飯テロ②揚げオムレツのオムライス
マイナーメニューで揃えたかったけど、早くも定番。そんなもんです。
米が手に入った。
そしてこの店、卵だけは家で鶏を飼育しているから数を確保するのは難しくないとのこと。
こちらの鶏はかなり多産らしい。
卵があって、米があるならアレしかないではないか。
早くも定番だが【揚げオムレツのオムライス】!卵だけでも工夫しようバージョン。
実はオムライスは割と原価率のよいメニュー。卵、米以外はあんまり具材入ってないもんね。
ケチャップは簡単に作れるし、ケチャップ以外にもチーズとかデミとかソース変えればバリエーションも簡単に作れる。余裕が出てきたらハンバーグをトッピングするとか展開もしやすい。
何よりザ・庶民食なのがいい。
「え?庶民の食べ物だから庶民にしか売れませんよ?」って言ってやる!
付け合わせにスープは欲しいよね。そうなるとやっぱコンソメがいい。
そのためにロッテさん、ロッタちゃんにクズ野菜を集めてもらってきた。
店の余り物や、ご飯屋さんの捨てられそうになってるもの。ほぼタダで大量に集められたそうだ。
「まずは即席スープの素を作りたいと思います。これはロッタちゃんが担当するメニューだよ。」
「しょくせき?」
「そう。即席スープの素を作っておけば、後はお湯を入れるだけでスープができちゃうの。これならロッタちゃん一人でできるでしょ?」
「うん。できる!」
というわけでまずはコンソメ作り。
市販の粉コンソメなんて当然なかったので、粉コンソメを自作して、インスタントスープの素にしちゃおうと思っている。
この店ほぼワンオペだし、ロッタちゃんが担当できればロッテさんはメイン料理に集中できるからね。
後々調味料としても使えるし、しかも材料費はほぼただ!庶民の武器となる一品だ。
【自家製コンソメ粉】
材料
・人参
・玉ねぎ
・椎茸
・ローリエの葉
「ではロッタちゃん。まずは、人参、玉ねぎ、椎茸、ローリエを薄く切ります。」
「ぁい!」
どこで覚えたか知らないが綺麗なサーイエッサーポーズのロッタちゃん。
美しい角度です。
「次は乾燥しやすいように網などの上に並べる。」
「ぁい!」
サーイエッサーポーズしたまま、開いた方の手で素早くならべていきます。
ブレない美しさです。
「そしたら1~2日天日干しで、乾くまで待つ。」
「ぁい!」
「今日は時間がないので、天才こだまくんの出番です。」
「乾かす。」
「しゅごい!」
こだまの魔法であっという間に乾燥してしまった。
驚いてもサーイエッサーは崩れません。
「はい。このくらい乾燥させましょう。」
「しゅごい!」
「こだま天才。」
自分で天才って言ってますよ、この子。
「ごほん。では、玉ねぎは乾燥した後フライパンで乾煎りします。」
「どうして玉ねぎだけなの?」
「玉ねぎは煎ると甘味が強く、さらに香ばしくなるからこの一手間を加えるとより美味しくなるんだ。」
「ぁ!玉ねぎいっぱいジュウジュするとあまーいだから!」
おぉ。さすが食堂の子、知ってた。
「後は、乾燥させた食材に昆布、黒胡椒、塩を加えて粉になるまで擦り潰す。これは力がいるからお母さんに手伝ってもらった方がいいかもね。」
「ロッタできるもん!」
「そうか、頑張れ。さらさらになるまで潰すんだよ。」
「うん、頑張る!」
今日は時間がないのでこだまにさくっと粉にしてもらったけど。
はいはい、天才、天才。
「この粉ができてしまえばほぼ完成だよ。後はお客様に出す前にお湯を注ぐだけ。はい、ロッタちゃん味見してみてごらん。」
「わぁこれすっごく美味しいよ!」
「折角だから硬くなったパンをカリカリになるまで焼いて、細かく砕いて入れよう。」
「このカリカリも美味しい。スープに入れるとやわらかいのも、美味しい!」
「これも入れるだけだし、余ったパンをカリカリにするだけだから食材を余らせる心配もない。お店にとっても嬉しいメニューでしょ?」
「確かに、食材を再利用できるのは嬉しいわね。素晴らしいアイディアだわ。」
食品ロスは店にとっても痛い出費ですからね、ロッテさんも有用性に気づき感心しています。
コンソメは揚げたじゃがいもにまぶしてコンソメポテトとかにしても美味しいから、多めに作ってちゃっかり自分用も確保しておいた。
「さて、メインの【揚げオムレツのオムライス】作り。の前に、ケチャップ作りです。」
「ケチャプー?」
「ケチャップだよ。今から作るオムライスに必要なトマトを煮詰めた調味料です。ケチャップもしばらくは保存が利きますから、何日かに1回にまとめて作るのがおすすめですよ。あ、折角だから、このタイミングでご飯も炊いておきましょう。」
ご飯は洗って鍋に入れて米から中指の第一関節まで水入れて火にかけるだけ。
最初中火で、ぷくぷくと音がしてきたらそのまま2分。弱火にして3分。さらに弱火にして5~7分。
「ご飯は炒めた後煮込む方法しか知らなかったけど、こんな方法もあるのね。」
それはパエリアとかリゾットの作り方ですね。やはり洋食文化がベースとなってるからでしょうか。
「俺はこの方法が好きですが、炒めて煮込むのも美味しいと思うのでどっちの味が好みか後で試してみるのも良いかもしれませんね。」
「はい、やってみます。さっきのスープで煮込んでも美味しくなりそう。」
うん、コンソメパエリア。悪くないかも。個人的にはカレーピラフを入れたオムライスも好きだし、ライスの味付けでもバリエーションはたくさんできるかもしれない。
「では改めてケチャップを作ります。」
【自家製ケチャップ】
材料
・トマト
・にんにく
・砂糖
・塩
・レモン汁
・ローリエの葉
「まずは沸騰したお湯でトマトを軽く茹でます。皮がめくれてきたら取り出して冷たい水の中に入れて皮を剥きます。
「わぁ簡単に剥ける。」
「皮があると食感が悪くなるので、きれいにとりましょう。トマトは後で潰しちゃうから、潰れても気にしないで大丈夫ですよ。」
みんなでワイワイトマトの皮むきをしたら、結構大量にあったトマトがあっという間に丸裸に。
「皮を剥いたトマトを鍋に入れ、そこにすりつぶしたにんにく、砂糖、塩、レモン汁、ローリエの葉っぱを入れて潰しながら煮込んでいきます。」
「わードロドロ。」
「もっともっとドロドロに、そして滑らかになるまで煮詰めるんだよ。そしたらケチャップは完成。」
「煮込むだけでいいんですね。すごく簡単。」
煮込む間に米も炊けたようだ。
「いよいよメインです。」
【揚げオムレツのオムライス】
材料
・卵
・玉ねぎ
・鶏肉
・バター
・塩
・胡椒
・ケチャップ
・ご飯
「それじゃ、玉ねぎと鶏肉を細かく切ってください。」
「ロッタもやる!」
「よろしくね。細かく切ったらフライパンにバターを溶かし、食材を炒めていく。塩胡椒を軽く入れご飯を加えて炒める。
ご飯全体にバターが混ざったら先ほど作ったケチャップを入れて混ぜ合わせればケチャップライスの完成です。」
「まぁ、トマトの酸味がすごく美味しそう。」
「ちょっと味見してみますか?」
スプーンにケチャップライスを掬い、みんなに配っていく。
「すごく美味しい!」
「ふむ。これはどんどん食べたくなる味じゃな。」
「中に入れる野菜やお肉を変えたらいろんな味ができそう。」
「そうですね。ピーマンとか彩が良くなりますし、鶏肉の代わりにソーセージやハムなんかもいいかもしれませんね。」
「子供はとうもろこし入れると喜ぶかも。」
ロッテさんは本来なら料理上手なのだろう。
ちょっと食べただけでアイディアがどんどん浮かんでくる。
しかもどれも美味しそうだ。
「最後は卵です。卵をよくかき混ぜ、ちょっと多めに引いた油に入れていくのですが、この穴の開いたお玉を使います。フライパンの上でお玉を持ち、卵を注ぎ入れると…。」
「わーふわふわ!」
「そう、こうすることで、穴から時間差で卵が投入されていってあっという間にふわふわの揚げオムレツに。
さっさっとまとめて1つに固めたら、ケチャップライスの上にのせるだけ。さぁ、お待たせしました【揚げオムレツのオムライス】の完成です!試食しましょう!」
食材探しに慣れない調理にとお腹ぺこぺこになっていたみんなはすごく美味しそうにがっついていた。
そうでしょうそうでしょう、だって油は旨味。うまいのです。卵を揚げオムレツにするとカロリー気になるけど…ね。普通のオムライスも後で教えておこうかな。
「それじゃ、料理はできましたし、明日は試食会開きましょう。」
流石に1日で全ては終わりません。
料理がいくらうまくても、客が来なければ意味がない。次は宣伝活動です。
「試食会?」
「そうです。街の人に食べてもらって、オムライスを知ってもらわなきゃ、お客はきませんからね。
反応をみて味の調整もできるし、損はないと思います。」
「どうやるんですか?」
「そうですね。ちっちゃいオムライスをたくさん作って、店先で呼び込みましょう。タダで味見いかがですかー?って声かけて。」
「むむ。タダで食わせるんか?」
タダに反応して即アルマじじいが割り込んでくる。
「タダじゃないとみたこともない料理食べようって誰も思わないですからね。しかも庶民の人はお店でご飯を食べる習慣がない。味見してもらって、また食べたいって思って貰えないとお客さんになってくれないですから。」
「うむ。まぁ、確かにそうかもしれんが。」
「その代わり味見用は小さくして、もっと食べたいって人には、明日からこの店で食べられますよー、しかも安くて庶民のための食堂ですよーって宣伝していくんです。美味しいものが食べられるってわかればきっとお客さんは来てくれるはずです。」
「やってみましょうよ、お父さん。どうせ誰も来ない店だったんだし、ここは何でもやってみるべきだと思うの。」
「ロッタもがんばるー!」
娘、孫に押し切られて渋々了承するアルマじじい。
アルマじじいのぐぬぬ顔に笑いが起こり、なんだか団欒って感じ。
ふと視線を感じて振り向くと、リアがじっとこちらをみています。
視線を向けると、スッと顔を逸らしてしまったので気のせいかもしれませんが。
難しいお年頃でしょうか?
そんな訳で翌日は店頭試食会開催です。




