緑の光を求めて
油断は冒険のもとである。
エティに話を聞いてみると、さっき見えていた青い光はエティの大切な仲間なのだそうだ。
本当はもう1個、緑の光がいて、その光がいなくなってしまったらしい。
エティと青い光は手分けして緑の光を探していたのだが、様子を見に来てみたら呑気にご飯を食べているエティを見つけたそうだ。
「で、緑の光はいつどこでいなくなったの?」
「オラ達、湖の上で昼寝してたんだぞ。目が覚めたら緑いなくなってたんだぞ。」
「さいですか。青い光さんも見てないの?」
「青はオラが寝相で上に乗っかってきたから見れなかったっていってるぞ。」
「さいですか。ってお前のせいなんじゃ?なんで湖の上で寝てたんだ?」
「オラ達山の上の方で釣りしてたんだぞ。でも全然魚見つからなくて、気がついたら寝てたぞ。」
「もしかして、さっきみたいに水の上から魚探してた?」
「そうだぞ。」
「で、水の上で寝落ちした。お前ら完全にここまで流されて来たんじゃねーか。」
「おぉそうだったのか。」
その時、湖の水面を魚が飛び跳ねた。
「緑の光、まさか魚に食べられたんじゃ?」
「おぉ!釣りする時、光を餌に使うから、その可能性あるぞ!」
「ダメだろ、仲間を餌にしたら。それじゃ、その魚探さなきゃいけないのか?ハァ」
広大な湖を眺め深いため息を落とす。
聞けば、光は食べられても死ぬことはない。
食べられたのなら腹が光ってる魚がいるはずだと。
もう日も暮れ始めているのに…。
いや、光だから日が暮れたほうが探しやすいのか?
夕飯の後のまったりを堪能した後、夜の防寒対策。
大人用スノーブーツ(たまにスキーをしていたので何足か持っていた)と、子供の頃のスノーブーツを引っ張り出し、俺、こだま、リアが装着。
コートマフラーも着込んでいざ湖へ。
「オラも、オラも!」とせがんだエティはモコモコであったかそうだったので、マフラーだけ貸してあげた。
マフラーを巻いて満足げに先頭を歩くエティ。今俺たちはエティの後を追うように湖の上を歩いている。
そう、エティの力を使っての湖の上を散歩作戦だ。
こっちは星もすごい綺麗だし、結構楽しい。
エティくらいは救出の緊張感を持ってもらいたいものだが、緊張感ゼロでのんびり歩いている。
湖面を歩く経験なんてもちろんないから、俺までウキウキでとても救出作戦っぽくない。
夜の湖はものすごく美しかった。夜空の満点の星はもちろん、風も穏やかで波が少ないが、時折立つ波に星の光が反射して、光の空間の中にいるみたいだ。
あのチームなんちゃらラボ、行ったことないけど、きっとこんな感じなのだろうか。
いや、自然の超絶景には勝てないだろう。
ランタンをつけなくても十分明るい。こだまは何故か青い光を口に入れようとパン食い競争状態だ。
多分それ美味しくないよ?
リアは弓釣(?)が気に入ったのか、魚を釣っては空に放り投げる。するとどこからともなく来た鳥がさっと食べる。まるで鳥に餌付けしているようだ。ご丁寧に鳥が食べやすいように、なるべく小さめな魚を狙っている。リア、俺より弓釣り旨いな…。
景色を堪能しつつ大分歩いたが今のところ光る魚は見つかってない。ちょっと疲れてきたので休憩がてら、ホットドリンクと軽食を作ることに。
早速バケツコンロを準備する。氷の上ちょっと不安だから、一応下にヨガマットを敷いておいた。ゴムなら熱伝導率低いから即氷が溶けるってないよね?
火を焚べ、小さめの鍋に赤ワイン、レモン汁、シナモン、生姜、クローブ、ブラックペッパー、蜂蜜を入れて煮詰める。寒いところで飲む定番、ホットワインだ。
こども(?)もいるので、チャイも作っておこう。
更に軽食は熱々【チーズフォンデュ】。
【チーズフォンデュ】
材料
・チーズ
・にんにく
・白ワイン
・片栗粉
・お好きなディップ素材
鍋ににんにくを擦り付ける。白ワインを入れ、煮詰めてアルコールを飛ばす。細かく刻み、片栗粉をまぶしたチーズを入れてとかしていく。チーズが溶け切り、プツプツしてきたらコンロの端に寄せ弱火に。
「みんな、できたぞー。」
パン、じゃがいも、ベーコンを焼いてはフォンデュ。
はい、うまいです。
チーズは正義です。
ホットワインも程よい酸味で体の芯から温まって、最高。こだまとエティはやはりおこちゃま(?)だからかチャイの方が好みの様だ。リアはホットワインを気に入ったみたいだ。
「エティ、そういやお前何歳なんだ?」
「覚えてないけど、たぶん70歳くらいだぞ。」
「わぉ、大先輩。」
歳取りすぎて幼児化してるのか?
ベンジャミン・バトン(古い)じゃないか!
「楽、エティは人年齢に換算すると7歳児くらいだ。」
「ただのガキじゃないか、ベンジャミン。」
リア曰く、イエティは寿命という概念をもたない種族らしい。
999歳まで育ったらよく0歳に戻ってを繰り返し、ずーっと生き続けているらしい。
…無限ベンジャミン・バトン?
ちなみにエルフは獣人族・人族よりちょっと長生きなくらい。ドワーフは基本年齢覚えてられないからはっきりしないけど、普通だと思うとのこと。
こだまは…?
そんな感じでまったりしてたら気がついたらこだまとエティはスヤ~夢の中。寝てるのに足元の氷消えないなんて、すごいな。
船を漕いでるの見た瞬間はちょっと焦った。
ふぅ、肝を冷やしたぜ。
「楽は私のこと避けてる?」
今日はもう休むかなーとか思ってたらリアが突然重い話ぶっ込んできた。
「い、いやそんなことは…。」
「アルマジロ親子と話すときはすごくお喋り。」
「そ、そう?」
「スラムの子たちとも。」
「あれは絡まれてるだけ…?」
「エティとも楽しそう。」
「それは断固ないと思うぞ。」
「こだまともたくさん話してる。」
「こだまのことは好きだからな。」
「私のことは嫌い?」
「ん?そんなことはないよ。絶対ない。」
「でもほとんど話しかけてくれない。すごく距離も感じる。」
「おれ、見た目は人族に似てるだろ?」
「楽は人族じゃないって言った。あれは嘘?」
「嘘じゃない。…でも、みんなの反応を見ていると俺は人族と近いのかもしれない…。」
「楽はどう思ってる?」
「糞人族と間違われるのはすげー嫌だな。」
「じゃ、楽は人族じゃない。なら、楽のこと怖くない。」
「そっか。」
「うん。楽怖くない。こだまと同じくらい楽のこと好きだよ?だからもっと話したい…。」
「そっか…ありがとな。」
「うん。」
思えばリアとこんなに長く話したのは初めてだった。
すごく、いい子だし、ご飯を食べてる時もすごくいい顔してくれる。
何より、辛い目にあっても乗り越える強さがある。
俺の方が距離感決めあぐねてたのかもしれないな。逆に気を使わせちゃったのは申し訳ないが、こだまと同じくらい好き!?嬉し過ぎる…。
心がジーンとしますね。ここに来て心からよかったなと思っていたら、グルゥルゥルル…、めちゃくちゃ囲まれてました。
ライオンに。
え、ここ湖の上だったような…。
そのライオンは、ライオンと亀とワニをたしたような…魔改造されたみたいな生き物だった。
いや、すんごい立派な牙もあるから、トドあたりも入ってるかも。
とにかくいっぱい。
飛び起きて「あわわわ」ってエティが鋭い岩みたいなのを手から出して飛ばせば、こだまはあくびしながら波を起こしてライオンもどきを押し流す。地味にすごいんですけど。
リアと俺はひたすら矢を放つが、とにかく数が多すぎる。動きがとにかく早いライオンもどきは、矢に倒れた仲間を足場にして飛びかかってくる。
「あれ、これ不味くね…。」
なんて不吉なこと呟いたせいか、ついに一際大きいやつが大ジャンプで上から迫って来た。
そして…、そのタイミングで、ガバァァァ。
下から山みたいに巨大な何かが現れ、ライオンもどきもろとも飲み込まれてしまった。




