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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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第26話 交易路

文字数:2528字

「いや〜、マジ凄かったっす! 魔物達をあっという間に駆逐っすよ!」


「このクソ野郎のスカポンタンが! あれはな、瞬殺って言うんだよ! レイン殿とエミリー様は自分達の誇りです!」


 ゲイルさんとガスさんが顔を紅潮させながら、俺達に称賛の声を上げる。


 俺とエミリーが魔物と戦い、そして勝利したところを初めて目にした二人の騎士は、興奮と感動が収まらずに朝からずっとこんな調子だ。


 でも、エミリーの聖騎士スキルは本当に凄いの一言。

 

 聖剣と神剣をたった一振りしただけなのに、5匹いた狼の魔物を一瞬でバラバラに斬り裂き瞬殺したのだ。


 だけど、不思議と昨日ほど畏怖の念を感じることはなかった。


 それはきっとサムライスキルのせいだろう。


 猿の魔物達の時と違い、あの三日月形の斬撃が止まっているように見えた。


 …………。

 

 ―オレはまだ死ねない―

 ―あいつら二人を殺すまで―


 頭の中に響いた男の声。


 俺の声に似ていた気がする。


 いる……誰かもう一人いるんだ。


 俺の意識の底に。


 お前はいったい誰なんだ?


 …………。


「ねぇ、聞いてるの? ……レインってば!」


「えっ!?」


 俺の名前を呼ぶエミリーの怒鳴り声に、腰を浮かすほどびっくりしてしまう。


「さっきから呼んでるのに無視してさ、どうせ聖女様のことでも考えてたんでしょ? ホントにいやらしい、助平!」  


 そんな言葉を口にしたエミリーは、プイッと顔を横に向けて不貞腐ふてくされる。


 どうしていきなり聖女様なんて言葉が出てくるのか、まったく意味が分からない。


 エミリーの勝手な思い込みには辟易するが、今のまま彼女を放置しておくのはよろしくないので、俺は正直に言ってやった。


「カリンのカの字も考えてない! 俺が考えていたのはエミリーのことだよ」


「えー!」


 エミリーが思っていたのと違う予想外の言葉だったらしく、驚きに満ちた顔で声を上げる。


 みるみるエミリーの頬が赤く染まっていく。


「聖騎士スキルのことだけどな」


「!!」


 その言葉を聞いた瞬間、眉間に深くシワを寄せ、顔を真っ赤にしたエミリーはご機嫌ななめとなってしまう。


 それからしばらくの間、俺は彼女から無視を決め込まれることになる。


♢♢♢


「レインのローブ、血がべったりだよ」


 機嫌が直ったエミリーは、俺のローブをまじまじと見ながら声をかけてきた。


(カリンがいれば、洗浄魔法で元通り真っ白になるんだけどな。エミリーはそんな固有スキル持ってないだろうし。てか、持っていたらすぐ俺に使うはず。またご機嫌ななめになられると面倒極まりない。聖女様の魔法の件は言わないのが吉だ)


「そうだな。うーん、どこかに川か池があれば多少なりとも血を洗い流せるんだけど……」


「レイン殿、血染めの白いローブは勲章になるっすよ。魔物を駆逐した証しになるっすから」 


 御者席にいたガスさんが、まるで自分のことのように声を弾ませて言った。


(……なるほどね。そういう考えもあるのか。ははは、物は考えようだな)


「このクソ野郎のアンポンタンが! てめぇ! 今、俺が同じ話を言うつもりだったんだよ! ガスの言う通りレイン殿のお姿は武勲ぶくんの証しそのものだと思います」


「わ、私だってそう思ってるよ! 汚いとか、気持ち悪いとか、そんなつもりで言ったんじゃないからね」


「あはは。分かってるよ、エミリー」


 俺は笑い声を上げ、エミリー、ゲイルさん、ガスさんも笑った。


 笑顔の俺達一行(いっこう)を乗せた馬車は、明るい雰囲気に包まれる。


 しかし、それは今この時だけ。


 この時だけだ。


♢♢♢


 目的地が近づくにつれて、俺達は自然と無口になり、それぞれが悲痛な表情を浮かべる。


 俺とエミリーは、お互いのスキルで辺り一帯に魔物達がいないことを確認し、ゲイルさんにその旨を伝えると御者であるガスさんは無言でうなずきながら、二頭の馬に鞭を入れ馬車の速度を上げた。


 教会騎士団第一隊隊長と副隊長の肩書を持つ二人は、生存者がいる可能性を聞いてきたが、首を横に振るしかできなかった。


 目的地への道中、犠牲者に献花をするため、みんなで草原地帯に咲く花を摘んだ。


 今はお昼時だろうか。


 本来なら昨日の宿となる場所に到着する。


 ――教会騎士団第一隊中央方面駐屯地。


 これが正式名称だと二人の騎士が教えてくれた。


 木材を積み木のように組み立てた立派な造りの駐屯地だったと思う。


 現在は猿の魔物達に破壊され、見るも無惨に崩れ落ちて瓦礫の山だ。


 改めて慎重に周辺を探ってみたけど、やはり魔物達の存在は確認できず、また生存者の存在も確認できなかった。


 ゲイルさん、ガスさん、エミリー、俺の順で献花をしていき、犠牲者に哀悼の意を表すべく黙祷を捧げる。


 部下であり仲間でもあった駐屯地の騎士26人に黙祷を捧げていた時のゲイルさんとガスさんの顔を、俺は死ぬまで忘れられないだろう。


♢♢♢


「それじゃ、行きましょう」


 俺は三人に声をかける。


 今の状況をかんがみ、この場でいつまでも悲しみに暮れているわけにはいかない。


 辛く悲しくとも前に進むしかない。

 

 俺達、監視隊はやるべきことがある。


 魔王軍先遣隊の動向を把握する。


 森林地帯から草原地帯に侵攻を始めた魔物達の今の状況を、より詳しく把握できれば今後の住民避難にきっと役立つ。


 もし不測の事態が起こった時、俺とエミリーが防波堤となって魔物達を駆逐するのだ。


 俺達は、思いを新たに森林地帯へ向かうべく駐屯地を後にした。


 現在地から少し北上すると、広大な森林地帯を横切るように東部と中央を結ぶ交易路があると二人の騎士から聞く。


 ゲイルさんとガスさんは、王宮騎士団と交流を兼ねた対外試合に出場するため、交易路を通って中央に行っていたらしい。


「レイン殿、エミリー様。目の前に見えるのが交易路の入口になります」


 ゲイルさんが指差す方向に視線を合わせる。


「あれが交易路……エミリー、ゲイルさん、ガスさん。手筈てはず通り、よろしく」


「うん」


「「はい(っす)」」


 御者席にガスさん、その隣には刺突剣を構えて周囲を警戒するゲイルさん。


 魔物の強襲に備え、俺とエミリーは馬車の屋根の上に陣取る布陣で交易路に入ったのだった。


♢♢♢


 俺達を乗せた馬車は、まっすぐ進んでいく。


 魔王軍先遣隊が駐屯するの地へ続く交易路を。


 ――行く手を阻むかのように魔物達がうごめき出す。


 俺とエミリーの真価が問われる事になる、魔王軍との交易路攻防戦が開戦する。



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