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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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第13話 決戦場

文字数:2049字

「ふー」


「大丈夫か? カリン」


「さすがに遠距離の〈転移魔法〉はキツいね」


 ――転移魔法。


 聖女の固有スキルの一つ。


 カリンから転移魔法の説明を受けた俺が、思ったことは一つだけ。 


 〈聖女様、何でもありですね〉だった。


 その聖女様の転移魔法で俺達二人を飛ばした場所は、小高い丘だ。


 眼下には緑豊かな森林が広がっていた。


 森林の中には三角形の沼があって、大きな平地も見て取れる。



 ――奴等がいた。


 

 森林と沼の間にある平地に魔物達がいた。


「森林地帯でドンピシャ。わたしの予想通り」


「凄いな、カリン。聖女様は伊達じゃないよ」


「あ、当たり前じゃない! もっと聖女を崇め奉ってもいいわよ」


 照れて顔が赤くなったのか、カリンはそっぽを向いてしまう。


「そうさせてもらうよ」


 これは冗談で言ったのではなく、本心だ。


(カリンの予想通りか……)


 俺は敢えて口にする。


 聖女カリンの答えが聞きたかったから。


「やっぱり、決戦場は東になるんだな」


「実際、この目で見たからね。もう決まり」


 悲しい顔をしながら、俺の問いかけに答えたカリンに何て言えばいいのか言葉に詰まる。


♢♢♢


「決戦場は東」


 小綺麗な酒場の個室で、聖女が俺に向かって開口一番そう言った。


「東? 言い切ったな、カリン」


「うん。でも、そうなるはず……」


「その話、聞かせてくれる?」


「もちろん!」


 聖女は翡翠色の美しい瞳を輝かせ、配膳されたばかりのエールをグイッと一気飲みするや否や〈決戦場は東〉と言った根拠を話し始めた。


♢♢♢


 ――決戦場は東になる。


 まだ予想の範囲を超えないけれど、確信めいたものがある。


 大陸最北端から侵攻を開始した魔王軍。


 北部全域を蹂躙した後、王宮のある中央に進軍。


 そして、暴虐の限りを尽くした。


 今現在、中央にいるであろう魔王軍はどこへ進軍するのか?


 西か東か南か。


 まず西はないと断言できる。


 なぜならば西には山脈があるだけであり、人は一人もいない。


 残るは、東か南か。


 中央から南に行く方法は、三通りある。


 西の山脈を越えて南へ。

 中央と南の間にある広大な大湖を渡って南へ。

 東を通り抜け南へ。


 ――魔王軍は、人を殺して喰らう。


 これを考慮に入れると、答えが見えてくる。


 中央から東に進軍して、東部全域で暴虐の限りを尽くしてから最終目的地である南へ進軍。


 南部全域も北部、中央、東部と同じく魔王軍によって蹂躙され、この大陸は終焉を迎える。


♢♢♢


「……って感じかな。ははは、参ったね」


 〈参ったね〉か。


 聖女の心中を察するに、彼女の予想通りになるならば次は東部ここが襲われるのだ。


 そんな悪夢を振り払うかのように首を左右に振った聖女は、その瞳に力をみなぎらせて確固たる決意を表明する。


「わたし達が東部と南部の人達を守るため、東を決戦場にして魔王軍を駆逐する」


「聖女に敬意を表する。俺も〈聖女の託宣〉でサムライスキルを覚醒したんだ。魔王軍を駆逐するためなら何でもやる」


「ありがとう。嬉しいよ、レイン。それじゃ、さっそくお願いしてもいいかな?」


「もちろん」


「今後のためにも予想ではなく確信が欲しい。魔王軍が東部に侵攻するならば、既に先遣隊が動いているはず。そして、奴等が駐屯してる場所は中央と東部の間にある森林地帯だとわたしは思ってる。それを自分のこの目で確かめたい。レイン、一緒に行ってくれる?」


「俺に断る理由なんてないよ。聖女カリンと一緒に行くに決まってんだろ」


「うん! レインが一緒なら心強いよ!」


 出発は明朝と決まり、俺と聖女は乾杯したのだった。


♢♢♢


「残念だけど、カリンの予想が的中したな」


 小高い丘から眼下で蠢いている無数の魔物を見ながら俺はそんな言葉しか言えなかった。


「何よ? レインはもしかしてもしかすると、わたしを慰めてるつもりなのかな?」


「そ、それはまぁ……」


「ありがと。優しいねぇ、レインは。でもさ、そうならそうでわたしは覚悟を決めた。魔王軍を駆逐し、尚且なおかつ人々を守る対策を講じる!」


 明るく笑い、前向きな言葉を言った聖女はとても彼女らしくて、改めて芯のある強い女性なんだなと思った。


 ――カリン・リーズ。


 聖女スキル所持者だから聖女様ではなく、きっと彼女はスキルがなくても聖女様なのだ。


 俺は、そう思っている。


「そうか。よろしく頼むよ、聖女様。それで奴等が例の先遣隊か?」


「だね。聖女スキルが示す反応だと613匹。本隊はまだ中央だろうし、そこには親玉の魔王もいるはず」


 ――魔王。


 カリンが何気なく言った〈魔王〉という言葉を聞いた瞬間、全身の血が沸騰するような感覚に襲われた。


 俺の中の()()が叫んでいる。


 ――オレが、必ず魔王を殺す!


「…………」


「レイン? ねぇ、レイン、大丈夫?」


「……!」


 ふと我に返ると、カリンが心配そうな表情で俺を見ていた。


「えっ? ああ、平気平気」


(何だろう。一瞬、意識が飛んだ気がする)


「レイン、固まって動かないから心配したよ」


「ご、ごめん。悪かった。俺は大丈夫――」


 大丈夫と言い終えた刹那に、サムライスキルが危険を察知する。


 それはカリンの聖女スキルも同じだろう。


 ――敵が来る。


 俺の初陣は、すぐ先の未来にある。



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