はぐれ悪魔
人は見かけで判断しちゃダメです。
わかっちゃいるけど…後からいいやつだと気づくのは得した気分になりませんか?
「ワンダ!」
「テニン!」
「トリエッタ!」
「ァ…アーバッハ!」
4人に名前を聞くと突然背筋を伸ばし点呼のリズムで名前を教えてくれた。流れるような自己紹介から察するに何時も一緒の仲良し4人組なのかな?
「皆はじめまして、俺は楽。他にもメンバーがいるんだけど今は出かけちゃってて。後で紹介するね。」
「あっちの方でバクラ追いかけてる人達ですね?」
「いろんな姿…全員違う種族なんですか?」
「変な集団。ま、僕たちには叶わないけどな!」
「じ…じまんよくないよ?」
ちなみに話を逸らしたおかげで涙の方は止まったようだ。話ながらさりげなくティッシュを4人に手渡していくと、グショグショになった顔を一生懸命拭きながら答えてくれる。仕草まで子供っぽい。
「それで君達はどうしてこんなところに?外は魔物だらけだから子供だけで出歩くのは危ないよ?」
「僕たち子供じゃないよ?」
「うんうん、子供じゃない。」
「今はチビモードだけど…人間の歳で言うと21歳くらいだぞ。」
「わ…私は19。」
「え、そうなの?まぁ41の俺からしたら十分子供だけどな…。チビモードって何?」
「チビモードはちっちゃくなってる状態。疲れにくくて便利なんです。」
見ればわかると、4人のリーダー?ワンダ君が代表で元の姿に戻ってみてくれた。ワンダ君が体に力を入れると、黒っぽい煙が漏れ出し、筋肉、爪、髪、そして骨の順に急成長を始め、最終的には2m近いマッチョな悪魔へと返信を遂げた。その姿は誰がなんと言おうと悪魔だ。
「へーすごいな、それ。あ、ちょっとこれ持ってみて。」
「ん?」
「そんで笑いながら『やっぱり人間って… 面白!!…』っていって見て。」
「?ククク…やっぱり人間って… 面白!!…」
「おぉリアルゥ。」
「お、お兄さん私もその赤い果物欲しいな…。」
「僕も、僕も!」
「め…めいわくよくない…。」
俺がリンゴみたいな果物を持ってきて某人間観察が趣味の悪魔の物真似させて楽しんでいたら、他の3人も果物を欲しがってきたので平等に配っていく。するとワンダ君も黒い煙と共にシュルシュルシュルっと元の子供の姿に戻り、美味しそうにリンゴにかぶりつく。元の姿に戻るのは疲れるのか、少し息を切らしている。本当に省エネモードなのだろう。
「チビモードって、いわゆる省エネモードって感じなのかな?なかなか便利な能力持っているね。」
「これも美味しい!久しぶりの食べ物すごい嬉しい!」
「チビモードだと食べなくても死なないんです。」
「でも力もでなくなるからちょっとこまるの。」
「ぉ、ぉいしい、久しぶり。」
「へぇ、チビモードってご飯食べなくても死ななくなるんだ。でもそれじゃ、魔族ってすごいいっぱいいるの?長生きみたいだし。」
「そんなに多くないかな?僕達の種族ってあんまり子供が生まれないんだ…。」
「なるほど。まぁ世の摂理だな。生存本能が高い生物は種が作りづらいもんだしな。それで、さっきは久しぶりに食べたから泣いてたの?」
おしゃべりですっかり元気を取り戻し、更に果物で上機嫌になったのを見計らってさっきの涙の理由を聞いて見る事に。
「うん。僕達別に食べたくないわけじゃないの。でもチビモードだと上手に狩ができないからずっと食べてなくて。」
「チビモードは食べなくても死なないけどものすごく弱いから。」
「食べれなくなったら狩れなくなって…。」
「か、狩れなくなったら帰れなくなったの。」
シュンとしながら説明してくれた話によると、4人は他の仲間達と狩に出たのだが森の奥に踏み入れすぎてしまったタイミングで集団食中毒を起こしてしまいやむなく洞窟へ逃げ込み、チビモードで回復まで待つことにしたのだと。しかし思いの外食中毒の症状が長引いてしまい、狩をするパワーを取り戻せず立ち往生してしまったのだと。狩ってパワーを得ないと国に帰れないのに、狩るパワーがない。堂々巡りをしたまま時間ばかりがたってしまったとのこと。
「それは災難だったね。ちなみにどのくらい国に帰ってないの?」
「どのくらいだろ?いっぱい?」
「2年くらいじゃない?」
「そのくらいかな?」
「ん、17312日。」
「ぉお!流石アーバッハ、ちゃんと数えてたんだ!」
「ん。」
褒められて親指を立てるアーバッハにワンダ、テニン、トリエッタは代わる代わる頭を撫でていく。本当に仲が良いな。
「17312日って…47年以上?え、君達は、47年も迷子してるの??国の人は誰も探しにきてくれないの??あれ、47年って君たち二十歳そこそこじゃなかったっけ?」
「この位の時間じゃ、誰も気付いてないんじゃないかな?」
「47年大した時間じゃない。悪魔族成長遅いから。」
「人間の年で言うと21歳だけど、…実際はもっと長いんです。」
「わ、私は346971日…。」
「うん、たくさんってことだね!君達にとって47年は1・2年の感覚なのかもね。でも1・2年帰ってこなかったら流石に気づかない?」
「悪魔族はのんびりな種族だから。」
「それに国の人もチビモードの人がすごく多いんで、気づいても探しに来ないかもです。」
魔族はめんどくさがりという噂は聞いていたが、なんと国にいてもチビモードで何もしないで過ごす人が多いらしい。どうせ死なないんだし、無理して頑張る必要はないっていう考える人が年々増えていっているらしい。究極のミニマリスト?いや、異世界版ゆとり世代?
「どの世界にも起こる現象なんだなぁ…ゆとりって。でも君達はわざわざ洞窟から出てきて俺のところまで来たんだよね?」
「救援信号が見えたから。」
「魔族はあの、森の草むらの中を彷徨ってる草から取れる粉を使って会話できるんです。」
「赤は止まれ、青は進めとか。すごい昔戦争をしていた頃からの伝統的な会話方法なんです。」
「いろんな色をいっぺんに出すの、助けてって意味。」
「なるほど。あの粉をのろしみたいに使ってるんだ。それでいろんな色が見えて、仲間のピンチと思ってきてみたら俺が居たってことか。紛らわしいことしてごめんな。でも、チビモードは危険なのに助けに来るって仲間思いなんだな、悪魔族。」
「はい。私達、仲間増えづらいから、大切にしなさいって小さい頃から教えられるんです。」
トラムンターナを目指すにあたり、悪魔族とはいったいどれだけ悪魔なのかと警戒してはいたのだが、出会った悪魔族は礼儀正しく仲間思いの子供(見た目だけだが)だった。まぁ本当に悪い奴ほど礼儀正しいとも考えられるのだが、なんとなく俺はこの4人がほっとけなくなってきていた。
「そっか。危険がいっぱいの外を帰らせるわけにはいかないし、帰り送ってあげるよ。それに、なんだか他の人達にも会ってみたくなったしな。」
「いいんですか!?」
「ありがとうございます!実は来る時も決死の思いだったんです…。」
「あの…この甘いの、仲間に上げていいですか?」
「ぁ…ぁたしからもお願いします。」
「構わないよ。足りなかったらもう少し作れると思うし、じゃ善は急げで出発するか!」
「ぁ、ぁの…お仲間さんは?」
「あいつらはどこに移動しても帰ってこれるから大丈夫。多分。」
確証は無いが確実であろう事実を告げ、俺は笑いながら進路を変える。ワンダ達の案内の元、舵は東に少し外れた北北東へ。目的地である洞窟は割とすぐに見つかった。地割れのような大地が裂けた部分があり、見下ろすと少し下の部分にぽっかり穴が開いていたのだ。
「あそこが洞窟?」
「そうです。僕達あそこを拠点にしてるんです。」
「洞窟までは飛んできたの?」
「はい。入り口はあそこしか無いんです。でもそのおかげで魔物に見つかることもなく安全なんですよ。」
「そうか、ならこのまま飛んでいくか。」
「あ、じゃ僕先行して行きますね。皆にびっくりしないでって伝えてきます!」
そう言うとワンダ君は靴を片手に入り口から飛んでいった。俺達はワンダ君の後に遅れて続く。そうして洞窟の入り口に降り立つと10人位の子供達がワンダ君に連れられて出迎えてくれた。皆初めて見るホバーボードハウスにも人族そっくりの俺にも怯えることなく、気さくに声をかけてくれる。悪魔族って単なる種族の1つなんだなと出迎えてくれた皆をみて実感した。こうして俺ははぐれ悪魔族の面々と出会ったのだ。




