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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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第14話 魔物

文字数:2067字

 今の世は、魔王軍が大陸を蹂躙していた。


 その魔王軍を駆逐するため、聖女から召集された俺は対魔王軍本部となる大聖堂に昨日到着したばかりだ。


 そして今、俺を食い殺そうと魔物が襲いかかってくる状況にある。


 不合理だ! 不条理だ! 理不尽だ!


 と言葉を並べ立て、今の危機的状況にいることが納得できず、人によっては泣き叫んだりするはずだ。


 俺だって、そう思う気持ちがなくはない。


 昨日の今日で、魔物と命のやりとりをするのだから。


 でも、俺は〈夕刻の悪夢〉を見た。


 女、幼き子供、乳飲み子までが魔物に襲われ、無慈悲に生きたまま食い殺された。


 俺はこの目で見たんだ。


 あの凄惨な光景を。


 怒りで体が震えた。


 力ある者はいないのか?


 どうして誰も悲鳴を上げている幼き子供達を助けないんだよ。


 頼むよ。


 誰でもいいから早く魔物を殺してくれよ。


 こんな現実があってたまるか!


 …………。


 俺があの場にいたなら、魔物を一匹残らずぶっ殺してやるのに。


 そうすれば、きっと誰かの命を救えたはず。


 そうだ。


 力ある者は、力を使うべきだ。


 持てる力を使い、誰かの命を救えるのなら。


 俺は、レイン・アッシュ。


 力を覚醒した男。


 聖女より与えられしサムライスキルを存分に駆使して憎き敵である魔王軍を討つ。


 一人でも多くの命を救うために。


♢♢♢


 カリンは、あれだけ浴びるように酒を飲んだのに飲み足りないらしい。


 嫌がる俺を強制連行して二軒目の酒場へ。


 透き通るような白い肌が、今は真っ赤っ赤。


 ちょっと飲み過ぎじゃないかと思うのだが、カリンはまだまだ序の口だと言っている。


 酔っ払いの面倒は勘弁してほしいので「酒はほどほどにお願いします」と、カリンには先手を打って忠告しておいた。


 大衆酒場だったけれど、客層がとても若くて品のある人ばかりだなという印象。


 聖女様が贔屓ひいきにしてる店だけのことはあると思った。


 宴もたけなわ。


 酒場の雰囲気が熱を帯びてきた時、若い男の客が酔っ払ったのか、周囲の迷惑も顧みず意味不明な言葉を大声で喚き散らす。


 最後は店員数名によって強制退店させられていた。


 男が店を追い出される間際に言った言葉。


 その言葉が俺の耳に鮮明に残るのだった。


 ――あんな魔物なんかに食われたくないよ――


 一悶着ひともんちゃくを静観していたカリンが、何気ない感じで俺に聞いてきた。


「レインは、魔物を見たことあるの?」


「……直接は……まだ見たことない」


 きっと俺の表情や口調で察したんだと思う。


「あれは酷かったね……ここでも映し出されて大騒ぎになったよ……レインも見たんでしょ」


「……見たよ、宿屋の前でね」


 しばらく沈黙が続いていたけど、カリンが話の主導権を取るように話し始めた。


「わたしは映し出された魔物達を注視してた。で、あることに気づいた」


「どんなことに?」


 あの凄惨な光景は記憶から消し去りたいが、はっきりと脳裏に焼き付いている。俺としては毛だらけの魔物にしか見えなかった。


「魔物の大半は、この自然界に存在する動物達だった。犬、狼、猿、熊。それと見切れてたけど、何とか見えた鷲、鷹。全部で六種は確認できた」


 確かに改めて言われると、そんな動物達に見えなくもない。


 だけど、あんなに巨大化して獰猛どうもうになるものなのか。


「他の魔物達はゴブリン、オーク、オーガにサキュバスの四種ね」


「それは俺もすぐに分かった」


(あのオーガ、あいつだけは絶対に許せない)


「ま、その四種は元々中央にあるダンジョンの中にいる魔物だからね。奴等がダンジョンの外にいたのも不自然だし、妙に強くなってた」


「……」


 ――魔物。


 謎多き奴等だが、そんなの関係ない。


 俺達が駆逐しなきゃいけない敵なんだ。


♢♢♢


 わたしの聖女スキルが危険を察知する。


 上空に2、これは偵察のみ? ううん、違うな。攻撃もあるね。


 地上に2、これは完全に攻撃だけだね。


 ……鷲と鷹、そして犬と狼の魔物か。


 想定内だけれども、わたしの怠慢だよ。


 昨日よ! 昨日! レインに魔物の話をしたばっかりじゃん。


 鷲、鷹の視力、狼、犬の嗅覚は尋常でない。


 この動物達が()()()したと仮定するならば、ちょっと洒落にならないレベルに能力が跳ね上がっているはず。


「レイン、ここにいるのは分が悪いの。丘から離れて森の中に行く。身体強化〈疾走〉を発動して走るからね。あなたもそうして」


「分かった」


 わたし達は、森を目指して走り出した。


 ここで大っぴらに戦ったら、先遣隊の魔物達と戦闘になりかねない。


 さすがにそれは避けたいよね。


 レインのサムライスキルがいかに無敵でも、初陣だしそんなすぐに()()()わけがない。


 だ・か・ら、わたしが追跡してくる魔物だけをる。


 それにしても、余裕で付いてくるなぁ。


 かなりハイレベルな〈疾走〉だよ。


 レインは、身体強化が得意なのかな。


[ピピピ]


 わたしの聖女スキルが、追跡してくる4匹の魔物達を引き離すことに成功したと告げてきた。


 よし!


 森に入れば、次はこっちの番だからね。


〘ヒュッ!〙


 白銀の聖杖を顕現させ、反撃の準備を整えたわたしは何の躊躇ちゅうちょもなく森の中へ飛び込んでいく。


「ダメだ、カリン! 森に入るな!」


「えっ?」


 わたしの真横に魔物がいた。


 今さら気がついても、後の祭りだった。



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