新たなる日々への風
お久しぶりでございます。
まず、長い間お待たせしてしまったことに対してお詫び申し上げます。
楽しみに待っておられた方々(いらっしゃるかは怪しいですが…)には大変申し訳ございませんでした。
そして、ご愛読されてる方々がいらっしゃいましたら今後ともよろしくお願いいたします。
「…そ、そんなに驚くことかな…?」
「いやいや…そういうわけではないのですわ。ただ、お父様がそれを勧めるとは予想外でしたので…」
人間の学校…もとい学院は確かに興味はある。私もここに来る前は人間だったわけだし、人間と接触してみたさはある。けど、父がそれを勧めるのは予想外だった。専属の家庭教師でもつけて教育を受けさせるのではないかと思っていたから尚更ね。
「マルミア王国からの招待を受けてね。魔族と人間との相互理解を深めるための一環というわけさ。違う種族だからといって、差別や争い合うことは良くないからね。それからの時代、互いに手を取り合っていくことが大切だと私や王国側の王は考えているのさ。勿論、ユフィーアが行きたくないというのなら強制はしないさ。」
そう言って父に渡された紙を読んでみる。
…どうやら、この学院、マルミア高等学院は王国が運営している王国最大規模の学院で、3年間全寮制の環境でしっかりとした教育が受けられる学院みたいね。見たところ、最初の一年間はあらゆることを学び、その後は各々の適正や夢に沿ったクラスに分かれて教育を受けるみたいね。
「さっきも言ったとおり、人間や魔族が手を取り合っていく世界を作るための一環として今回このような話になったのさ。この話自体は前々からあったけれど、ユフィーアが15歳になって学院に入れる頃になったからね。今話したのさ。それで、ユフィーアはどうかな?興味はあるかな?」
「もちろんですわ!お父様。是非、学院に行ってみたいと考えておりますの」
「はは。ユフィーアがそう言うなら話の方はこっちで進めておくよ。二ヶ月後に入学になるから、時期になったらまた話すよ。」
「姉さんが学院に…。楽しそうな場所ですね。しかし、姉さんが屋敷からいなくなるのは寂しくなりますね…。」
「カイル。寮に入るとはいっても長い休みの時には帰ってこれるからね。そこまで心配することではないさ」
「そうですわよカイル。確かにユフィーアが屋敷にいなくて寂しくなるのはわかりますが、いずれカイルも学院に行くかもしれないのですし、このような状況にも慣れておくと良いかもしれませんよ。」
両親は私の弟のカイルにそう言った。確かに、そのような状況に慣れておいて損はないとは思う。
夕食を食べ終えてお風呂にも入った私は、今は自分の部屋のベッドでゴロゴロしている。いつもならお酒を飲みながらゲームやアニメを楽しんでいるところだけど、それらはこの世界にはないしお酒もまだ飲めないので出来ない。残念だけど仕方ないわ…。
お風呂は貴族なだけあって素晴らしかったわ。ユフィーアにはあって私にはなかった豊かな胸部を直接目の当たりにしたことで少し心がチクっとしたけど、今は私のだし気にする必要がないと考えたわ。それに、これで誰からも何も言われずに好き放題掴めるのだからもう文句は出ないわ。
話は戻るけど、浴場にサウナのような部屋だってあるのも流石貴族だって思ったわ。これで露天風呂もあったら最高だったのだけど…。今度両親に相談してみようかしら…。
それにしても、学院かぁ…。
私、人間だったころの学生時代はいじめられたり仲間外れにされたりこそなかったけど、正直あまり馴染めてなかったのよね…。友達だってそこまでいたわけでもないし…。
だから正直なところ不安はある。まして行く先は人間の国の学院で私は魔族。ついOKしてしまったけど、これ大丈夫だったのかしら…。友達とか出来るかしらね…。
…考えたところで仕方ないわね。案外なんとかなるかもしれないし、憂鬱なわけではないし。
でも、念のために自分の身は守れるようにはしておきたいわね。場所が場所だし…。私の知る展開ではないけど、ここでも死ぬ可能性がゼロとは言えないしね。
あとは、この世界の言葉も勉強しておかなきゃいけないわね。ユフィーアとしての記憶によって現状生活していく上では特に問題はなさそうだけど、難しい言葉や文字となると私としても難しくなっている。それに、これはあくまでユフィーアの記憶であって私自身がものにしているわけではない。その点を考慮しても勉強はしておく必要はあるわね。
そう考えながら、私は眠りにつくのであった…
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あれから日が経ち、とうとう王国へ旅立つ前日が来た。
ここから学院へは馬車で8日はかかるらしく、1週間ほどの時間を要すみたいだから、早く屋敷を発たなくてはいけないようだったわ。大変ね…。長い休みの時にしか帰ってこれないのは残念だわ。王国に住んでいれば休日に帰ることが出来るのでしょうけど…。
「ユフィーア様。ご自分のお荷物の準備はお済みでしょうか。」
「問題ないわよシエリィ。持っていく荷物は全部まとめてあるわよ。」
基本的には屋敷の使用人たちが服やアクセサリー等の生活必需品とかの荷物の準備はやってくれてたけど、本みたいな自由枠な荷物は自分で準備していた。
書斎で見つけたお気に入りの小説数冊やチェスのようなゲームのボードを持っていくわね。この世界にはゲームとかパソコンとかアニメとかがなく、これらばかりを楽しんでいた身としては歯がゆい思いをしたわね…。今は前述したようなものたちが趣味になっているわね。あとはお風呂に設置されているサウナもそうね。それと、父が行く狩りに同行した時に私もやらせてもらった時は楽しかったわね。
ちなみに私はその時はクロスボウや剣を使っていたわね。私がやったことある狩りのゲームでは弓や大きな剣を主に使っていたから最初はそれらを使いたかったんだけど、胸が邪魔だったりそもそもなかったりとかで、結局そこらに落ち着いたわね。
流石にクロスボウとかは持っていけないから休みに狩りが出来ないのは残念ね…。
「さようでございますか。明日は早朝からの出発となりますのでそろそろお休みくださいませ。私も同行しますので本日はもうお休み致します。」
「お気遣いありがとう。これから3年間、色々迷惑かけると思うけど、よろしくね。」
ちなみに、私の学院生活にはシエリィも同行するようで、彼女は引き続き私の身の回りのお世話や護衛をしてくれるようだ。未知の場所に行くのだから見知った人間が来てくれるのはとても嬉しい。
「勿体ないお言葉でございます。それでは、私はこれで失礼します。」
シエリィが部屋から出るのを見届けた後、私もそのまま眠りにつく___
夜が更けて、私の新しい生活が近づいてくるのを感じた。