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第一三一話 ガルバン4

誤字報告、感想、ブクマ、ポイントなどなど励みになっております!

ほんわり書き続けておりますので、のんびりお付き合いお願いします。

アイディアも募集中です♪

 ガルバン4


 二月二七日の土曜日。

 伝通の問題が終焉を迎えても日々は続く。

 俺以外の時間遡行者が確認されたとしても、何ができるわけでもないのでやるべきことをするだけだ。


 ぬちゃんねるは、伝通問題のおかげで大いに盛り上がり、ある程度のユーザーの支持を獲得したようだ。

 あれば煩わしいが、ないと困るネットコンテンツなので上手く運営してほしいと願っている。


 そんな中、去年の秋から騒がれていたフリューゲル横浜の合併問題の決着がついた。

 横浜マリノとの合併は取り消され、存続することが決定されたのだ。

 この判断には今年の一月にあったサッカー天皇杯での優勝が大きく影響を及ぼしたらしい。

 だが、撤退を決めたスポンサーが戻ることになったわけではなく、有志団体などによる運営のクラブチームとして存続することになった。

 形式としては、マリノパートナーズと同じだが、大手企業と言える規模の会社が一つも参加していないため、有名選手たちを残留させることが難しく、かなりの規模縮小となり、リーグも出場を一年間見送ってスポンサー探しと有望な選手の獲得に専念することになる。

 復帰後は、トップリーグからではなくJFLからの再開となりフリューゲルの困難はまだまだ続くことになる。

 それでもサポーターや選手たちは、歓喜の声を上げていたので、これで良かったのだと思う。


 音楽の世界でも動きがあった。

 先日の二月十四日のヴァレンタインデーに安室奈美が産休からの復帰ライブをファンクラブ限定で開催した。

 木戸がいろいろなところで安室好きを公言しているためか、俺と木戸に招待状が送られてきたので見に行くことにした。

 復帰直後のライブなのに、彼女のパフォーマンスは衰えることなく以前よりも磨きがかかっているように感じるほどだった。

 少し気になったのが、彼女にとって少なくない影響を与えたはずの小村哲哉の姿が見当たらなかったのが不穏を感じる。

 彼の転落人生がもう始まっているのか……。

 可能なら一緒に仕事をしたい人物なので、ベックスを買収する時まで持ちこたえてほしいと願うばかりだ。

 それにしても以前の俺の記憶では、安室の復帰は去年の紅白のはずだったが、今の時期になったのは意外に感じる。

 俺がいろいろと動いた影響なのだとは思うが、結果的に安室の人生にはこれで良かったのだと思う。

 後は、彼女の身内に起こる不幸を回避できたらなお良いのだが、手回しだけはしておこう。


 ちなみにだが、レコード大賞で裏金が使われたかを洋一郎さんに聞いてみたところ、伝通とベックスは裏金を用意したが選考者たちは受け取らなかったそうだ。

 良心的な選考者たちが主流のレコード大賞なら、まだ参加をしても良いのかもしれない。

 今年のレコード大賞が、誰になるのかわからないが、今の時点では参加する方向で考えておくべきかな。


 そして、やはり気になるのは宇多ヒカリだ。

 昨年末にデビューシングルを発表し、本当に良く売れた。

 数日前にもシングルを発売したのだが、そちらも良く売れている。

 来月の発売を目標にアルバムを制作しているそうで、それが社会現象と呼べるほどに売れるのは、ほぼ決定したと思って良いだろう。


 ミーサの様子を見ると、こちらは宇多ほどの売れ方はしなかったが去年のドラマとのタイアップ企画は大成功し、それなりの売れ行きを見せている。

 ジャンルで言うなら宇多と同じコンテンポラリーR&Bなのだが、ミーサはゴスペル調が強いので上手く差別化ができたようだ。

 この結果から、舞のデビューも心配なさそうに感じる。

 舞の場合は、コンテンポラリーR&Bがメインになるが、柔軟性は高いので安定感のある活動をしたなら相対的に見て宇多を超える可能性もある。


 一つ気になるのは、以前の記憶の中の舞は、長門代表のいるビング所属で探偵アニメの『名探偵江南』の曲を長く歌っていた。

 今の『名探偵江南』の曲は、全てビング系のミュージシャンが担当をしていて、入り込む隙は見当たらない。

 あのアニメは、長きにわたっての放送になるはずだから、どこかで隙ができるなら、舞に限らず、誰かを送り込みたいところだ。

 ただ長門代表とは一度も会ったことはないが、俺のことを高く評価しているように感じる。

 あまり彼とは、揉めたくないので慎重に交渉をしてもらおう。


 そうして今日の予定の時間となり、リーフビートのスミレが呼びにきてくれた。


「時間ですよ。桐峯さん、行きましょう!」

「ああ、それにしてもその衣装、目立つよな」

「本当に良く目立つと思います。着慣れるためにこちらにいる時は、着替えているんですが落ち着かないですね……」

「厳しそうなら別の衣装にしても良いんだからな」

「でも、桃井さんが折角選んでくれたんです。ベルガモットも桃井さんの手が入って売れるようになったって聞いていますから、私たちももう少しがんばってみます!」

「あまり無理はするなよ。あくまで俺たちはミュージシャンでキャラ売りをするつもりはないからな」

「はい、よく覚えておきます!」


 スミレたちリーフビートの売り出し方について、桃井に相談してみたところ、なぜかコンセプトが『宇宙人』になってしまった。

 ベルガモットの衣装のことで成功実績のある桃井なので悪くはないと思うのだが、メンバー全員がメタリックのワンピースやらを着ることになったのはどうかと思う。

 スミレの場合は、ワンピースにロングブーツ、ロンググローブ、さらにボレロのような物を身に着けているが、全て銀色だ。

 慣れたら気にならなくなるのかもしれないが、インパクトだけなら十分すぎる。

 デジタルロックやテクノポップを得意とするリーフビートなので、この発想になったのはわからなくはないのだが、しばらく様子見をするしかないだろう。


 そうしてミストレーベルの企画室から出て、ほぼ俺たち専用になっている小さめの会議室に入る。

 中には、桃井の発想でおかしな衣装を着ることになってしまった五人の少女たちが待っていた。


 桃井春海よ。お前、本当に頭の中、沸いているだろう……。

 彼女たちのコンセプトは『魔法少女』だ。

 ナントカムーンとかナニキュアのような際どい衣装ではないが、わかる人から見たらすぐにわかる衣装を身に着けている。

 不幸中の幸いと言うべきか、マントがあるおかげでその気になればいろいろ隠せるのは良いと思う。


「それじゃあ始めよう。ミストレーベルの主宰をしている桐峯アキラです。この企画の担当をしています。ここまでお疲れさまでした。これからはミストレーベルで君たちを見守ることになります」


 ギターでリーダーのホムラ、ギターのマドカ、ベースのサヤカ、ドラムのキョウコ、キーボードのマミがメンバーとなる。

 このバンドの面白いところは、クールな声のホムラ、可愛らしい声のマドカ、シャウトやメタルに合う声のサヤカがそれぞれにヴォーカルを担当できることにある。

 さらに、ホムラはマルチプレイヤーで作曲作詞から様々な楽器を一定水準以上で扱え、タイプで言うなら俺に近いそうだ。


「バンド名のマギカは、もしかして桃井さんが?」

「はい。私たちのコンセプトを考えてくれた時にバンド名もマギカに決めてくれました」

「わかった。それじゃ、ここからはミストレーベルの身内として話していく。しばらくの間は、リーフビートとインディーズで活動をしているフローズの前座をしながら、いろいろと勉強をしてもらう。その後は高校に進学をしてもらってから良い時期にデビューを目指してもらう」

「ベルガモットやハニービーと同じ流れと考えて良いのでしょうか?」

「そう考えてくれたらよい。すでに曲があるならデモテープを作って提出をしてほしい。後はリーフビートの皆に聴いても良いし、俺でもスタッフにでも声をかけてくれたらよい」

「わかりました。これからよろしくお願いします」


 メインは、リーダーのホムラが話す感じか。

 ジャンルで言うと、基本はゴシックロックになるそうだが、あまりきつい歌詞は書かないようなので、上手く回れば良いバンドになるだろう。


「スミレからは何かあるか?」

「衣装の件だけど、桐峯さんが言うには厳しそうなら再検討してくれるそうだから、よく考えてみてね。それで大丈夫そうなら、ビルの中だけで良いから着慣れるために衣装で過ごすのをお薦めしたいかな」

「……正直言って、かなり戸惑っているのが本音です。でも、個性って大事だと思うんで頑張ってみます!」

「後は、ガルバンの皆もミストレーベルの皆も、優しい人ばかりだから本当に何かあったらすぐに相談ね」

「はい!」

「それじゃあ、しばらくの間は、リーフビートの皆でマギカの様子を見てほしい」

「わかりました。皆にも声をかけておきますね」


 このバンドの曲を一曲だけ聞いたのだが、何か違和感を感じたんだよな。

 ホムラの作詞作曲らしく何に違和感を感じたのか分からないが、しばらく気に掛けておこう。


僕と契約して魔……女になってよ!


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― 新着の感想 ―
[一言] 魔法少女なほむほむの設定を思い返すに意味深と言うか何と言うか… 灯台下暗しという言葉もありますしねぇ()
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