第一六話 バンドメンバー
バンドメンバー
四月十七日、月曜日となった。
まだ、高校が始まって二週間しか経っていないのに、毎日がイベントばかりで、気疲れをしてしまう……。
朝からの授業を無難に終わらし、美鈴との昼食に向かう。
「昨日は、お邪魔した」
「こちらこそ、ありがとうございました。お祖父さまは、この先を物作りや商いの感覚だけでは、乗り切れないと考えていたようです。我が家と桐山家との縁は、未来に良い実りをきっと結ぶことでしょう」
美鈴モードが、珍しくちゃんと出てきた!
二〇〇〇年代以降を考えると、芸術というよりも、デザインという物への興味は強くなっていったな。
服飾や建物のデザインだけではなく、空間や広域のデザインを意識し、人の生き方もデザインとして捉える考えすらあったな。
音楽は、そういう意味では、デザインの一種でもあるので、お祖父さまがいっていることは、的外れどころか、一〇年以上先を見据えた考えとなるわけだ。
さすがだな、東大路洋一郎、あの人が生きている間に、いろいろな話を聞きたい物だな。
「スー、こちらこそ、ありがとうな。スーがいろいろと話を聞かせてくれたおかげで、あの場を乗り切ることができた」
「あっくんは、すごいのです。お祖父さまは、あっくんのことが、お気に入りになりました。また遊びに来てほしいそうです」
「また行こうな」
「それと、お父様から、帰りにあっくん宛てに渡されたお手紙です。もう中は見ていますが、大した内容じゃないので、気にしないでください」
おいおい、お父様から俺への手紙、先に読んでいるのかよ!
そもそも昨日に渡される予定だったのだろう。スーが検閲をしたおかげで、今日にもらうことになったんだろうな。
「じゃあ、受け取る」
手紙を渡され、内容を読むと、理解できる範囲で、男女交際の在り方が書かれてあった。
まあ、父親なら、心配するよな。
美鈴は、確かに魅力的な御令嬢様だが、魅力的だからこそ、そのあたりは、慎重にするつもりなので、康仁さん、安心してくれ。
昼食は、先週よりも一段グレードアップしているようだ。
あまり見ない食材や、あー、これ確か高いやつ、ってのが前よりも増えていた。
「……、御馳走様」
「はい、スーもごちそうさまなのです」
「それで、スーは、我が家にいつ来る?」「いつでもと言いたいところですが、桐山のお母さまの予定もあるのでしょうし、お父様が返ってくるときに合わせた方がよろしいのでは?」
「父親は、事後報告でも良いと思うが、母親には、事前の相談が必要か」
「いえ、お父様へは、あっくんに婿入りをしてもらうことを納得してもらう必要があるのです」
「ああ、それか。父親には、弟がいるし、桐山の血脈が途絶えるわけじゃないし、名家やらでもないから、あまり気にしなくて良いと思うが、相談は事前にした方が良いんだろうな」
「美月さんのことも、問題です。大好きなお兄さんが、お婿に行ってしまうなんて、辛いと思うのです!」
「すぐに行くわけじゃないし、大丈夫だろう」
「それは、甘いのです。十文字屋の落雁よりも甘いのです!」
十文字屋の落雁は、甘さ控えめだぞ……。
「まあ、言いたいことは、わかった。ちゃんと事前の根回しを終わらせてから、改めて日にちを決めような」
「それでお願いします」
それから、美月が俺の事をどれだけ愛しているかの予想を聞かされたが、嫌われているとは思わないが、その通りかといえば、疑問が残る内容だった。
授業が終わり、大江と矢沢に、今日は軽音楽部の集まりがあるから、俺も二村先輩もフォークソング部には、いけないことを告げ、教室を出る。
軽音楽部の練習室となっている第二音楽室に入ると、すでに、何人かが先に来ていた。
一週間ぶりだが、部活見学初日に入部した一年生が数人おり、その中の一人に声を掛けてみる。
彼は、確かベースの生徒で、それなりの腕を持っていた覚えがある。
「ここいいか?」
「お、キリくんじゃないか。特に指定もないようだから、座ってくれ。俺は、梶原という」
気になることを言われたが、とりあえず着席する。
「今のキリくんってのは何だ?」
「えっとな。他の一年生たちで、呼び名をつけようってことになって、桐山は、キリくんってことになった」
ロックバンドを組むような者は、基本的に社交的な者が多い印象がある。
全く逆で、気難しい性格をしているのじゃないかと思う者もいるかもしれないが、バンドメンバーとの意思疎通をしっかりしなければならないし、ライブをすることになれば、人の手を借りなければならない。
そんな環境で、音楽を楽しんでいくのだから、ほぼ強制的に社交的な性格にならなければ、バンドなんて続けていけない。
とは言っても、確かに気難しい者もいるのは事実で、そういう者は、家でひっそりギターやらを楽しみ、表には、ほとんど出てこない。
と、言う前提で、こいつらを野放しにすると、こんなことになるという良い例だな……。
「キリくんは、俺が押したんだ。どうよ?」
「おかしな呼び名よりは、はるかにましだ。そのままキリくんで頼む」
「押したかいがあったぜ。キリくんよろしくな」
「ああ、カジくん、よろしくな」
「お、カジくんか。良いなそれ、気に入った。クラスメイトにも普及しよう」
と言う具合で、案外簡単に話が付くのも社交的な証拠だ。というか、呼び名は、どうしてもいるのだろうか……。
「じゃあ、キリくんがドラムで、俺がベースで、とりあえず、組んでいくってことでどうよ?」
「まあ、俺が部活見学初日に見たベースの中で、カジくんのベースは、良い感じだったから、先輩たちが振り分けたとしても、俺とカジくんは、組むことになると思う」
「そうか、キリくんにそう言ってもらえたなら、少しは自信になる。バンドは、先輩たちが、振り分けるか、俺たち全員で話し合って決めていくかのどっちかだよな。どうなると思う?」
「俺の予想だと、先輩たちが振り分けていく気がする。滝口先輩のバンドしか、まともに聞いていないけど、あのバンド、中々のレベルだぞ。ああいうバンドを組むには、ある程度の強制力がないと難しいんじゃないかな」
「仲良しバンドなら、学外で組めば良いんだよな。部活は、ある程度強制的に振り分ける、十分ありえるな」
それから、梶原から、俺がフォークソング部に行っている間の軽音楽部の様子を聞くことができた。
梶原は、律儀と言うか、毎日、見学に来ていて、一年生の入部希望者たちにどんな者がいるのかを観察していたそうだ。
その話をまとめると、ドラマー三人、ベース四人、ギター多数、ヴォーカル〇人となっているらしい。
この時点でヴォーカルを除いて三バンド組めるのは、良いと思っても間違いないだろう。
さらに、先輩たちが言うには、一年生で五バンドか六バンド組んでもらうのが理想で、途中で部員が抜けたとしても、三年生や他のバンドのメンバーがサポートに入り、実質二年間の部活の期間を過ごすことになるそうだ。
システムは、さすがに、しっかりしているな。三年が早く引退するのは、サポート要員として、入る可能性もあったからだったのか。
ヴォーカルが〇人なのは、予想通りなんだよな。
この時代は、カラオケが高校生の間にも流行りはじめる時代で、歌うだけならカラオケに行けばよい。
そして、カラオケに慣れた者が、バンドや生音で一人で歌おうとすると、恐ろしいほどに音を外すことが多い。
これは、カラオケの音楽がプロがしっかりと調整して録音した物に対して、高校生のバンドは、リズムも腕もバラバラで、はっきり言ってしまえば、高校生バンドの音はカラオケと比べて、ひどいの一言になる。
さらに、バンドの音響の都合上、カラオケのように、綺麗にまとまってスピーカーから音が出るわけではない。
極端だが、ドラムの音しか聞こえない状態で、しかも、自分の歌声までかき消されているような状態で、歌わなければならない場合もある。
そして、歌うのも高校生なのだから、それを乗り越えて歌いきるというのがどれだけ困難な事か……。
高校生バンドのボーカリストが、どれほど大変か、考えると、本当につらくなるな。
とまあ、こんな高校生バンドのヴォーカリストなのだが、どういう者なら、担当できるかと言う話になると、自ら弾き語りをしたり、楽器を触ってきた経験がある者なら、ある程度、このひどい状況にも順応できるので、うちの軽音楽部に、多数のギターが残っているのは、ヴォーカリストを確保するためなのだとすぐにわかる。
とはいえ、例外はどこにでもいるので、いきなりやって来て、あっさり歌う者もいるのは、当然なのは、言うまでもない。
また、ある程度のトレーニングをしていれば、この話とは別と考えてよいことになるし、無意識のうちに、トレーニングのやり易い環境に身を置いていたりする場合もあるので、それもまた例外と言える。
「……、ヴォーカルの方は、全然ダメか?」
「うーん、そうでもない。多分フォークソング部との掛け持ちだろうけど、弾き語りをしていた生徒もいたから、彼らが担当するんじゃないか」
「それなら、何とかなるか。ヴォーカリストは、バンドの顔だからそこそこ顔立ちの良い者が担当してくれると、うれしいんだよな」
「顔か。うーん、そういえば、女子で弾き語りしていたのがいたぞ。そこそこ顔立ちは良かった」
「女子は、ガールズバンドに担当してもらった方が、いろいろ面倒ごとが減ってありがたいかな」
「女子の取り合いをするってのは、確かにばからしいからな」
「ギターで目を付けたのはいたか?」
「そうだな……。滝口先輩のバンドのギターほどじゃないけど、それなりなのはいたが、皆、初日のメンバーだな」
「何となくそんな気はしていた。初日組が、やっぱり全体のレベルで頭一つ抜けている感じか?」
「はっきり言って、キリくん以外は、そんな感じだな。キリくんは、頭どころか、いろいろブチ抜いている」
「まあ、何年かに一人、俺みたいなのが入ってくるのが、こういう部活って物らしいから、気にするな」
「それもそうだよな。キリくんみたいのと一緒の部活でやれるだけでも、運が良いと思っておく」
一年生がほぼ集まったようで、二年生と三年生も、それなりに集まっているようだ。
もちろん、部長の滝口先輩と、おそらく次期部長の二村先輩もいる。
「はい、軽音部の部員以外の見学者、入部希望者の皆さんは、後ろへ行ってね。部員どもは、前にこいやー!」
今日の滝口先輩は、前回よりも元気が良いようだ。
部員が予定通りに確保できているからだろうか。
「今日は、部会になります。基本的に、軽音部を含めた部活動は、月曜日に部会をするので、忘れないでね。例外は生徒会議会が水曜日ってことくらいかな。生徒会は、部長、副部長がのどちらかが行くから、君たちも一応、覚えておいてね」
先週の月曜日は、例外としてそういうことになっていたのか。生徒会議会が水曜日という情報は、何気にありがたい。生徒会に入った後のことを考えていたから、日程がずれるのが確定して、一安心だな。
「それと、フォークソング部との掛け持ちの者は、あちらからの要請もあって軽音部優先ってのが原則になってます。どうしても、あちらを優先したいって者は、要相談って感じかな。まあ、あっちに、友達やらがいれば、何も問題ないから、あまり深くは考えないように」
おお、このことも知りたかったんだ。
こっちを基本的には優先か。軽音部の方が、敷居が高いから、そういうことになっているのかもしれないな。
それに、フォークソング部に教えに行っている軽音部のメンバーの顔を立てると、こうなるのもわかる気がする。
「さて、部会の内容だけど、一年生が、ある程度集まってきたから、ひとまずの顔合わせが第一だね。まだ、部活見学は四月の終わりまで続くけど、交流はしておいて損はない。それとバンドの決め方は、原則オーデションの時の様子で、三年生と二年生で決めていく。もし不都合があれば、その時に、話し合おう。もちろん、相性ってのがあるから、メンバーチェンジは、問題ないからね」
先輩たちが決めた方が、多分、皆が納得しやすいから、これで良いだろう。滝口先輩の言う通り、相性は、確かにあるから、何かあれば、その時に考えるしかないよな。
「後は、ヴォーカルは、ギターから選ぶことになると思う。絶対に弾くなっていうわけじゃないから、パート変更したい者がいれば、名乗り出てね」
先に募集を掛けておけば、やる気のある者は、名乗りだしやすくなるよな。
良い感じだと思う。
「それと、四月の部活見学中に、これ以上のメンバーが集まるとは思えないバンド構成が一つあるから、そのバンドだけは、先に発表しておく。ヴォーカルだけは、また後日だけど、まずは、四人で交流をすると良いよ。んじゃ、名前を言って行くよ……」
俺こと桐山、梶原、楠本、白樺の四人が呼ばれた。、
「……、んじゃ、さっそく無茶ぶりするぜ。お前ら、何かやれ。ヴォーカルがほしかったら、うちのと相談な」
お、おう……。
「こういう無茶ぶりは、時間を掛けちゃダメなやつだ。とりあえず、俺が桐山な。他の三人集合!」
「おお、わかっているねー。さすが、桐山ちゃん」
滝口先輩、楽しんでやがる……。
梶原は、解っているとして、楠本と白樺は、やはり初日のメンバーだった。
「とりあえず思いつくままに言う。スリーコードでなにかやる。皆、初日のメンバーのようだから、『アナーキー』ならできるか、後は他の意見求む、どうする?」
「スリーコードか『アナーキー』のどちらかで!」
「おれも、同じく!」
「僕もその二つのどちらかで!」
「じゃあ、スリーコードなら、無難にCのやつかな。『アナーキー」なら、一週間前に皆がきいているから普通にやるか、少し工夫をして、速度を上げてやる。どれがいい?」
「うーん、キリくんが、ドラムなんだよな。とちっても隠してくれよ。それを期待して速度上げで!」
「どうせだから、俺も面白い方が良い。速度上げでよろしく!」
「もう、僕もそうするよ。皆、ノリがいいね」
滝口先輩のボーカリストと相談をして、入りに、俺が速度を決めて叩きはじめる。
その音をある程度流してから、ドラムだけで、イントロの連打に入って、あとは、タイミングを合わせて載って来る、というので決まった。
滝口先輩のバンドメンバーの楽器を使ってやるので、皆、恐縮気味だが、知ったことじゃない!
恨むなら、滝口先輩を恨め!!
そうして、さすがに倍速は厳しいだろうから、四分の一だけ上げて、叩き始めた。
皆、さすがと言うべきか、練習をしてきたかのように、上手く入り、速度についてくる。
この曲は、本当に短いんだよな。
あっという間に終わってしまった。
「おう、ハイスピードヴァージョンの『アナーキー』か、やるなー」
「先輩たちの選んだメンバー構成が、良いんですよ。楽しかったです」
皆もそれぞれに、楽しかったと言っていて、俺もうれしくなる。
「はい、ってわけで、このバンドメンバーよりも自分の方が上手いと思うやつは、名乗りでろ!」
誰も、何も言わずに、しばらく滝口先輩が様子を見てから、再び話し始める。
「このメンバーたちを超えるつもりで二年やってほしいが、こいつらも二年やる。最低でも三年分くらいは、頑張らないといけないかもしれないな」
闘志を燃やすような雰囲気の者と意気消沈したような雰囲気の者に分かれてしまったが、これはこれで、良いのだろう。
「じゃあ、部会は、以上になる。来週の月曜日、また会おう!」
自己紹介もしないまま、演奏に入ってしまったので、食堂に行って、改めて話をすることを、メンバーたちに伝えていると、滝口先輩に呼び止められた。
「桐山ちゃん、五月のイベントの話、聞いている?」
「えっと、何でしたっけ?」
「近くの私立高校の軽音部が合同で、ライブするの。その時に、ちょっとお手伝いお願いしたいなーって」
「はい、できることなら、やりますよ」
「ありがとう。『ティアー』を前にやったよね。あれともう一曲、ピアノでひいてほしいんだ」
「はい。『ティアー』は大丈夫です。もう一曲は?」
「今のところ、クロスの『セイ エニシング』って話になって来てる。どうかな?」
「あの曲なら、大丈夫です。アレンジしたほうがよいでしょうから、打ち合わせは必要ですよね?」
「ピアノのアレンジは、桐山ちゃんにしか、できないから、お任せするよ。だから、一度会わせるだけで、良いよ。来週の月曜日に、音合わせと打ち合わせで、どうかな?」
「了解です。元ネタの音源は、どのヴァージョンで?」
「すでにあるんだよ。準備が良いでしょう。これが音源で、その譜面ね。譜面はアレンジをするだろうけど、ないよりは、合った方が良いでしょ」
「その通りですね。しっかりきいて目を通してきます」
「それじゃあ、よろしくお願いする。俺たちの最後に、ピアノが付いてくれるのって、正直かなりうれしいんだ!」
そうだよな。高校生活の思い出って大切にしたいよな。後輩のピアノでも、やりたい曲がやれるなら、入れたくなるよな。
それから、滝口先輩は、入部希望の生徒の対応に向かい、おれは、バンドメンバーたちと食堂に向かった。
何気に、食堂に来るのは、校内見学の時以来になるな。
「まずは、自己紹介かな。桐山でドラム担当、その他サポート担当になりそう」
「俺は、梶原、ベース担当だ。桐山をキリくんと呼ぼうと思うので、カジくんとでも呼んでくれ」
「楠本だ。ギターで、じゃあ、俺もクスとかで良い」
「僕は白樺、ギターだね。シラとかで良いよ」
呼び名を決めるのがブームになっているのか……。
「あのさ、ちょっと質問。なんで、ドラムあんなに速いの?」
「うーん、いろいろ小技が会って、それを使っているのが大きいかな。あとは、慣れかもしれない」
「俺さ、ベースだから、ドラムとこう、なんていうか、がっつり手を組みたいって感じなんだよ。何かアドバイス的なことってないか?」
「うーん、そうだな。ちょっと目線を変えてさ、ロックじゃなくて、テクノとかそっちを聞いてみると、ドラムとベースがどう絡むと面白いか、そういうのがわかるかもしれない。ロックのような激しさはないのが多いけど、淡々とした中にある自己主張みたいなのを感じられると、なるほどって思うかもしれないな」
「テクノか。確かに今まで聞いたことはあまりない。小村哲哉とも違うんだよな。何か探してみる」
「じゃあ、俺も質問。ギターも弾くよな。機材の事とかわかるか?」
「エフェクターのことかな。それともアンプ?」
「どちらも何かあるなら聞いてみたい」
「エフェクターは、いろいろあるけど、結局、使いこなせないと、意味がないわけだ。なら、難しいことを考えるのは辞めて、初めはさ、マルチエフェクターをとりあえず、購入して、音を知って行くってのが、俺はお薦めする」
「確かに、個別のエフェクターを買うより、本当に必要な物を知るためにマルチエフェクターから入るのも手だよな」
「アンプもエフェクターも同じで、アンプ職人、エフェクト職人なんて言われるくらいに凝り始めると奥が深いらしいから、注意が必要ではある。どのメーカーが良いかは、有名メーカーから音を聴き比べて、マイナーな物も聞いた方がよいと思う。自分の好みの音って、本当に、自分で探すしかないから、聴き比べまくって、いろいろな音を知って行くしかないな」
「エフェクターは、マルチエフェクターにしたとして、アンプは有名メーカーの物をとりあえず、使ってみるってのでも良いか?」
「もちろん、それで良い。有名メーカーは、それだけの実績があって、有名メーカーになっているんだから、それを信頼するのも良い方法だ。それでも、アンプは、奥が深いって話をしたわけだな」
「ああ、よくわかった。いろいろなアンプを聞きにいってみるよ」
「僕も質問するよ。ピアノのアレンジをできるようだけど、何がどうなっているの?」
「ずいぶんと抽象的な質問だな。理論っていうのなら、まずは本を読む、んで体感する。それで本を読む。その繰り返ししかないかな。そのうちにアレンジ力が持てるくらいに、体感で知識を理解できているようになっていると思う」
「うーん、体感か。そういうのが音楽だよね」
それからは、好きなミュージシャンの話をしたりしながら、それぞれの雰囲気を感じて行った。
梶原は、軽い感じに見せながら、実は、考えが深そう。リーダーに押すなら、梶原だな。
楠本は、完全にギターオタクだな。社交性が、それなりにあるから、ギターオタクって見られないのだろう。
白樺は、頑張り屋っぽくみえるが、実は、のめり込むのが苦手で、それなのにギターは好きっていう天邪鬼って雰囲気だな。
全員、年相応の、自由さがあって、そこは、辛いところだけど、悪い事ではないから、十分好印象を持てたと言って良いだろう。
逆に三人から見た俺は、学年は同じでも、少し先輩扱いって感じになるようだ。
まさに高校生バンドって雰囲気がして、すごく楽しそうなメンバーを選んでくれた先輩方には、感謝だな。
このメンバーたちと、高校生バンドをやって行こうじゃないか!
ちなみに、バンドメンバーには、フォークソング部も勧めておいた。
ギターの二人はともかくとして、梶原には、いろいろと経験をしてもらって、作詞作曲ができるようになってもらいたいところだ。
そうして、会話を続け、全体下校時間になったので、皆で下校していった。