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そうだ、王都行こう。

カレーはナン派です。

「そうだ、王都行こう。」


リアと出会って人族探す目的を忘れかけてたことに気がついた。

思い出したならば、善は急げで出発することに。

王都はこの町から徒歩7日かかるそうだ。

乗合馬車なら3日。

「どこでもYEAH」があるから、俺の足だと7日以上かかるかもしれないけど、のんびり散歩気分で向かおう。

と思ったら…、問題が起こった。


リアも付いていくと言い出したのだ。


俺とは未だよそよそしい感じだがこだまにべったり懐いている。

助けてくれたこだまが居れば精神安定上も良いのかもしれないが、旅となると俺とも大分一緒にいなければならない。今は一緒に暮らしていると言っても日中はほぼ別行動。リアはこの状況耐えられるのだろうか…。

そして何より、「どこでもYEAH」はリアには内緒になっているのでものすごく困る。

渋りまくっていたら、リアが馬車を扱えるから馬車で行こうと提案された。

馬車なら、3日。そのくらいなら野宿も我慢できるか?

食材とか薪とか必要なものは全てこだま収納に入れてもらうことで「おうちYEAH」の使用を回避することはできる。

しかたない、出発まで夜な夜な食材の仕込みをしておこう。


シスターと子供達に暫しの別れを告げ、いざ王都へ。


道中はのどか…なんかじゃ全くなかった。

魔物ちょいちょい出るし、少人数の旅人見つけたら襲えって法律でもあるのか、2回も盗賊に襲われました。

全部こだまとリアが魔法で蹴散らしてくれたけど。

せめてものお礼に、ご飯は腕を奮いましたよ。

だって旅の楽しみはやっぱり、食だもの。

一番好評だったのは【エッグホットサンド】だった。

シンプルメニューだがオープンスペースで食べたらやばうまい。


実は今回の旅用にバケツコンロを自作した。

鉄製のバケツの底に等間隔に空気穴を開け、バケツの円周サイズで作った金網をはめる。

バケツの中で薪を燃やせば、はい、コンロ。

バケツだから取っ手が付いていて持ち運びも楽だし、相当便利だ。

このコンロを使うのも実は楽しみだったりする。


【エッグホットサンド】


材料

・卵

・牛乳

・塩

・バター

・食パン

・チーズ

・ベーコン

・トマト


ボウルに卵、牛乳、塩を入れてよく混ぜる。

フライパンにバターを広げ、卵を流し入れる。

続けて食パンを4枚卵の上に並べる。


そのまま触らず焼き、卵に火が通ったらパンごとひっくり返す。

フライ返しでひっくり返すと大抵失敗しそうだったので、上にお皿を乗っけてフライパンごとひっくり返し、皿の物をスライドして戻すというやり方にした。料理下手でも失敗しない確実な方法だ。社会人初期のあまりお金がなかった頃は頻繁にフライパンでお好み焼きを作っていたのだが、その時に多用していたやり方だ。


ひっくり返したら食パンのあった場所の左半分にチーズ、トマトを乗っけて、フライ返しで右半分に折りたたむ。

これでちょうど食パン2枚ずつに挟まれた状態だ。


フライパンの半分開いたスペースでベーコンをカリカリに焼く。

そして2枚の食パンの片側にのせて、チーズ好きならさらにチーズを乗せる。

最後にまた食パンを挟むように半分に折りたためば完成だ。


4枚の食パンが重なった状態の、ボリューミーな【エッグホットサンド】。

食べ応え十分だ。

間に挟むものはお好みなので、こだまとリアはハンバーグ挟んでいた。

ヘビーにヘビー挟むとは若いね。俺は大人しくレタス、トマト、ベーコンだ。


あまりの高評価に浮かれた俺は、マヨネーズもおまけすることに。異世界料理ものでは真っ先に作るもの(?)だが漸く登場。きっとこだまは好きだろう。


【マヨネーズ】


材料

・卵黄

・塩

・レモン汁・サラダ油


作り方はシンプル。

卵黄、塩、レモン汁を入れてよく混ぜる。

滑らかになったらサラダ油を少しずつ加えながらまたひたすら混ぜる。

白っぽくクリーム上になったら出来上がり。

お酢がなかったからレモン汁版のマヨネーズだったけど、爽やかで悪くないと思う。


もちろんこだまはすごく喜んでいた。リアはサラダにかけて食べていた。凄いね、マヨネースの使い方一瞬でマスターしている。


2日目、朝から悲鳴が聞こえてきた。

どうやら前方に盗賊に襲われている一行がいるようだ。

即座にリアが助けに入ると、こだまも後を追っていき、悪党を蹴散らしていた。

襲われていたのはいろんな国を渡り歩いている商業一家だった。

遅れて追いつくと、


「ヒッ…人族!?」

「糞人族と間違われると不愉快なんですよねー。糞人族扱いするなら殺すよ?」


恒例となりつつあるやり取りの後ようやく状況確認へ。


「いやぁ助かりました。私はイルーヴァント王国のハワワから来たパッパというものです。

実は私たちパタタって街へ商業で行く途中だったんですよ。」

「へぇ。パタタで商業を。何もない町ですよ。」

「はい。なんでも最近パタタの町でおいしいじゃがいも料理が開発されているようで、金儲けの匂いがしたものでね。」


フフっと笑う笑顔がちょっと怖いです。

じゃがいも料理の噂、もう外にまで漏れ聞こえてるのかな?


「トルネードうまい。」

「ニョッキも美味ですよ。」

「おぉあなた達パタタから来たんですね。いろんな料理があるみたいですね。これは楽しみだ。」

「この道盗賊多い。護衛やとった方がいい。」


こだまがアドバイスするとパッパさんは苦笑いをして言った。


「実は護衛を雇ってたんですけど、あっさり負けてしまって。一旦マチュールに戻って出直そうかと思います。あなた達はマチュールへ?」

「王都行く途中。王都行くなら一緒に行く。こだまもリアも強いから安心。」


勝手に勧誘してますよこの子。いいけど。

そんなわけで、あと1日の道のり、という所でパーティーメンバーが増えた。

パッパさんとその娘さんのピッピさん。二人は褐色の肌でクモ族らしい。

そして、商人みならいのポルポ、同じくクモ族。

クモ…?

人よりの見た目でよかった…。

みんなすごく賢そうだし、ちょっとエスニックな服装をしている。

そしてそこはかとなく漂うスパイス臭。


「パッパさん達が取り扱う商品って…」

「私たちはスパイス商ですよ。だから新しいメニューには目ざといんです。」

「ほほう。そのスパイスって見せてもらうことは可能ですか?」

「ほほう。スパイスに興味ありますか?是非ご覧ください。」


見せてもらったスパイスは宝の山だった。

カレーが食べたいと日々思ってたらスパイスの方からやってくるなんて。

知らないスパイスも多かったが、たっぷり購入させてもらった。


「いやぁ助けてもらった上に上客にもなっていただけるなんて、今日は本当についている。」


いやいや、こっちこそついてますよ。

今日は絶対カレーですね。

実は俺、昔スパイスからカレーを作ったことがあるんです。

カレー好きが一度は通る道ですね。

その時はレッドチリ、ターメリック、クミン、コリアンダーを使いました。

名前が違うから定かではないが、それっぽいのを探しましょう。


【スパイスカレー&ナン】


材料カレー

・ターメリック

・カイエンペッパー

・コリアンダー

・玉ねぎ

・にんにく

・生姜

・トマト

・肉(今日は鳥もも肉)

・塩

・胡椒


材料ナン


・小麦粉

・ヨーグルト(なければ水か牛乳。今日は牛乳で。)

・塩

・オリーブオイル


まずは玉ねぎ。粗みじん切りにしてフライパンで炒める。

こんがりきつね色…を通り越してじっくり炒めたらにんにく・生姜をすりおろし水で溶いて加える。

香ばしい香りがして来たら潰したトマトを投入。

潰しながら炒め、水分が飛んできたら3種のスパイス、ターメリック、カイエンペッパー、コリアンダーを投入する。

練りながら炒めていけばベースが完成。

これ、もはやカレールウですね。


水を入れて煮立て、1口大に切った肉を入れ、煮込んでいく。

塩、胡椒で味を整えれば【スパイスカレー】の完成だ。


続いてナン。


ボウルに材料を全部入れ捏ねる。叩きながらまとまってくるまで捏ねる。


滑らかになったら乾燥しないように蓋をして15分寝かせる。後は平たく伸ばして両面こんがりフライパンで焼くだけ。


「うまうまうまうま」

「これはこれは、とっても美味ですね。」

「スパイスで煮込み料理作るなんて初めて見ましたわ。とっても癖になる味。すごく美味しいわ。」


こだまは食欲絶好調。気持ちいい食べっぷりです。

リアさんは…お代わりしてたので嫌いではなかったようです。

そもそも、リアさんは何でも残さず食べるので嫌いなものなどあるのでしょうか?

スパイス商にも好評でした。カレー嫌いな人なんて世の中いないのだから当然の結果だ。

そんな感じでカレーに舌鼓をうちつつたどり着いた王都。


王都に入るのはめちゃくちゃ時間がかかった。

長蛇の列を見た時まさかとは思ったけど、やはり並ばなければならなかった。


「人族がのこのこといい度胸だなぁ!」

「糞人族と一緒にすんじゃねぇ。殺すぞ!」

「だったらこれ触ってみろよ!」

「上等だ!」


バチーンと叩き割る勢いで水晶を叩く。うん、すごく痛い。

すると水晶に文字が浮かび上がる。


ヤシマ・ラク

41歳

種族…該当なし

レベル

HP…1370

MP…0

魔力適性…なし


おぉステータスぅ。


感動してたら、受付の人が哀れんだ目で見ていた。


「魔力0。よくその歳まで生きて来れましたね。種族…?人族じゃなかったみたいなんで、入っていいですよ。ようこそ王都へー。」


大騒ぎした後、変な水晶触らされて憐まれ、入れてくれました。

なんだよ、畜生。

この水晶、DNAを読み取ってどの種族の系統かで種族判定するようだ。

俺はこの世界にルーツを持っていない。つまり種族を分けるためのDNAもないとのことで該当なしとでたらしい。内心冷や冷やしたが無事人族とは違うと証明された。

人族と違うとわかれば現金なもので、パタタでは身分証を発行する施設がないから、ギルドで身分証を作成するといいと丁寧に教えてくれた。


「まぁ身分証作ったとしても列に並ぶのは変わらないがな。」


魔力ない証明書になりそうで気が進まないが一応作っておくか。

パッパさん一行と別れて、まずは宿の確保に。

正直どこも結構高かった。

賃金格差すごいんだろうな。

悩んでいたらリアがさっさと1部屋に決めてしまった。

部屋を覗いてみたらちょっと大きめなベッドが一つとテーブルと椅子が3脚あるだけだった。

うん、俺は椅子並べて寝るしかないな。

若手社員の時によく泊まり込んでそうやって寝てたっけ。

懐かしい光景をちょっと名残惜しく感じつつギルドへと向かった。

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