■VR酔い
ボクは高揚した気分のままで、さらにホームワールド内を少し移動してみた。
スティックを前後左右に倒すと、その方向にアバターが滑るように動いて、同時に周囲の景色がめまぐるしく変わっていく。
――と、乗り物酔いにも似た、気分の悪さが身体の内からこみあげてきた。
(……あ……これ……VR酔い、ってヤツ……)
VRChatという単語をネット検索すると、対になるワードに『気持ち悪い』とついてきて、ぶいちゃへの偏見と並んで、VR酔いの体験談がたくさん載っていたことを思い出す。
(……結構、来るね………う、ううっ…………)
乗り物酔いのそれと感覚はほぼ一緒で、気持ち悪さと吐気が同時に襲ってきていた。
(……慣れるまで、これは大変かも……)
ホロポート移動や、回転の段階化、視野を狭めるトンネルなど、3D酔いを軽減する機能もVRChatには実装されているようだ。さっそくボクはその設定をして、様子を見ることにした。
(……これで、なんとかなるかな……?)
ネットを見ると、短期的には乗り物酔いクスリを呑むなどの対策もあるという。
ただ、いつも服用しつづけるわけにはいかないだろうし、長期的には身体を慣らすしかないようだ。
(……だいぶ、マシになったかも……あとは、時間が解決するのを待つか……)
ネット記事や会ったぶいちゃ民の話しでは、個人差はあるが、通常移動ぐらいならば、少しずつ慣れてくるものらしい。
(……ふぅ~っ……いいことばっかりじゃないな……早く慣れてほしいよ……)
じっとしていれば、酔うこともない。少し休憩しながら、コントローラーのハンドサインを確認したりする。
(――そうだ。せっかくVRになったんだし……)
落ち着いたボクは前から気になっていた、アバター着せ替えワールドへ向かった。