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香りの誘惑

深夜のメニュー投稿。

激辛が好きです。

ジュッ


パチパチパチパチッ


モワ〜ン


ザッザッ


洞穴の入り口から小気味良い音が鳴り響いた。


「大変なんだぞ!オラの口もジュワジュワしてるんだぞ!」

「おわっ!エティ、唾!唾!」


こだま達が狩ってきたバラクを早速みんなで調理しているのだが、唐揚げのうまさを経験済みのエティはヨダレを垂らしながら作業に勤しんでいた。間一髪のところで唾が油に入るのを防ぎ、エティを揚げ作業から、肉の下処理の穴あけ作業に配置する。そう、俺達が今絶賛調理中なのは国民のアイドル唐揚げちゃんだ。鶏じゃなくてバラクだけど。そしてこの唐揚げちゃんがメインを張る料理、そう、俺達が作るのは…


「【ラー油定食】を作るぞ!」

「ハンバーグは?」

「おら、肉ならなんでもいいぞ!」

「甘い?」

「私辛いのは苦手で…」


悪魔族の好物メニューを考案し大発表したのだが、うちの子達のリアクションは微妙だった。

しかし、なんとかなだめ【ラー油定食】を作ることになった。ハンバーグを添えて。

まずはメインの唐揚げ。ポイントは辛くて癖になる粉、別名毛沢東スパイスだ。


【ラー油定食・唐揚げ】


材料

・バラク

・すりおろしにんにく

・すりおろし生姜

・塩

・胡椒

・醤油

・マヨネーズ

・片栗粉

・小麦粉

・ラー油

・ごま油

・毛沢東スパイス

 干し海老

 フライドオニオン

 フライドガーリック

 ごま

 唐辛子

 砂糖

 塩

 鶏がらスープ

 花椒


まずは良くある唐揚げの作り方でバラクを揚げていく。

バラクにしっかりフォークで穴を開けて味を染み込みやすくしたら、すりおろしにんにく、すりおろし生姜、塩胡椒、醤油、マヨネーズを揉み込み寝かせる。2・30分寝かせた所で片栗粉小麦粉を混ぜた衣を纏わせ、揚げていく。ここでポイントとなるのが揚げ油だ。今回はラー油定食なのでごま油とラー油をブレンドして低温からじっくり揚げていくのだ。ごま油でも割高、ましてやラー油なんて高価すぎて揚げ油に使うのは…となるのだがここは異世界、物価を気にせず贅沢に使ってやろうじゃないか!まぁ、でもちょっとひよってごま油とブレンドだけど。染み付いてます、貧乏感覚。ほら、ラー油を作った時の漉し切れなかった材料が焦げて苦味になるといけないしね…。

ちなみにラー油は油にネギの青い部分、生姜を入れて加熱し香りを移したら唐辛子に油を注ぐ。高温の油で唐辛子揚げ焼きしながら油に辛味を移せばラー油の完成だ。プロは細かいケアしながら作るようだがこちらにはこだま様がいるので素人でも失敗しないラー油作りができる。よい世界だ。


「香りすごい。」

「そうだろ、こだま。ごま油もラー油も食欲を駆り立てるいい香りだから、この唐揚げ最高に食欲そそるだろ?」

「早く食べたいんだぞ!」

「待て待て、エティ。まだ完成じゃないぞ!」


ここで、最後の仕上げ。ごま油とラー油、この食欲を強烈に刺激する肉に合わせるのが巨大王国の父を冠する、毛沢東スパイスだ。中国湖南地方のスパイスから生まれ、毛沢東の好物だったことから名前がつけられたとの噂もあるのだが、名前負けせず癖になる逸品だ。

干し海老、フライドオニオン、フライドガーリック、ごま、唐辛子、砂糖、塩をすり鉢でざっくり砕き、鶏がらスープを加えて水分が飛ぶまで炒っていく。最後の細かくすりつぶした花椒を混ぜれば完成。この毛沢東スパイスを揚げたての唐揚げに絡めれば【ラー油定食・唐揚げ】の出来上がりだ!揚げたての油にいい感じにスパイスが絡まり、しかもスパイスにも少し火が入るので香りが更に強くなる。


「やっとできたんだぞ!今すぐ食べるんだぞ!」

「チッチッチ、まだまだだエティ。今回作ってるのは定食。もう少しお腹空かせて待っとけ!」

「むぅー…なんだぞ!」

「お腹すいた方が美味しく食べれるんだ、我慢我慢。」

「ハンバーグ…。」

「まってろこだま。次作るやつはハンバーグのソースにもぴったりなやつだ!」


【ラー油定食・チャーハン】


材料

食べるラー油

・バラクの挽肉

・長ネギ

・にんにく

・生姜

・干し海老

・唐辛子

・ごま

・松の実

・砂糖

・しょうゆ

・鶏がらスープ

・味噌

チャーハン

・ご飯

・卵


定食のご飯は食べるラー油で作るチャーハンだ。食べるラー油は粗ラー油作りと同じ。しかし今回はチャーハン使用で挽肉も入れてメインディッシュのような食べ応えラー油に。

バラクを挽肉にし、低音のごま油で揚げ焼きしていく。次いで粗微塵切りしたネギ、ニンニク、生姜、干し海老、唐辛子、ごま、松の実を入れて炒める。焦がさずカリカリが目標だ。香ばしく色づいてきたら火を止め、味噌、砂糖、醤油、フリーズドライさせておいた鶏がらスープの素を混ぜ、荒熱を取れば食べるラー油の完成だ。本当は味噌よりコチュジャンの方が本格的でうまいのだが、ない場合は味噌、砂糖、醤油で代用でOK。そして用途に合わせてお好みで具材の大きさを調整するのがおすすめだ。今回は食べ応え、歯応え重視で大分粗めに仕上げた。この食べるラー油さえできてしまえば、そのままおかずに、パンに、ピザに、餃子や唐揚げ、もちろんハンバーグに、何にでも合うので常備しておきたい。


「よし、チャーハンはこれでほぼできたも同然♪」


俺はフライパンに溶き卵、ご飯を投入していきなるべく細かくパラパラになる様に炒めていく。卵とご飯、全体に油が馴染んだら、食べるラー油をたっぷり投入。


「あとは、定食だし汁物か。」

「「「えぇー…。」」」

「安心しろスープは一瞬だ。」


ヨダレだらだらのみんなを横目にラストスープだ。


【ラー油定食・スープ】


材料

・鶏がらスープ

・レタス

・酢

・塩

・胡椒

・ラー油


鍋に水と鶏がらスープを入れて、塩、胡椒で味を整える。煮たったら火を止め、ちぎったレタスと酢を入れよく混ぜたら器に装ってラー油を2回し。


「以上!【ラー油定食】お上がりよ!」


俺は、どっかの料理漫画のテンションで、【ラー油定食】をお盆に乗せていき、こだま、エティ、クル、リア、悪魔4人組に出していく。


「「「おーーーー!!!」」」


誰もあの料理漫画を知らないからリアクションはないけど。いや、


「おはだけ。」

「…はしたないわ。」


一部俺の部屋で読んでいた模様だ。俺は急いで追加のハンバーグを作りつつ、食べたいと言ってくれた他の悪魔族の分をどんどん作っては配っていく。


「「「「「・・・・・・・・」」」」」


「辛ーーー!!!うめーーーー!!!辛ーーーー!!!」

「すごい、このバラクの唐揚げ、噛むとサクっとするのに、中はジュワッと肉汁が溢れ出てくる!」

「見て、手で裂けるぐらい柔らかい!」

「この肉汁、辛くて食欲注ぐ香りがするのに口いっぱいにうまいが広がる!」


肉を揚げている時も、ラー油を作っている時も、食欲を刺激しつつける香りを出し続けていた。だからか皆初めてみる食べ物にも関わらず、出した瞬間かぶりついていった。そして、その爆発的な辛さとうまさに、皆一様に言葉を失い、そして一気に騒がしくなる。味は、無事悪魔族にクリーンヒットしたようだ。おはだけはなかたけど。


「うまうまうまうまうま。」


こだまはすごい勢いでチャーハンとスープを掻き込んでいる。ハンバーグをおかずに。あれ?


「不思議だぞ!辛すぎるのに食べるのがやめられないんだぞ!」

「でも私には辛すぎるかも…。」


涙を流しながら食べ続けるエティとためらうリア。


「お好みでお酢とマヨネーズ使うといいぞ。どっちも辛さを和らげる調味料だ。」

「おぉ、流石マヨネーズなんだぞ!お腹いっぱいになってきたけど、まだまだ食べるんだぞ!!」

「ラー油は少し油っぽいけど、お酢をかけると食べやすいわ。うん、おいしい。」


エティとリアは辛いのがそんなに得意ではないらしい。でも追加した辛さを中和する調味料でなんとか食べられたようだ。一応辛くないのも作っておこうかな。それと辛さを中和するにはやっぱラッシーとかかな。


「これにのせるとおいしいよ?」


するとクルがリアとエティにお皿を差し出してきた。お皿には白い、豆腐のようなものに食べるラー油がかけられていた。そしてその上には白いソース。


「これは?」

「ピーナッツのお豆腐!甘いのもかけたの!」


クルはピーナッツの豆腐、ジーマーミー豆腐に食べるラー油をかけていた。更にその上にかかっていたのは練乳。前に作ってあげた豆腐をもってきたようだ。


「おぉ!クルは天才なんだぞ!!」

「本当、甘くて辛くて…ちょっと癖になるわね。」


いつの間にかメニューを考案する様になったクル。そしてその発想…、


「うん、クルは天才だ!」


親バカ気分を再び味わっていた。


「あの、その食べ物、私にも頂戴。」


後ろからの声に振り返ると、ご飯を断ってきた3人の悪魔がヨダレを垂らしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新分読み終わった‥ 続きが気になるけどもう更新しない感じですかね?
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