九人は信用を得る
民家の中で隠れていた村人も、突然の音に民家から出て、武装して戦える人間がいた村長の家へと速足で集まってくる。
村の全員が村長の家へと集まったようで、人垣が出来上がった。男よりも、老人と女子供の方が比率的に多く、どれだけの人数が抵抗したかをカエサルと四万十は理解した。
「何があったんや!」
「わからん!」
「野盗団の強襲ちゃうか!」
誰かが不安の水面に石を穿ち、その言葉がさらなるどよめきと恐れを波紋が広がるように増長させていく。
「どうするんや! 抵抗するんか!」
「無理や! 戦える男衆は十人もおらんねんぞ」
「・・・・・・ここに、王国騎士団の方々がおる」
透き通るようにマクノヒーの声はどよめきの中を通って行った。村人の目が、七人に向けられる。
「助けてくれ!」
「あんたら、そのために来たんやろ!」
村人たちが七人に群がるように懇願する。
「落ち着いてください、まず中心に集まって、音のする方を開けるようにしてください。私が立ち向かいます」
カエサルは村人たちを誘導して、夕大のスキルで作った、折り畳み式バックラーを取り出して、隠し持っていた剣を抜いて、音の方へと注意を向ける。
音は村の外から、次第に中へと移動してきて、人垣をかき分けるように、板金と金属製の棒を持って音の主である夕大が現れた。
七人の緊張が解けて、カエサルが怒りを含みつつ問いただそうとした時に。
「われ何しとんじゃ!」
ジャックが先に怒りを剥き出しにして夕大に掴みかからん勢いで叫んだ。
「何って、蟠りを無くそうと思ってね」
「はぁ!? どういうこっちゃ! 分かるように説明せいや」
「ジャックも言ってたでしょ」
「何をじゃい!」
「村の人達は外から来たものを信用しないって。だから、信用に値する人間だと証明してみせた。どう? うちの大将は? あの状況で、体張って剣と盾と身一つだけで、この場の全員を守ろうとしたんだけども。それでも信用ないか?」
「そ・・・れは・・・」
ジャックは後ろを振り向く。カエサルが誰よりも一番前で剣と盾を仕舞うところであった。それよりも後ろにいる、玉枝に蔵権にデイモンに四万十が、それぞれ村人を庇うように立っているのにも気がついた。
他の村人も、彼らが咄嗟に身を挺してくれる人間だと理解して、警戒心が解けているようだった。
「怒鳴って悪かった・・・それと、よろしく頼む」
ジャックは恥ずかしそうに夕大に手を差し出した。
「おう。よろしく頼むな」
夕大はその手を笑顔で力強く握り返した。
「あいたッ!」
一段落を得たところで、夕大の頭に怒りの籠った拳骨を落としたのはデイモンだった。夕大は何か言ってやろうと思ったが、デイモンの無言の拳骨に詰まった感謝を読み取れたので、何も言わずに甘んじて受けておいた。