雛菊と紅葉
本業の方や私事で忙しく投稿が大変遅れてしまい誠に申し訳ありませんでした。
後期課程に入り数か月が経った。
元の世界では冬は様々なイベントがあるのだけど、どうやらこの世界ではそのようなイベント事はあまりなかったみたいね。他の国ではクリスマスみたいなイベントはあるという話は聞いたけど、王国や魔界にはそういうのはないみたいね。バレンタインみたいなイベントは王国や魔界にもあるみたいだけど…。まあ私には無縁な世界ね。チョコを作って渡すにも、一回自分で作って兄と妹に試食で渡したら気絶されたのよ…。それ以来チョコは作らないようにしてるし本当に無縁ね。
でも、王国では恋人や気になる異性と一緒に過ごす日みたいなのはあるみたいで、学院でもその日はアベックで一緒にいる人達もちらほらといたわね。まあ私にはそんな相手はいなかったから女子会…といっても私とヒナしか集まらなかったけど…。
ちなみにノアとネプトもその日は一緒にいたみたいで、彼らのことだし特に何かあった訳ではないでしょうけど、どうやらこの世界にもそういう嗜好を持つ方々はいるみたいで一部の人達から噂になっていたわね。まあ2人ともそれなりに人気のある男子だったから尚更なんでしょうけど…。
「さて、この本は読み終えたし今日はこの辺りで帰るとしますか。」
私は本日の課業を終えて図書室で小説を読んでいた。
家の書斎には無い物語も多いから結構楽しめるわね。こういうのは私的には有難いわ。丁度さっきまでは補習に遅れたヒナもいたのだけど、補習で疲れたのか少ししてすぐに帰っていったわね。何か思いつめたような顔してたし…。
もう日も沈むころになっていて、図書室の利用時間も迫ってきていた。
「あぁ…。今日は駄目でしたか…。」
「仕方ない。今日は長かったから…。」
私が図書室を出た丁度に図書室の利用終了時間になり、それと同時にラファエルとレベッカが図書室の前にいた。
「あっ、ユフィーアさん。」
「ラファエルとレベッカじゃない。図書室に用があったのかしら?」
「そう。でも、課業が長引いたから…。」
「はい。それは残念ですが、仕方ないです。僕はまた後日伺うとします。」
「それがいいかもしれないわね。」
彼等と移動しながら少し話してから彼等と別れて私は学院寮に向かう。薄々気付いてはいたけどあの二人は付き合ったみたいで今日もデートみたいな感覚で本漁りをしようとしていたみたいよ。恋人いない歴=年齢のアラサーOLの私としては青春してるわね~ってほんわかして思っている反面妬んでしまうところもあるわ。
そんなことを考えながら学院寮を目指して歩いていると、物陰からすすり泣くような声とそれを励ますような声が聞こえてきた。声からして私が聞いたことある声だったし物陰をこっそりと覗いてみると、座り込んで泣いているヒナと、頭を撫でるクレハがいたわ。
「大丈夫ですよお姉さ…そこに誰かいるのでしょうか?」
気付かれた!?…まあクレハは魔法系だし魔力で勘付くことが出来るのかしらね。一応私にも魔力はあるし。
「ああクレハ。大丈夫、私よ。」
「…ああ。ユフィーア様でしたか。てっきり誰か知らない人かと思いましたわ。」
「ユ…ユフィーアさん!?」
「ごめんなさいね。驚かせちゃった上に見てしまって」
「いえ…それは構わないですよ…。そうなった以上仕方ないです。」
やはりというか、ヒナは涙声でクレハは深刻そうにしている。正直私もこんなヒナは初めて見たから驚いている。
「ねえ。私でよければ、話してみてはくれないかしら?その…何があったのか気になったし…」
気になったというのもあるけど、正直放っておけなくなったというのが一番の理由ね。私自身他人に対してあまり情けをかけるタイプではないと思っているけど、こういうのを見てしまった以上知りませんで済ますのもね…。
「そうですね…。ユフィーアさんにはお時間をとらせますがお話させていただきましょうか。」
そう言ってヒナは話してくれたわ。
話によると、また以前絡まれた貴族たちに悪口を言われたとのことよ。しかも、今回はヒナが1人でいたことをいいことにいつも以上に悪く言われたり挙句の果てには彼女の髪飾りについていた花を散らされたり…その髪飾りも、彼女の誕生祝で両親とクレハに作って貰ったものだったり…
そして、ヒナが本当はメンタルが人一倍弱いこと、私達が一緒にいる時は耐えていたが裏では泣いていたこと…色々話してくれたわ。
…正直知らなかったことで驚いたわ…。ヒナとは仲の良い友達だと思っていたけど気付くことが出来なかったなんてね…。いや、ヒナも隠していたのかもしれないわね。友達にこういう姿を見せて心配かけたくないっていう気持ち…私にだって理解は出来なくもないから。
「笑ってくれても構いませんよ。」
「…笑うわけないわ。何もおかしいとは思わなかったもの」
私だって理解出来なくはないから、笑わないわ。というかそんな状況で笑うのはどうかと思うけど…。
「…ヒナは弱い娘です。ユフィーアさんやクレハみたいに強い方ではないのですよ。」
「そんな…。私だってお姉様に頼ってばかりなのに…。」
「クレハ…。貴女は強いだけでなく器量も良く婚約者までいて魔法の力や学力もありますが、私は目付きも頭も悪く魔法も使えず心も脆い…。本当に…姉としては不甲斐なく思います…。」
「そんなことありませんわ!私はずっとお姉様の姿を追ってきていたからわかります!私にとっては世界で一番気高く美しい御方です!!それに私もお姉様のような剣術や集中力や鋭い眼光もありませんし…。」
「クレハ……。」
…確かにクレハの言う通りだと思うわ。最も、最後のは端から見れば褒めているのか怪しく見えるけど…。
「私は…2人のことは何を知っているのかという話にはなるかもしれないけど、2人が合わされば結構いい感じになるんじゃないかしら…。」
私がそう呟くと、2人が反応する
「「ユフィーアさん(様)!?」」
「え…えっとね。2人で1つの存在というかタッグというか…そんな風になればいいんじゃないかなって思ったのよ。2人で互いを支え補っていけばいいんじゃないかしら。そうすれば、精神的な負担だって少しは減るかもしれないかなって考えたのよ。」
漫画とかアニメでもそういうキャラクターはいるからね…。鬼の兄妹とかゲーマー兄妹とか…。
「ユフィーアさん…。少々胸をお借りしますね…。」
ヒナがそう呟いた直後に私の胸に暫く間を置いた後に静かに泣き、暫くした後にまた口を開く
「そうですわね…。確かにユフィーアさんの言う通りですね。」
「お姉様…!」
「思い出しましたよ。かつて父に、「君達姉妹はこれから大変なことが多く起こるかもしれない。っでも、君達は姉妹だ。2人そろえばどんな困難だってきっと乗り越えていける。足りない部分を補いあい支えあうことでね。」と言われたこと。」
えっ…これ既に言われてたの!?なんか二番煎じみたいになっちゃった気がするんだけど…。
「…私は本当に馬鹿ですね…。こんなに大切なことを忘れていたなんて…。」
ヒナが某魔法少女みたいな台詞と共に後悔の念を唱える。
「まあ、そういうこともあると思うわよ。」
「…そうかもしれませんね。」
私がそう言うとヒナもそう呟く。
「ありがとうございます。貴女のおかげで、大切なことを思い出せました。」
ヒナが私にそう礼を言う。なんだか少し照れるわね…。
「その…よろしければ、たまにこうしてもらっても構わないでしょうか?私に無い部分をアピールされてるかのようで癪ではありますが、正直…心地よくて…。」
ヒナが顔を少し赤くしながらそう悪態をつきつつも言う。
「…それ、私に対しての文句かしらね?」
「ふふっ…。そこに関しては冗談ですよ。でも…ユフィーアさんに感謝しているのは本当ですから。なので…。」
そう言うとヒナが私に対して口づけをしてきた
………って……………えっっっっ!!!!??!!??
「あ……あの………これって………」
「ふふっ…。顔が赤くなってますよユフィーアさん。」
「い、いやそうじゃなくてね…。これはどういう意味合いなのかしらって…。」
「さぁ…?どうでしょうね。まぁ、言ったところで困惑するだけでしょうから…」
私がそう聞いてもヒナには軽くはぐらかされる。それに最後の方は小声になっていたからよく聞こえなかったわ…。
「では私はこれで…。ユフィーアさん。また明日お会いしましょう。」
「ユフィーア様。私からもお礼申し上げます。お姉様はきっと喜んでおられますわ。」
「そ…そう…。ならよかったわ。ヒナにはまたいつでも相談に乗るわよと言っておいてね。勿論、クレハも遠慮はしなくてもいいからね。」
ヒナがそう言って去ると少し間をおいてクレハもそう言って去っていった。
翌日以降、ヒナも少しずつではあるけど反発したり毅然と振舞えたりできるようになってきたようで改めてお礼を言われたわ。そしてたまにヒナの相談に乗るけれど…だんだんヒナが私の前では幼女退行してきてるような気がするのよね…。一回「ママ~」って言われたし…。
まあ私は美少年が好きだけど幼女も好きだから私としては問題には感じていないわね。元の私も子供に関する事に携わる会社にいたし…。
ちなみにこれは余談かもしれないけれど、あの日の後私はヒナにキスされたことで悶々としてて一睡もできなかったし翌日も上の空だったわ。別に彼女のことが好きというわけではないわ。でもろくに恋愛経験がなかったから…ね…。流石に不快感のある相手からだったらそうはならないけど、ヒナに対しては不快感はないから…。
まあとにかく、ヒナが元気になってよかったわ。
前書きの続きにはなりますが、本業の方がこれからも忙しくなるので当面の間投稿頻度が減少予定です。楽しみにされている読者の方々、誠に申し訳ありません。
私としても出来る限り時間を作って執筆の方は進めていく所存でございますので、何卒宜しくお願い致します。