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第4話

   

「ここって、ずいぶんと暗いのですね……」

 そんな言葉が、私の口から飛び出す。

 最初に河原へ出るために通った辺りとは異なり、男に案内された森の小道は、とても鬱蒼としていた。同じ森に入ったとは思えないほどだ。

「まあ、この辺りは木々の間隔も狭いし、葉も生い茂って重なり合っている。ちょうど日光が遮られて、昼間でも暗くなってしまうのですな。歩きにくいですか?」

「いや、大丈夫です。この程度なら、普通に歩けますよ」

 相手を安心させるために、そう言っておく。しかし実際には、半分やせ我慢だった。

 振出竿なので使用時よりは短くなっているものの、森の中で携帯するにはまだ長すぎる。渓流用シューズも、こういう場所を歩くには向いていなかった。

 それでも、せっかく好ポイントへ案内してもらえるのだから、文句を言うつもりはなかったのだ。


 しばらく歩くうちに、本当に周りは暗くなっていた。まるで夜みたいだ。

 もちろん、完全な暗闇ではない。周囲の景色は(うっす)らと見えているが……。

「あれ? どこですか?」

 ふと気づけば、隣を歩いていたはずの男の姿がなくなっていた。

 暗いので見えない、というわけではない。突然どこかへ行ってしまったとか、煙のように消えてしまったという感じだった。

「えっ……?」

 いったい何が起こっているのか。

 慌ててキョロキョロと見回すと、周りの状況もすっかり変わっていた。いつのまにか森の中ではなく、洞窟のような場所に立ち入っていたのだ。

 地面から天井までは二メートルくらい。道幅もそれと同じか、それより少し狭い程度だった。


「……」

 呆然として、言葉を失ってしまう。

 そんな私の頭の上に、水滴が落ちてきた。

 いや、正確には『水滴』ではなく、明らかに水とは異なる液体だった。熱湯みたいな高温で、強酸を浴びたみたいな痛みも感じる。

 しかも、最初は『頭の上に』だったのに、それが腕にも体にもポタポタと落ちてくるのだ。

「まさか、この洞窟って……」

 足元もブヨブヨした状態で、土や岩の地面とは思えなかった。むしろ生物の感触だ。

 どうやら私は、怪物の体内に放り込まれていたらしい。

   

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