プロローグ
新聞部2年の新納護熙の機嫌が芳しくないのは、今週一週間、同じ新聞部に所属する親友沖下登が
何か自分に隠し事をしているような気がしてならなかったからである。
「なあ、新納。いい加減機嫌直してくれよぉ。」
「嫌だね。お前は何か俺に隠し事をしてる。」
「隠し事?」
新納がまるで恋人のように沖下に執着するもんだから、沖下以外に友達がいなんじゃないかとまで
言われているが、全くもってその通りである。
世間でいう「変わり者」の部類に入る性格の新納であったから、学校内では避けられるまではいかないものの、積極的に関りをもとうなんて人は殆どいなかった。そんな新納に歩み寄り、そして馬が合った沖下も
相当な変わり者なのだろう。クラスの中で二人でいる時間が長くなるのも当然である。
そして、沖下の「隠し事」とやらに気づけたのも変わり者新納にしかできないことであった。
「そうだ。隠し事だ。ここ一週間ずーっと何か考え事してただろ。さあさあ、さっさと吐くんだ沖下君‼」
「フフッ」
沖下はニヤりとしながら新納の口調を鼻で笑った。
「何笑ってるんだよ!早く吐きなさい‼」
「いやな。ちょっと面白そうで面白くない話があってな。」
沖下の顔が少し険しくなったのを新納はしっかり検知し、いつもの落ち着いたモードに入った。
「なんだ。言ってみろ。」
「去年の生徒会改選のことを覚えてるか。」
「ああ。まさか大湊さんが通るとはね。俺は今も信じられないよ。」
「俺もだ。そのことが気になってしばらく選挙について調べてたんだよ。」
「なんだよ~。なら俺も誘ってくれたらよかったのに。で、どうだったんだよ。」
「はっきりわかったよ。」
「ああもう!何がわかったんだよ‼」
「不正選挙だ。」
「へ?」
「この学校では不正選挙が行われている‼」