第一二九話 ミズキと言えば
誤字報告、感想などなど励みになっております♪
ほんわり書き続けておりますので、のんびりお付き合いお願いします。
アイディアも募集中です♪
ミズキと言えば
一月三一日の日曜日。
伝通包囲網は、まだ洋一郎さんが帰国をしないので基本的に動きはないのだが、国会に飛び火をしたようだ。
法整備が不十分なことを野党が指摘をしているらしい。
内閣は、早急な法整備を検討中としているが、どうなるのか気になるところだ。
伝通へも国会へ何らかの形で呼び出して、証言を求めてみてはどうかとも言われ始めている。
アメリカでも連邦議会で国内の過労を含む労務問題の調査をするべきと言う意見が出ているらしい。
欧州各国にも飛び火をしてしまったようで、労務問題の調査が世界的に始まりつつあるようだ。
そんな中で、ネットの掲示板サイトにおかしな書き込みがあることに気が付いた。
そもそもその掲示板サイトがおかしい。
まず、何がおかしいかなのだが、このサイトの名前は、『ぬちゃんねる』と言う。
今後に巨大掲示板となるあの『ぬちゃんねる』だ。
だが、この『ぬちゃんねる』は、俺の記憶では今年の五月以降に生まれるはずなのだが、なぜか今年の一月一日から運営を開始している。
さらに、管理人の名前が俺の記憶と違っていて、記憶通りならユキヒロと言う人物が管理人をするはずなのだが、マサトと言う人物が管理人をしている。
そして、伝通問題のスレッドで、そのおかしな書き込みを見つけてしまった。
それは、伝通を、このまま放置すると日本経済にどんな悪影響があるかの予想が書かれてあったのだ。
その内容は、ほぼ俺の以前の記憶にある通りで、日本の大企業のほとんどが重大な労務問題を抱えている状態になると言うことを的確に書き込まれてあったのだ。
もちろん非正規労働者の問題やハラスメントなどの問題も触れられており、明らかに異常な書き込みだった。
このことから導き出される答えは、俺の同類、未来の知識を持ちながら巻き戻しの人生を送っている人物がいることを示唆している。
だが、未来知識を実際に手に入れてわかったことだが、未来知識は、使いこなせる立場にならなければ、あまり意味を持たないと言うことだ。
株やギャンブルなどの知識を持っていても、それなりにまとまった金額がなければ何も始められないしおかしな儲け方をしたなら、思わぬ方向から邪魔が入る可能性もある。
もし、預言者として世の中に出たとしても、都合の悪い予言ばかりなら誰も相手をしなくなるし命すら危なくなる。
この管理人のマサトと書き込みの人物が同一かまではわからないが、危ないことをしている自覚はあるのだろうか。
俺に直接の影響がない限りは、あまり気にしない方が良いのだろう。
ちなみに最初期の『ぬちゃんねる』で話題となったビデオデッキの初期不良から始まる東大路クレーム事件についての書き込みは確認されていない。
そもそも、事件発生時期に一時的だが、事件の舞台となった当該店舗へのビデオデッキ出荷を止めていたらしく問題が絶対に起こらないようにしていたそうだ。
言うまでもないが当該店舗には、それなりの保証をしてあるので問題にはなっていない。
そんなことがありながらも日常は続いて行く。
アニメソングのタイアップを優先的に求めている俺なのだが、実際はあまり上手くいかないのが本音だ。
それでも、CMソングを筆頭にテレビやラジオの情報番組のタイアップなどを問題なく取れるのは幸いだと思っている。
先日の『ワンページ』の企画は、胡桃沢さんが根回しをしてくれたおかげで東大路グループがメインスポンサーになり、オープニングとエンディングの楽曲を担当させてもらえることになりそうだ。
まだ確定はしていないが、ほぼ決定したと見なして胡桃沢さんは、さらに活発に動いている。
この根回しの中でランテスの井之上さんが恐ろしい話を持ち掛けてきた。
アニソンの帝王の異名を持つ水木十郎さんを筆頭にアニソン歌手を集めたユニットでワンページの初代オープニングをやってみないかと言い出したのだ。
この提案は、水木さんが少し前から考えていたことだそうで、井之上さんはそれを聞かされていたそうだ。
今回の『ワンページ』のような爆発的なアニメでやりたかったそうで、水木さんはかなり乗り気らしい。
そうして今日、水木さんと井之上さんが俺と話をするためにブラウンミュージックにやってくることになった。
こちらから出向くべき相手なのに、水木さんはフットワークの軽い人物らしい。
ビルの一階のラウンジで出迎えるために約束の時間の少し前から待機をする。
「水木さんって、どんな人なのでしょう?」
「俺も初めて会う人だからよくわからないんだよな。舞は、挨拶だけして質問されたら答えるだけで良いからな」
「了解です。今日は大人しくしています」
ワンページのエンディングを歌う予定の舞もこの場に連れてきている。
いつか紹介するなら早い方が良いと思ったからだ。
そうして、しばらく待っていると井之上さんと黒い革のジャンパーに赤いマフラーを身に着けた雰囲気のある人物が現れた。
「井之上さん、お久しぶりです」
「おう、桐峯君、水木さんを連れてきたぞ」
「はい、初めまして桐峯アキラです。よろしくお願いします」
「倉木舞です。ワンページのエンディングを歌わせてもらえるかもしれない新人です!」
「水木十郎だ。桐峯君とは会いたかったんだ。よろしく頼む。倉木さんのことも聞いている。桐峯君の秘蔵子らしいな」
「僕こそ、水木さんにあこがれています。お会いできてうれしいです」
「秘蔵子です! がんばります!」
「うんうん、さあ、話のできる部屋に行こうじゃないか!」
それから、井之上さんと水木さんの二人をブラウンミュージックの来客用応接室の一番良い部屋に案内して話し合いが始まった。
「今日は、わざわざありがとうございます。まだ本決まりの話ではないのですがワンページの件、良かったのでしょうか?」
「桐峯君なら、間違いなく取るだろうから、俺は確定したと思って今回は、こちらにお邪魔したつもりだ。桐峯君もそのつもりで話をして行こう」
「わかりました……。まず、歌詞は宝探しと夢をテーマにする予定です……」
ワンページの強みは、やはり帆船に載って大海原に出る雄大さだろう。
それだけでも十分に熱くなれるのに、海賊と言うさらに心を湧き立たせる要素まで加わる。
そして、宝探しと言う夢も加わり、楽しさの詰め合わせのような作品だと俺は思っている。
それを遠回しに表現するよりも、直接的に表現した方が物語にも合うし老若男女の誰にでも面白さが伝わるはずだ。
「……なるほど。例えばなのだが、アニメのタイトルを入れるのはどうだろうか?」
「うーん、水木さんと言えば雄たけびが代名詞と言っても過言じゃないと思うんです。そういう部分を作ってアニメ放送版には、ワンページ! って叫んでもらって、通常販売版には、それはなしとか……」
「悪くはないが、雄たけび以外にもタイトルは入れたいな」
「なら、最後のページとか、そういう言葉に置き換えるとかはどうですか?」
「それを入れてもらって、アニメ版と通常版で違いを作る、それでどうだろうか?」
「それなら書けるとおもいます」
「原作の織田先生もきっと喜ぶと思う」
「それは僕もうれしいです。次は、曲ですが、明るいポップな感じでありながら、例えばカモメの鳴き声がSEに加わっても違和感のないような曲にしたいですね。それと海賊の話なのですから仲間が必用なので、コーラスは強めにしたいです……」
思わず踊りだしたくなるような曲と言いたいところだが、そこはぐっと我慢をしてスピード感がありながらも、少しレトロな雰囲気のある、そんな曲が良いと考えている。
それにコーラスは絶対に外せない!
多少強めなくらいのコーラスが入っても問題はないと思っているので、アニソンシンガーがユニットとなり、歌ってくれるのならそれは俺のイメージをさらに超える作品になるかもしれない。
「そちらは、イメージが十分に伝わった。桐峯君のイメージのままで良いと思う」
「ありがとうございます。それで、メンバーなんですがどんな感じになるんでしょう?」
「バンドは、井之上君とレジーに担当してもらうとして……」
水木十郎、影山ノブヒロ、松木梨香、さかもとえいいち、近藤正明が候補となっているそうだ。
全員がベテランどころか大御所と呼べるような方々なので、問題はないと言いたいところなのだが、女性が松木さんだけなのは辛いかもしれない。
「女性が松木さんだけですよね。うちの倉木にエンディングを担当させるつもりなので、この中に参加させてみてはどうでしょうか?」
「倉木さんの声は、まだ聴いていないが桐峯君が推すのなら悪くはないのだろう。だが、俺の方でも探してみたい」
「そうですか。なら、お任せします。それと安野監督の件、どう思いますか?」
「安野監督の作品は、俺には難しいところがあるのが本音だが良い監督なのだとは思う。引き受けてくれるのならお願いしたい」
「わかりました。安野監督は、気難しい方と聞いているのですが水木さんたちのドキュメント映像なら、引き受けてくれるはずだと思っています」
それからも、いろいろと話をして、水木さんと井之上さんは帰って行った。
スケジュールの調整は、こちらのマネージャーをしてくれている九重さんがしてくれるそうなので、問題はないと思う。
「兄上、とっても疲れました……」
「ああ、本当に疲れた」
「でも、水木さんはかっこよかったです。一緒に歌いたかったのに残念です」
「まあ、いつか機会があるかもしれない。ジャパン・アニメーション・ミュージシャンズでジャムズか」
俺の以前の記憶にジャムズのことは、しっかり刻まれている。
カゲさんのヴォーカルの印象が強いが、発起人は水木さんだったようだ。
井之上さんがプロデューサーとして参加をし、メタルの雰囲気のある曲で大活躍をする。
アニソン普及の功労者の中にジャムズは必ず入る。
それくらいにジャムズの影響力は大きかった。
そんなジャムズを特等席で見続けられるのは、まさに幸福と言って良いだろう。
言い訳的な後書きを書きます。
時間遡行者の複数人登場は、賛否があると思うんです。
私の中では、神様が直接関与をしているような描写がない限りは、一人しか現れない方が不自然に感じてしまうんですよね。
だからと言って大量に表れるのも不自然にも感じてしまうので、辻褄はあわせるつもりです。
今回で示唆した時間遡行者の存在は、次章の前振り、フラグとなります。
今回のことは、随分前から決めていた流れですので、頑張って書いてみます!
そんなことより、マジンガーーーーゼエエエト!