最上級生に
私は3年生になった。先輩方も卒業し、いよいよ最上級生になった。
そんな私にもちゃんと付く後輩も出来た…
と言いたいところだけど、私には後輩は付かなかったわね。私が魔族ということで良く思ってない人もいるのと、私の二刀流自体がそもそも使う人が少ないということ、現在の2年が例年より少ないことが理由みたいね。
その代わり、時間がある時にノアやヒナに付いている後輩の特別指導をしている。まあ少し違うけど外部講師みたいなものかしらね。というか私達のグループは全員で担当の後輩たちを育てているわ。村単位で子供達を育てるのと似たような感じかしらね。
「もう時間だな…。今日はこの辺りにしておくか。」
「はい!本日はお付き合い頂き感謝いたします!」
後輩たち…ノアに付いてるアリア、ヒナに付いてるルイーズ、カルドに付いてるラウル。この3人がそう声を上げた。3人とも平民或いは下級貴族でコネなしで入ったからそれなりの実力者だし上級貴族様にありがちな変なプライドとかもないから私としても悪く思ったりはしてないわね。
…まあ彼らを良く思ってない者たちも同然の如くいるのよね…。
この前も懲りもせずに私達に絡んでくる貴族たちに絡まれたし…まあノアとヒナが全員試合して叩きのめしてたけど…。
まあそんなこともありつつも着々と力をつけながらも楽しくやっていけてるわね。この調子でさらに力をつけて来るであろう脅威に備えておかなきゃね。
数日後も後輩たちとの共同訓練を行った後、私はヒナと寮の浴場に来ていた。他の生徒たちが大体入り終えた頃ね。まあ今日は鍛錬の後に学院寮と学院の間にある喫茶店で本でも読みながら紅茶を飲んでいたこともあるから遅くなったというのも理由ではあるわ。私がお風呂に入ろうとしたら偶然ヒナと会って、現在一緒に湯船に浸かっているわね。季節も暑くなる夏の頃。汗が流れやすい今の時期はこうして汗を流しておきたいわ。
「天然の湯ではない割に悪くないお湯ですわね…。流石大国ですね。」
「そうね。まあノアみたいな王族はもっと良いお風呂に入っていそうだけどね。」
「確かにそうですね…。ですが我が国の温泉も負けておりませんよ。今度是非いらしてくださいませ。私もクレハもネプトさんも歓迎しますよ。」
「ありがとう。楽しみにしているわ。」
実際それは楽しみね。エルドラドって魔界や王国とは異なった文化になっているみたいだから個人的に結構興味あるのよね。ヒナの服装とか見る限りだと、日本っぽい地域もあるのかしらね?お米とか味噌汁とか…正直恋しくなってくるわ。
「そろそろ上がりましょうか。少し長く入りすぎてしまいましたわ」
「のぼせると大変だからね。特に今の時期は」
正直熱くなっている。まあ軽い女子会みたいなところもあったし私もヒナに剣技を口頭でだけど教えてもらったから長引いたわね。
でもこれだとお風呂に上がってからまた汗が出そうね…。この時期だとありがちなことだけど。
「なんだ。お前らもきて…来てたのか。」
私達が浴場を出てすぐのラウンジで座って話でもしようかと向かったら、ネプトがちょうどその場にいて水を飲んでいた。牛乳じゃないのね…。彼も風呂上がりなのか、服装もラフなものになっていた。正直そっちの方が似合うと思うわ。…というか意外と男前なのね…。
でも、私達を見たと同時に目を逸らし始めた。よく見ると少し顔が赤い。
…これは…カマをかけてみようかしらね。
「女の子のお風呂上がりって、やっぱり男の子からしてもドキドキするものなのかしら」
「バ…馬鹿!んなことねぇよ!!」
あっ。これ完全に思春期男子みたいだわ。可愛い。
「案外可愛いところもあるのね。」
「そうなのですよ。見た目こそワイルドですが、幼少期からずっと人形集めがお好きな方ですから。それも可愛らしいものばかりを。この寮の部屋にも、もしかしたら幾つかはあるかもしれないですね。」
「えっ!?ネプト。今度その人形たち見せてくれないかしら??」
「だああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!うるせぇ!!絶っっってぇ見せねえよ!!」
暫くネプトが顔を隠して恥ずかしがっていた。現在私達以外に誰もいないのが幸いなのかしらね。
まあでも趣味なんて人それぞれだしあまり気にしなくてもいいと思うのだけれど…。
「もうお嫁に…いやお婿に行けないな…。まあそんな相手なんて今はいないが」
暫くして若干目が死んだような表情でそう呟いていた。いや、貴方一国の次期当主なのだしお婿に行く側じゃないのではと思ったけど、まあここでツッコむのもあれかもしれないから黙っておくわ。
「まあまあ。ネプトさんも案外女性から人気はありますし良い立場の人間になるものですから嫁の貰い手には困らないとは思いますよ。」
「んなこと言わんでいい…。それにお前やクレハは脈無しだから説得力に欠けるぞ…。」
「クレハには婚約者がいるみたいだからね…。ヒナはよくわからないけど」
そうこうしている間に、シエリィが軽くお菓子を持ってきてくれたので皆で食べていた。余りもので作った簡素なものだったけど、中々においしかったわね。
お菓子が残り少なくなった頃に、ネプトが突然口を開いた。
「なぁ。これは噂で聞いた話だが…最近、一部の貴族達の風紀が乱れているらしいな。学院の先生方や生徒会の連中やそこ関係がバタバタしているのはそのためか」
「私もそれは聞いたことあるわね。ミーヌが頭を悩ませていたわね。」
「私も聞いたことがあります。なんでも、後輩に迫ったりとか…。今のところ大きな被害はないみたいですが…。」
「らしいわね。でも正直それも時間の問題かもしれないわね。一応私はミーヌから情報が欲しいと言われていて、準備が出来たら学院でちゃんと対応するみたいだけど…。」
「対応自体はしっかりとやりそうではあるが、時間がかかりそうではあるな。いずれにせよ俺らに出来るのは、自分たちについている後輩たちを守ってやることと情報収集くらいだろう。」
「そうですね。せめてルイーズさん達は私達で守ってあげませんと」
そう話しているところ、突然一人の女の子が私達のもとに近づいてきた。
「ヒ、ヒナギク様でしょうか?」
「ええまあ。私がヒナギクですが…。」
「ヒナギク様!?突然の報告失礼します!その…ルイーズとアリアが…。それにラウル君も…。王国の貴族の方々に部屋に連れ込まれていくのを見てしまって…それで…ヒナギク様かノア様かカルド様を探して…。と、とにかく…どうか力をお貸しいただけないでしょうか!?」
大変遅れてしまい申し訳ありませんでした。
本業の方が忙しく更新が滞ると言いましたが、自分の中でちゃんと投稿する日を決めておかないと滞るor失踪の可能性があると考えました。私としても執筆は続けたいし楽しみにされている方々もいらっしゃると思うので、当面の間は次回更新日を予め後書きの方に記載しておこうと考えました。
次回更新は4月10日を予定しております。