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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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第48話 持つべきものは男の友

文字数:2021字

「エミリー、カリン。ドラゴンの注意は俺が引いておく。だから、二人はその隙に必殺スキルを繰り出すんだ。いいな?」


「「分かった」」


「よし、散開しろ!」


 俺の合図と共に聖騎士と聖女は、各々のスキルを発動してドラゴンの後ろに回り込む。


 ははは、凄いな。


 聖女カリンは〈転移魔法〉で、聖騎士エミリーは俺の〈疾風迅雷〉と似たようなスキルであっという間にラスボスの後方に位置したのだ。


 頼むぞ、必殺スキルでドラゴンを駆逐してやれ。


 うん、いいぞ。ここまでは思惑通り。


 案の定、ドラゴンは俺しか眼中にないようでエミリーとカリンをガン無視している。


 フフフ、それがお前の命取りになるんだ。


 俺は口角を上げてほくそ笑む。


 しかし、俺の余裕の笑みは一瞬で消え去る。


 ん? は? えっ?


 目の前の出来事が信じられず、ガチで自分の目をごしごしと手で(こす)ってしまった。


 それはそうだろう。


 ドラゴンを駆逐すべく必殺スキルを繰り出す準備を始めていると思っていたエミリーとカリンが、いやアホ女1号2号が激しく口論しているのが見えたのだから。


(嘘だと言ってよ、教皇様)


 ほんのちょっと前だよ。


 俺は「()()()」と聖騎士と聖女に言ったよな?


 で、二人は間違いなく「うん」と言っていたよな?


 なのに、どうして言った矢先から()()()してんだよ!


 それもただの仲違いなんかじゃない。


 エミリーは聖剣と神剣で、カリンは白銀の聖杖で、三聖の証しをお互いぶつけ合い〘ガチャガチャ〙と音を立てながら、激しく口論しているのだ。


「私がドラゴンをやります! 聖女様はあっち行っててください! それに何ですか? 回復魔法だの洗浄魔法だのとそんな下衆(げす)魔法で男の気を引いてるんですか? はぁ、情けない女ですねー」


「は? 変な言い掛かりはヤメてよね! あのね、ドラゴンはわたしがやるの! それとそっちこそ何よ? 朝食を作った? 玉子料理? 玉子の食べ過ぎは体に良くないって話を知らないの? レインを殺す気? ホント血も涙もない女だね」


「そんなの昔の話でしょ! 今は玉子の摂り過ぎはダメなんて話はありませんよー! 残念でした♪」


「くぅ〜、マジでムカつく女ね! 戦闘スキルしかない能無しスキルのくせに!」


「なっ、何よ! 回復魔法と洗浄魔法なんて糞の役にも立たないでしょ!」


「今のレインには超が付くほど役に立つから♪」


「こ、このバカ女! もう一度言ってやる、バカ女!」


「よ、よくも聖女のわたしにバカ女なんて言ったわね、このクソ女!」


〘ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ〙


 ……ドラゴンのヘイトが俺だけに向いていて良かったな、アホ女1号さんと2号さん。


 そうでなければ、そんな隙だらけのエミリーとカリンはドラゴンの豪炎に焼かれ、今頃は二人()()()丸焦げのはずだぞ。


 教皇様、この二人を支えるって魔王軍を駆逐するより大変かもしれません。


 ヴィクトも一癖も二癖もありそうだし。


 何なの、三聖って……。


 親父と兄貴さ、男の俺が折れたら女がより一層幅を利かすんじゃない?


 ……どうすんの、これ。


 俺は、S級ダンジョンのラスボスであるドラゴンを目の前にして途方に暮れてしまう。


 そんな時だった。


 遥か遠方から俺に叱咤激励が届く。


「レイン殿ー! お気を確かにー!」


「そうっすよー! レイン殿ならやれるっすー!」


 あんな遠くにいるのに、俺の今の気持ちを察してくれた二人の騎士。ゲイルさんとガスさんの叱咤激励が、俺の心に火を付ける。


 俺らしくないな。


 やはり他力本願は(がら)じゃない。


「ゲイルさーん! ガスさーん! どちらでも構いませんから馬車の中から俺の刀を取って来てくださーい!」


 二人の騎士は、すぐさま顔を見合わせるとガスさんが馬車の中に入っていく。


 持つべきものは男の友だな。


 俺が今からやることは二人を危険に晒してしまうかもしれないが、それでもやってやる。


 ゲイルさんとガスさんの二人を守り、そしてドラゴンを俺が駆逐してやるんだ!


〘ゴァァァアアアアアアアア!〙


 ドラゴン最大火力の豪炎が放たれた。


 だが、その豪炎は的を射ることは決してない。


〘フッ〙


 俺は〈疾風迅雷〉を発動して馬車に向かって駆ける。


 ドラゴンよ。


 俺が刀を手にした時、お前の命は尽きるぞ。


「レイン殿ー! 刀っすー!」


 ガスさんが刀を両手で高く掲げて叫んだ。


〘バッ!〙


 ドラゴンと馬車のちょうど中間くらいで俺は〈疾風迅雷〉を解除し、ゲイルさんとガスさんの前に姿を現す。


「ありがとうございます! ガスさん! 刀を俺に投げてください!」


「はいっす!」


 ガスさんは刀をまるでやり投げみたいな感じで力一杯投擲(とうてき)する。


 二人の騎士は、ベストな選択をした。


 きっとゲイルさんならば、俺のところまで刀は投げられなかったかもしれない。


「お前が刀を取って来い!」


 まず間違いなくゲイルさんがガスさんにそう指示したんだ。


 流石です、ゲイルさん。


 そして、ありがとう、ガスさん。


〘パシッ!〙


 俺はすべての魔を斬り裂く愛刀をこの手に納める。


 フフフ。


 さぁ、ドラゴン、覚悟しろよ。


 今から俺がお前を瞬殺してやる。


 他の誰でもない、レイン・アッシュがな。



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