飯テロ②美食気取りにはお仕置きが必要です
人は見かけで判断してはいけませんが、キャラは見た目で決めている。これもアンコンシャスバイアスでしょうか。
こだまとリアが米を買ってくるのをウキウキ待っていたら、突然ガタイのいいゴリラ男に後ろから蹴り飛ばされた。
「え゛…????」
振り返ると昨日のレストランにいたあのゴリラ店員と常連っぽかったコアラ貴族が立っていた。
ゴリラはエプロンこそ外していたが質の良い調理着。コアラはでっぷりと太っていて、薄紫の生地に黄色い刺繍をあしらったドレスシャツに、同じく薄紫の足首がすぼんだカボチャパンツ。そしてこれみよがしに宝石類をじゃらつかせている。その後ろには護衛だろうか、執事スタイルのすらりと背の高いヒョウ男が控えている。
「庶民がうろちょろ目障りだ!…ん?しかもおめぇ人族じゃねぇか!?」
ピキィッ
「誰が糞人族だっテェ!?」
もはや反射でゴリラの腿、その後ろの貴族っぽいコアラ男の腿を狙ってボウガンを連射。コアラ男の方はヒョウ男に阻まれたがゴリラ男にはしっかり命中した。痛みにうずくまるゴリラの前にヒョウ男が出てきて甲高い声を上げる。
「確かにここを普通に歩けてるってことは人族ではないのかしら?ですが庶民風情がこの市場に足を踏み入れるとはなんたる愚行。しかーも、貴族様に矢を向けるだなんて、あの世で泣いて詫びなさい!」
若干おねぇ入った甲高い声でヒョウ男がサーベルを突きつけてきます。
「最初に手ぇ出してきたのはそっちだろう。その貴族様がどれだけ偉いかしらねぇが俺がどこで買い物しようと勝手だろうが。」
「この市場はご存知このパンティーヌ様の管轄ですわ。目障りな庶民の立ち入りは禁止しているのよん。」
「ご存知じゃねぇな。しかし大々的に庶民差別かよ。大層立派な貴族さまだこと。」
「妾はこの大都を美食の町に変えるno。だからみすぼらしいものしか食べてない庶民はいらないno。」
「あんたらが買わせてやらないから、みすぼらしいものしか食べれないだけじゃないのか?」
「ひゃははは。庶民はどうせ買えないno。なら、ここに来る資格なんていらないno。」
買わせない。来させない。まぁ単純に庶民が嫌いだから排除しようって感じかな。ウゼェ。
あんな不味そうなもん食って何が美食だ。まぁでもそのお陰で昆布や米が入ってきているのかもしれないが。
ちょっと複雑。
そう考えると、あの庶民食堂はそんな状況を打破しようと足掻く抵抗勢力なんだな。
うん、庶民食堂でうまいもん出して、貴族様にぐぬぬって言わせたくなってきた。
これは飯テロのお時間ですね?
そこにこだまとリアが戻ってきた。
「おぉ、美しい!妾にぴったりの女性なno!!其方、妾の嫁になるno!」
あ、また反射的にボウガン打ってた。ヒョウ男にまた阻まれたけど。チッ。
「お前、一度ならず二度までも…!許されないのよ!」
「いやーすまんすまん。うちの子達に何か失礼な事言われた気がしたから。」
敢えてこき下ろす言い方で返すと、顔を真っ赤に怒り出すコアラ男。
「NOぉぉぉ!!この美人がお前の仲間だというno!?そ、そうかお前奴隷なんだno?ひゃはははは。うん、そうに違いないno。のあっ??」
チッ。またヒョウ男に防がれた。
「楽奴隷じゃないよ?」
「そこの美人さん、あなたこの男とどんな関係かしら?あら、やだ、まさか夫婦ぅ?」
「なっ違うぞ!!!!私はこだまの側に居るだけだ。そしてこだまが楽の側に居る。だから一緒にいるだけだ。」
そんな全力で否定しなくても…。まぁ距離があるのは事実ですけど。
「なるほど、貴方が優しくも保護している庶民なのですわね。お見受けしたところとてもお強いお方のようね。美人さんもかなりお強そうですけどあなたは底が見えないわ…。」
「其方が一番強いのか!其方家に来るno!そしたら美人も家に来るno!」
「こだまは楽のご飯が食べたいんだよ?」
あなた山下清ですか?的な発言してますが、こだまはブレませんね。
「こだまもそう言ってるんで、もう良いっすか?」
相手するのが面倒くさくなってきてそそくさと後にする。ヒョウ男がサーベルを振り回して追ってきますが、こだまにサクッと風で吹き飛ばしてもらいました。あいつら構ってるだけ時間の無駄っぽいしね。何より米が手に入ったのだからそんな暇はない。
「NOぉぉ!庶民のご飯が美味しいはずないno!其方達は騙されてるno!」
変な声が聞こえてたけど気にしちゃダメです。