不測の事態
久々です、どこでもYEAH。もしドアが出現するスペースがなかった場合はドアが開かなくなり、家に閉じ込められてしまうのでしょうか。想像すると怖いです。
さて、デザートを作ろう。クルにアイスの作り方を教えたいので【クルフィ】を作ろうと思う。インドのアイスクリームで普通のアイスとの違いは温度くらい?通常のアイスクリームが-10℃で作られるのに比べもっと低温で冷やされるものだそうだ。冷凍庫がだいたい-18℃なので冷やしながら混ぜるアイスクリーム機を持ってない人はこっちの方がただ凍らせるだけなので簡単なのだ。魔法で冷やせるクルにはもってこいだろう。
【クルフィ】
材料
・牛乳
・練乳(牛乳・砂糖)
・カルダモン
・シナモンスティック
・ナッツ
カルダモンとシナモンスティックはスパイスが豊富なイルーヴァントで入手ホヤホヤ。早速の出番だ。
まず鍋にナッツ以外の材料を入れて弱火にかける。半分位の分量になるまで煮詰める。これ意外と時間がかかるからこだま先生に魔法で助けてもらったぜ。続いてシナモンスティックを取り出し、逆にナッツを細かくくだき混ぜ入れる。後は器に入れて冷やすだけ。インドではマトカと呼ばれる壺にいれて凍らすらしいがマトカなんてもちろん持ってないのでココットに。
因みに練乳はもちろん自家製。牛乳と砂糖を入れてコトコト煮込む。こちらもとろみがつくまでじっくり。甘味ってやたらと時間がかかるな。こだま様様です。練乳はいちごにベストマッチだからクルの為にたっぷり作り置きしておいた。
「さぁ、クル。この【クルフィ】の素を凍らせるんだ。」
「クル!キエサーオログ!」
クルが魔法を唱えるとあっという間にココットが凍りつき、【クルフィ】が完成した。
「おぉ、すごいな一瞬だ。さぁ【クルフィ】が完成だ。食べてみよう。」
「うまうまうまうまうまうま。」
「おぉ!頭がキーンってするぞ!」
「スパイスが効いてて甘すぎる感じがしない。すごくおいしい。」
「アイスおいしい!」
すごい勢いで食べるこだまとエティ。案の定エティは冷たさで頭をやられているがこだまは大丈夫なのだろうか?リアとクルもお気に召したようでなによりだ。こちらはゆっくりマイペースに食べている。
「甘いの食べたら次はしょっぱいの。楽、ハンバーグ。」
「………え?」
オレキシンの効果ヤベェ。
「ねぇ楽。外の様子が変。板に囲まれている。」
食後の紅茶に舌鼓を打っていたら玄関の方から戻ってきたリアが変なことを言う。板に囲まれているとは?急いで玄関のドアスコープから外を覗いてみると確かに板張りが見える。森の中に設置したはずなのにだ。そうなると外の様子を確認したくなるのだが、再びドアを出現させて良いのか悩む。
「これ開けけたらどうなると思う?」
「今のところ板しか見えないし、音が聞けないから安全かわからない。」
そう、外の様子はドアスコープから確認できるのみ。音は聞こえない。今自分たちがどこにいるのかわからない。もしかしたら敵の目の前かもしれない。
「そうなんだよなー。ちょこっと開けて音聞いてみる?」
「もしさっきの男が目の前にいたら、ドアが見えちゃうよ?」
「そこなんだよなー…。」
「あ、動いた。」
ドアスコープを楽しそうに見ていたクルが外の変化を教えてくれた。代わって覗いてみると、確かに板が横にスライドしているように見える。右にスライドしたかと思うと、今度は左。何度か左右に振ったのち、大きく旋回。するとこの場所の状況が何となくわかってきた。
「おっきい箱の中にいるみたい。なんで動いているのかは分からないけど左右見た感じでは、他に誰もいなさそう?上と下は分からないけど。」
「回転している理由も分からないしな…。でも人がぱっと見は居なそうだから試しにちょっと開いて音聞いてみる?」
「うん、それがいいかも。」
俺達は万一に備えそれぞれの武器を手に玄関ドアの前にスタンバイする。俺はボーガン、リアはナイフ、こだま、エティ、クルは手ぶら。いや…3人ともアイス片手だ。まだデザート食べてる。
一つ息を吐き、ゆっくりと音を出さないように鍵を回す。鍵が開いた瞬間に地上にはドアが出現する事になる。せめて音を出さないようにしたい。
カチリ。
小さな金属音とともに解錠、ゆっくりドアを押すとむわっと外の空気と音が入ってくる。
ガタガタガタガタ…。
これは一体何の音だ?
「わーおっきい亀さん!」
何故でしょう。外からクルの声が。
「おぉおっきいぞ!お前もアイス食うか?」
エティの声までします。
「亀はアイスは食べない?」
あぁこだままで。
仕方なくドアから顔をひょっこり出してみれば、ドアから出た先はウミガメサイズの亀の甲羅の上だった。そしてこの甲羅の感じ見覚えがある。
「あれ、この石…どこでもYEAHを設置した石に似てるな…。」
「きっとこの亀の甲羅を石と間違えてドアを乗せちゃったのね。そして亀が移動したからドアも移動した。」
「えぇーまさか!」
「でもほら、亀が回るとドアも一緒に回っている。」
外から鍵をかけるとドアが消えても鍵穴が残るのだが、宙に浮いた鍵穴が亀の動きに合わせて回転している。どうやらリアの推理が正解のようだ。
「確かに…。亀が移動したからこんなところに移動してきちゃったのか。で、ここは?」
周りは木の壁に囲まれていて、ガタガタと揺れている。まるで貨物馬車の中のように。亀はジャストフィットで回るぐらいしか動けない箱(蓋なし)に入れられていて、俺達がドアスコープから見ていたのはこの部屋の壁だったようだ。あたりには他にも箱が詰め込まれている。そしてドアスコープからは見落としていたが壁の一箇所に引き戸スタイルの小窓がついていて、その窓の外に人の気配がする。慌てて声を潜める。
「み、みんな静かに…。どうやらここは荷馬車みたいだ。その先に御者がいるみたいだな。」
「うん、確かに2人気配を感じる。ガタガタ煩くて、私達の声は聞こえてなかったみたい。気配を気にする事なく運転しているわ。」
「なるほど。でも人がいるとなるとどういう経緯でここに辿り着いたのかが問題になるな。商人か誰かが亀を見つけて連れてきたか…。」
「あの黒い服の人族が怪しいと思って連れてきたってのも考えられるわね。」
「そう、その可能性も否定でいない。」
「楽、楽!武器がいっぱいあるぞ!」
リアと考えをまとめていたらエティが剣をぶんぶん振り回しながら戻ってきた。
「シー!!エティ、その武器どこから持ってきたんだ?」
「あそこの箱にいっぱい入ってたぞ!」
エティの指し示した箱を覗いて見たら確かに剣がたくさん敷き詰められている。すごくシンプルな作りで量産型っぽい。
「こりゃー黒男説が濃厚になってきたな…。」
俺達はそこからこの荷台に積まれた荷物を調べたり、こっそり外を覗いて現在地を把握する事にした。
結果、この荷台に積まれているのは概ね量産型の武器。そして現在地はわからないがどこか平原を移動しているようだった。前に何台の馬車が連なっているかは見えなかったが、後続にはたくさんの馬車が続いていて、御者の格好は明らかに兵士っぽい。まさに戦地へ向かう兵士達一行のようだ。
「うん、明らかに黒男の仕業だな。おうちYEAHばれたのかな?」
「おうちは異空間で気配も全て消えちゃうからバレてはいないと思う。多分唯一あの場で見つけられた怪しいものがこの亀だったんじゃない?あの男、服従香を邪魔したの私達だって気付いてそうだったし、諦めきれなかったのかも。」
「うへぇーしつこい男はモテないよ?」
俺はしつこい男にはなるまいと改めて心に誓う。さて、ここからどうするかが問題だな。




