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ワノナ国ソッジャ村

見た目人族だから、潜入捜査は楽チンです。

俺たちは今、湖の上でフィッシュパーティーをしている。こだまとエティが連携して仕留めたあの巨大な魚だ。迷惑かけたエルフにも半分以上あげたが食べ切れないほどの魚が皿の上に乗っている。早く食べたいからしゃぶしゃぶだ。昆布出汁にくぐらせ、醤油とレモン汁を混ぜたポン酢で食べる。シンプルうまい。


「ここにいてもつまんないから、人族の方偵察してみる?」

「うまうまうまうま」

「オラ、忍者だから偵察したいぞ!」

「エティ、お前ヒーローじゃなかったっけ?」


最近エティはケルプでヒーローと崇められたことに味をしめ、家の漫画を読んで勉強しているようだ。昨日忍者亀シリーズ見てたからな…。


「じゃ、サクッと行って、嫌がらせでもしてくるか。」

「うまうまうまうま」

「オラ、忍び込んでピザ食べるんだぞ!」


忍者亀達は、流石に忍び込んだ先でまでピザ食べてなかった気がするが…。

ま、そうと決まれば、早速移動開始だ。できる男の鉄則は、即行動だ。食べ終わったと同時に人族の村へと出発。夜、リアが俺たちの様子を見にきた時には、俺たちはすでにタルウィドゥナを後にしていた。


実はタルウィドゥナに来るにあたって、楽達は変装道具を用意していた。巨大魚騒動で装着が間に合わなかったので、今回は最初から3人揃って仮面を装着している。この仮面、何を隠そうあのフリーズドライ機をゲットした迷宮で見付けた仮面だ。裏面にびっちり模様が刻まれていた気持ち悪いあれだ。不思議なことに装着すると、つけた人の骨格に合わせて調節されピッタリフィット。しかも喋ったり瞬きもできる特殊メイクみたいなマスクになるのだ。あの紋様は魔法陣みたいなものだったのかな?フリーズドライ機も紋様ついてて朽ちずに残ってたし。装着後は顔面にデザインが刻まれた感じになる。こだまもエティも装着済みでカッコよくなってる。何より嬉しいのが、こだまとエティの顔色を隠してくれる点。服で体を隠してしまえばただのロックな子供だ。これなら人族に紛れられると思う。さらに、とっておきの服を用意した。騎士の制服だ。盗んでなんかないよ?【ケイジャンスパイス】あげたら親切な騎士団長がくれたの。フフ。騎士は能力(魔力)が高ければ特例で子供でもなれるらしく、こだまとエティのサイズも難なく手に入った。


変身グッズにご満悦なこだまエティと西にバイクを走らせると程なくして沿岸と底に陣を張る人族が見えてきた。目立たないよう大きく回り込み、陣に近づいてみる。騎士の格好だからか全く疑われていない様子だ。

ざっと回ってみて分かったのは、ここがソッジャという村をベースに作った陣で、水が引くのに合わせてじわじわエルフの国を目指している。人族の隊長は結構部下達に慕われていて、騎士の数はそこまで多くはないが指揮系統がしっかりしているので戦力は高い。雨季が終わるのを待つこともあって長期戦を覚悟しているからか、たまに労い飯を振舞い騎士達の戦意を維持しているようだ。戦争にうまい飯とは隊長、なかなかの切れ物のようだ。しかし、飯か…。


「楽、悪い顔してる。」

「おぉ!ラスボスは楽だったのか!」


煩い子供達は無視して、早速調理班に忍び込んでみよう。


「すみませーん。新しく調理班に配属されたんですけど、ここであってますか?」

「ん?直接配属されたってことは料理の腕見込まれてってことだな?そいつぁありがてぇ。こっちだこっちだ。」


何の疑いもなく楽に潜入。楽だけに。糞ダジャレ?すまん、老化現象だ。


「おめぇら変わった刺青だな?」

「俺たちすっごい田舎から出てきて…。」

「おぉ蝦夷族的なやつか!かっこいいな!」


蝦夷族ってこの世界にもいるのかな?まぁきっと地球のとは違うだろうけど、疑われなくて良かった。ありがとう蝦夷族。


「こっちの2人はうちの子で、こ、ココとエコ。俺はコーダだ。」

「可愛い坊主だな。いい息子達じゃないか。」


ガハハと笑うこの人は今日の料理当番でガンテツさん。裏表のなさそうな人だ。無駄に筋骨隆々で、素肌にベストを羽織っただけだから、実に男臭い。ベストは筋肉のせいで前が閉まらないのか、邪魔にならないようズボンにインしている。足首のところが窄んだダボっとしたパンツに草履。空飛ぶ絨毯系男子を彷彿とさせている。髪はきれいに剃り上げられていて日焼けのせいもあって黒光りしている。

いい人そうだが、こだま達を息子って…どうせ間違われる年ですよ、チェッ。

この騎士団では隊長の命令で、ご飯だけは十分に食べさせる事になっているそうだ。戦う力となるのはもちろん、戦争中は娯楽もなくストレスがたまる。少しでもご飯で満足感を得られれば騎士達の戦意を維持できると考えているらしい。隊長とやらはなかなかのキレものなのかもしれない。そしてそのお陰か、騎士達からの信望もあついようだ。


「隊長についていけば、この騎士団は安泰だ。お前ついてるな!」


だそうだ。でも戦争中に満足な食事ってかなり大変だけど、有効な手段だと思う。どんなに辛くても美味しいご飯で帳消しにできるし、後でご飯が待ってるとなったら頑張れるもんね。

しかし、しっかり食べるって長期戦になればなるほど大変だ。雨季が終わるまでにはまだ1ヶ月位ある。どうやってこの人数分の食材を調達しているのだろうか?


「そこは、もちろん現地調達さ。隊長はそこんとこ考えてルート選んでるからな!天才だな!ガハハッ」


ほほう。現地調達ですか。そこんとこもうちょっと調べてみようかな。

と言うわけで、騎士服脱いで村をウォーキング。ソッジャという村は湖に近いこともあり、水の引きやすさから米を積極的に作っているらしい。また、湖が年1で土壌改善してくれるのを利用して大豆も育てている。大豆は連作障害を起こしやすいが、環境のを活かすことで大豆が潤沢に収穫できるらしい。なかなか魅力的な村だ。

隊長は米を戦争で勝った戦利品を担保に買い取り、騎士の食料に当てているようだ。今はまだ米だけだが、万一米が足りなくなったら大豆も買い占めるつもりらしい。

無理やり買い叩かれた村人はというと、どんよりとした雰囲気。確実に迷惑している。きっと文句言えないんだろうな。これでもし戦争が起こらなかったら…。

よし、みんなに美味しく帰ってもらおう。フフ。


「こだま、楽がまた悪い笑いしてるぞ!」

「今度はどんなうまいの作るかな?」


さぁ、飯テロのお時間です。

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