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飯テロ①子供への餌付けは飯テロの一環です

子供の心を掴むのはいつの世も芋とインパクトです。

町を見て回って気づいたのは、ここの食事の味付けの基本は塩、砂糖くらいしかないこと。

主食は小麦で作ったパン。野菜スープや、肉や卵を焼いて塩で味付けしたものが多く食べられている。

ちょっとお高めだがチーズやバター、オリーブオイルなどはあるようだがケチャップ、マヨネーズなどの調味料は見当たらなかった。中世ヨーロッパくらいまでの食文化レベルなのかな?

洋風食材が多く味噌醤油などはもちろん見当たらないし、スパイス系もあまり多くなかった。


「みんな、じゃがいも切る。」


こだまの指示のもと子供達と調理開始だ。

作るのは【ハッセルバックポテト】。スウェーデンの伝統料理で別名アコーディオンポテト、じゃがいもを美味しく食べられる一品だ。


【ハッセルバックポテト】


材料

・じゃがいも

・バター

・ガーリックパウダー

・塩

・胡椒


まず、じゃがいもを底5mm位残して細く切り込みを入れていく。じゃがいもを割り箸で挟み切り込みを入れていけば底がつながった状態で上手に切れる。生憎割り箸はないので、木を細く切って子供達に使ってもらった。


溶かしたバターにガーリックパウダー(すり下ろして魔法でサクッと乾燥してもらった)、塩、胡椒を入れてよく混ぜじゃがいもと絡める。鉄板にじゃがいもを並べ、ハケでオリーブオイルを塗りオーブンで焼く。


因みにオーブン、孤児院になかったので裏庭にレンガサイズに切り出した石を重ねて手作り釜戸を作ってもらった。畑の横の土地から大きめな石を魔法で取り出してもらい、その石を均一のブロックに切ってもらう。コの字型に積み上げ鉄板を乗っけるキャンプとかで見かけるタイプのやつだ。

下の部分に焚き火で火をつけ、その上に鉄板を乗せ、鉄のフードカバーを被せれば即席オーブンとなる。

ピザとかもこの方法で焼けるから昔キャンプで重宝した。


シスターが換金から戻ってきた頃、【ハッセルバックポテト】も完成。

ガーリックとバターの食欲そそる香りが孤児院の外にまで漂っていたらしく、お腹をグゥグゥ鳴らしながら入ってきた。


「×∃□◉⊆∮(こ、これは何の匂いくま!?)」


よだれもダラダラでした。熊がよだれダラダラ、めちゃくちゃ怖いんですけど…。

もちろん子供達も唾を飲み込んで竈門を見つめています。


「じゃがいも焼いた。みんなご飯だよ?」


焼き上がった【ハッセルバックポテト】を並々大皿に盛り付け机の上に。

そして、子供達とシスターに顎で促す。言葉分からないからね。

最初は頑張って遠慮してた子供達だったが、こだまが1つ口に運び、


「うまうまうまうま」


と勢いよく食べ始めると、我慢できずに手を伸ばす。

一口食べれば、もう止まらない。凄い勢いで食べていく。


子供達が【ハッセルバックポテト】に夢中になっている間にもう一品作ることにした。


【ブランボラーク】


材料

・じゃがいも

・卵

・にんにく

・片栗粉(本当は小麦粉でもいい)

・塩

・胡椒

・バター


付け合わせ

・豚肉

・キャベツ

・砂糖


作り方


じゃがいもをすり下ろし、卵、すり下ろしたにんにく、片栗粉、塩、胡椒を入れて混ぜる。

片栗粉はじゃがいもをすり潰して、絞って、そこにたまったのを乾かしておいた。

魔法があれば乾かすのもちょちょいだから、片栗粉は簡単に作れる。


フライパンに油をひき、弱火で両面10分ずつ、きつね色になるまで焼く。

これでブランボラークは完成。


次に中に挟む具材。

キャベツは千切りし、塩を少し入れ揉み込み、砂糖少々を混ぜ入れ、しんなりするまで寝かせる。

簡易ザワークラウトだ。

因みに重石を置いて半日から1日程度常温で置いておき、あとは冷蔵庫で保存すればもっと本格的なザワークラウトになる。長く置くほど酸味が出てくる。

まぁ子供は酸味好まないだろうから簡易で十分だろう。


豚肉は粗ミンチにして塩胡椒してカリカリめに焼く。

因みにもちろん孤児院に肉なんぞなかったから、肉は楽の自前だ。

狩りまくって肉だけは豊富にある。むしろ肉しかないのが楽の悩みだったりする。


あとは焼いた【ブランボラーク】にキャベツと豚肉を挟むだけ。

挟むものはお好みで変えても美味しい。ソーセージとしんなり炒めた玉ねぎのホットドッグ風とか。

ソーセージ、暇な時に作っておこう。


「シェリーどこ?」

「’&%$%&(シェリーはここくま。)」


見ればシェリーというハリネズミ少女は栄養失調気味でフラフラ。でも【ハッセルバックポテト】少しは食べられたようである。


「これ、肉も小さくて食べやすい。食べる。」

「□●&(おいしそう…)」


すりつぶした【ブランボラーク】は柔らかくてもちもちした食感。そして肉もしんなりしたキャベツも栄養失調気味の子供達でも食べやすくて消化しやすいだろう。シスターに買ってきもらった牛乳を温めバターを落とした栄養補助ドリンクとともにシェリーの前に出す。


「□●#(おいしい…!」


一口食べると、一生懸命食べ出すシェリー。これなら元気を取り戻すのも早そうだ。


「%”#▷(肉だ!肉がある!)」

「’&$#□%$(なんだこれ!?)」


集まってきた、子供達のテンション爆上がり。

みんなの分もどんどん作っていくと、飢えた獣のようにガツガツ食べ始める。まぁ、本当に飢えた獣なんですけどね。


「&#”%$&□&%●○(おじちゃんこれ初めて食べたけど、めちゃくちゃうまいな!)」

「&%”#□&▼&%(これがじゃがいもなんて!スゲーこんな食べ方初めて。スゲーうまい!)」

「%$#▲●#(おかわり!)」


うん、何言ってるかさっぱりだ。

早く言葉覚えたい…。


そうこうしているうちに、料理の匂いや子供達の大盛り上がりに近所の人たちが集まってきた。


「▼△○&%(な、なんだすげーうまそうな匂いだな。)」

「#%&(子供達があんなに嬉しそうに食べてる…。そんなにうまいのか?)」

「Σς▲◆(見たこともない料理だ。な、なぁ少し分けてくれないか?)」


そう、実は見せびらかすように孤児院の前で大食事会を開いていたのだ。見たこともない料理と美味しそうな匂いに唾を飲み込む人々。


「みんなも食べたい?」


こだまが尋ねると、


「%ασ(頼む!我慢できない、1つ売ってくれ!)」」

「◉⊆∮▷(俺にも!俺にも売ってくれ!)」


たちまち湧き立つ群衆。

シスターに確認したところ、この町の食事の相場は1食150〜250リロ。この国の通貨の単位はリロらしい。今はユーロだけどイタリアの昔の通貨リラにちょっと似ている。食文化もヨーロッパ寄りだし、何か共通点あるのかな?

じゃがいもは小ぶりだから【ハッセルバックポテト】は1個20リロ。【ブランボラークは】お肉も入っているし1個60リロ。そう伝えると飛ぶように売れた。俺は裏でせっせと作り続け、まさかの完売まで作り続ける羽目に。めちゃくちゃ疲れた。


満足げに大人達が帰っていった後、いよいよシスターと大人のお話だ。


「はい、今日の売り上げ。」

「#%&⌘×∃(え、なんでくま…?)」

「孤児院のじゃがいもこだまたちが買い取った。でもまだお金払ってない。

じゃがいも売ってできたのがこのお金。だからこのお金でじゃがいも代払う。」

「◆π$(でも…)」

「足りない?」

「⌘×∃□◉⊆∮▷(とんでもないくま!多すぎるくま!じゃがいもなんて買う人いないくまから!)」


やはりこの町ではじゃがいもの地位が著しく低い。主食は小麦粉で作るパンで、小麦粉が買えない人がじゃがいもを買い、蒸して食べるのみ。言わば小麦粉至上主義の町なのだ。あのガラ悪小麦粉やろうが偉そうなのもうなずける。


「こだま達この孤児院でじゃがいも屋さん始める。」

「π$#%&(じゃがいも屋さんくま?)」

「100万リロで孤児院買い取る。それでじゃがいも屋さん始める。」


岩塩を売ったお金はなんと100万リロになったそうだ。ちょっと使っちゃったけど丁度孤児院の借金100万リロ分。楽達はそのお金でシスターに相談を持ちかけた。この100万リロで孤児院を売ってくれと。そして買い取った孤児院でじゃがいも屋を開くという。シスター、子供達は住み込みで従業員として雇うし、もちろん給料は払う。稼いだお金でもし100万リロ分達成出来たら、その時はそのお金で孤児院を買い戻してもいいとの条件もつけた。しばし考えたシスター。しかし孤児院が借金で後がないのも事実、楽達の提案に賭けることにした。なによりお腹いっぱいで久々に笑顔になった子供達をみて賭けてみたくなったのだ。こうして楽達は飯テロのステージを手に入れたのだった。

定番メニューはつまらないから、なるべく変わり種メニューを選ぼうと思います。

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