからな。敵の総数は1508。聖騎士スキルと聖女スキルの反応は?」


「「……同じ」」


「そうか。俺のサムライスキルはこんな多数の敵に対処できない。三聖のエミリーとカリンが駆逐してくれ」


「うん! 私の轟嵐なら余裕だよ!」


「もちろん! わたしの神光なら余裕だね!」


「「!!!」」


「私が――」

「わたしが――」


 エミリーとカリンが顔を突き合わせ、またしても口論を始めてしまう。


「…………」


 俺は空を見上げ、ひとり呟く。


「マジで勘弁してくれよ」


 魔王軍1508匹の魔物は、もうすぐそこだ。



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