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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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20/99

幕間 黒

文字数:1552字

 柔らかな陽の光が差し込む食堂。


 俺が窓際の席に座って朝食を食べていた時だった。


 一人の女性が朝の挨拶をしてきた。


「おはよう、レイン」


 振り向くと同じ村の出身で同い年、旧知の仲と言ってもいいエミリー・ファインズが立っていた。


「エミリー、おはよう……えっ!? えっ?」


 見慣れぬ彼女のよそおいに、俺は面食らった。


「ふふふ、びっくりした?」


「ああ、びっくりした。ゲイルさん、ガスさんと同じ服だな」


 黒の祭服を身に纏うエミリーを見て思う。


 今日から俺の幼馴染は、誇り高き教会騎士団の騎士になったのだなと。


「執事さんが朝一番で部屋に届けてくれたの。女性用はスカートなんだぞ」


「そうか。でも、丈が少し短くないか?」


(祭服で膝上はないでしょう? 教会騎士団の裁縫師さん)


「いやらしい、レイン。そういう目でこの祭服を見てるの? 助平!」


 まるで挑発するかのように、短いスカートの裾を摘みヒラヒラさせて笑うエミリー。


「そんな目で見てない」


「バカ真面目男め! ふん、しょうがないから説明してあげる。丈を短くする理由はちゃんとあるの。私はこの祭服の上に鎧を着るんだよ? 丈が長いとすね当てを付けるのも大変だしさ、何より魔王軍と戦う時、スカートが邪魔で動きにくいなんてことになったら目も当てられないからね。まぁ、偉そうに講釈をしている私も、研修で講師から教えてもらったんだけど」


「へぇ、にかなってるんだな」


「うん。それにスカートは丈が短いほうが断然可愛いし……あと用を足す時が楽なんだよ」


(おいおい、そんなことバカ正直に言わなくていいの)


 急に黙り込んだエミリーが俺の顔をチラチラ見ながら、体をモジモジさせている。


(……相変わらず、分かりやすい奴だな)


「似合ってるよ、エミリー」


「!!」


 俺の言葉を聞いて、エミリーの表情がパァと明るくなる。


 その言葉を待ってましたと言わんばかりに。


「短いスカートの祭服は可愛いし、エミリーによく似合ってる」


「あ、ありがとう。嬉しいな。でも、祭服の色が黒……黒はイヤだ……」


(黒……真っ黒か……エミリー・ファインズ)


「エミリーは、黒が嫌いだったっけ?」


「嫌い! 大嫌い! 私はクソ女じゃない! あんな女になりたくない!」


(クソ女? あんな女? 何を言ってるんだ? どうして癇癪かんしゃくを起こしたように声を荒げる?)


 エミリーは我に返ったのか、ハッとした表情をする。


 そして、前言を撤回するために言葉を並び立てた。


「あっ! 違うの! 違う違う違う、忘れて。うーんと、黒はそんなに好きじゃないかな」


 それなりの年月を一緒に過ごしてきたのだ。


 俺には分かるよ。


 今のエミリーは、エミリーじゃないよな?


 俺が知るいつものエミリー・ファインズは、黒が大好きだったはずなのにな。


 お前に何があったんだ?


 黒が嫌い? 大嫌い?


 黒は、俺とエミリーじゃないか。


 そうだろ?


「……俺は好きだけどな、黒」


「えっ!」


 ただただ驚いて目を見開いているエミリーを見つめて俺は言葉を続ける。


「そんなにびっくりすることか? 俺達くらいじゃない? 黒髪黒目って。異常体質だなんだと散々言われ、しまいには上級治癒師だもんな。この黒髪黒目は、黒は俺とエミリーの存在証明そのものだろ?」


「……うん、そうだったね」


「エミリーが黒を嫌うなんて悲しいよ。それに黒は何色にも染まらない色だ。ビシッと強い芯があるみたいで格好いいじゃん」


「何よ、それ……ははは……本当……バカ……レインは……バカ……だなぁ…………」


 エミリーがどうして泣いているのか、敢えて聞かなかった。


 泣いている理由わけを聞いても、正直に言うとは思えなかったから。



 ――真っ黒な女、エミリー・ファインズ――


 

 なぁ、エミリー。


 お前は本当に人の道を外すのか?


 カリンの言う通り、ヤバい奴なのか?


 この目で確かめなければならない。


 なぜなら……。


 俺がエミリーを殺すかもしれないからだ。



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