表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/13

■カワイイおはようツイート♪


 ――――これは、広いメタバースの、どこにでもよくある……


 ただ、ひとりひとりにとっては、かけがえのない、たったひとつのヴァーチャルにして、リアルな物語。。。。。




         ◇◆◇



 スマホ片手にSNSのタイムラインを見ていたボクは、一枚のツイート画像に目を奪われる。


(わぁ~っ、可愛い!!!)


『おっはマカロンっ♪ 今日も一日、ほどほどで、いこ~。マカロンメイドがご主人さまをたくさん応援しま~す。きらりんッ☆』


挿絵(By みてみん)


 愛らしいピンクフリルのメイドさんが、こちらに向かって笑顔で笑いかけてきていた。そのキュートな仕草、ほんのり色っぽい雰囲気に、ボクのハートは射貫かれたのだった。


 それは大学に入った最初の夏休みのことだ。


 長期リゾートバイトの面接に落ちたボクは、今さら実家に帰る気力もなく、他のバイトを探す気にもならず、下宿先のアパートでだらだらと過ごしていた。


 毎日のように友人たちとやっていたFPS(対人シューティングゲーム)も、勝てないランク戦に嫌気が差して、離れてしまった。


(……はぁ~っ、やることないな……せっかくの夏休みなのに……)


 そうして、スマホを手にSNSをだらだらと眺めていたら流れてきたのが、Vチューバーさんらしきヒトの、おはようツイート画像だった。


(Vチューバーの、マカロンさん……でいいのかな、この子? チャンネルとか、持ってそうだけど……)


 キラキラした笑顔に軽くノックアウトされたボクは、ツイートした彼女に興味を持って、そのタイムラインを深掘りする。


 だが、配信チャンネルを持ってるVチューバーさんというわけではないらしい。一人で映ったエモい写真や、大勢で映ったものなど、ゲームのスクショ風の画像が連続していた。


(……いい雰囲気の3Dモデルの画像で、有名配信者かと思ったけど、違うみたい。しかも、ゲームのスクショっていうより記念写真だよね、これ……)


 最初に見た、おはよう!メイドさん画像は、界隈で『おはツイ』と呼ぶらしい。試しに似た言葉で検索してみたら、愛らしいロリっ娘から、セクシーなお姉さんまで、様々な姿でスクショがアップされていた。


(……みんな、イキイキしてて、すごく楽しそう。見てて、うらやましくなっちゃうかも……)


 どの画像も『VRChat』という海外のサービスで遊んで、その中で撮影したものらしい。


(……けど『VRChat』って、なんて読むんだろ……? ぶい、あーるーしー……はっと……?)


 読みかたさえわからなかったけど、アップされた沢山のキラキラした画像から、楽しげな雰囲気が充分すぎるほど伝わってきた。


 調べてみると『VRChat』(VRチャット)というバーチャルリアリティ(VR)空間でなされるチャットアプリの一種みたいだ。


(……VRって、数万円もするゴーグルかぶってやるヤツだよね……機器を揃える必要がありそうだし、ハードルが高そう……)


 ただ、その先入観を取り払いたいのだろう。様々なVRChatユーザーたちは、VRゴーグルなしでもプレイできる、とあちこちで書いたり、発言したりしていた。


(……他のゲームと同じように、デスクトップでも出来るんだ。だったら、ちょっと触ってみたいかも……)


 まだ環境や性能は限られるがスマホでも、中の世界を覗くことは出来るらしい。


 ボクはさらにネットを検索して、超有名PCゲームのダウンロードサイトから、VRChatの詳しい説明にたどりついた。


(……ランキング……VRゲームで上位のほうだ……みんな、結構プレイしてる……?)


 さらにゲーム説明やレビューを読み進めていく。


(『VRChat』ってチャットサービスの一種なのに……でも、ジャンルに対人FPSって書いてある……)


 ま、チャットならば、ある意味対人FPSなのかもしれない。会話で互いに撃ちあうこともある。ふと、そのことに気づいて、クスりと笑ってしまう。


 そのままボクは熱量溢れるレビューに引き込まれていった。


 評価が高く何千時間とやっているのに、やめたほうがいい、最悪なんて、手酷いコメントも散見される。


 ただ嫌悪というよりも、好きになりすぎた結果、それが裏がって嫌いになった感じだ。数千時間、そして時には万を越えるプレイ時間がそれを物語っていた。


 出会い、感動、闘争、愛、安らぎ、別離、そして連帯感に孤独まで、人生の悲喜こもごもが詰まっているように思えた。


 地獄の釜の底に潜って、そうして戻ってこれなくなった――凄まじいレビューの数々を見て、そんな印象を強く受けた。


 同時に、ボクは『VRChat』に強く興味を持った。


(……実際に、体験したくなるよね……これ……)


 しかも『VRChatは無料!』らしい。


(午後から、時間もあるし……すぐプレイできるんだったら、ちょっと覗いてみよっか……)


 せっかくの夏休み、新しいことを始めたい気持ちもあって、ボクは本当に気軽な気持ちで『VRChat』の世界へ初めてインした。


 ――それが、すべての始まりだった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ