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第一一八話 黄昏よりも

誤字報告、感想などなど励みになっております!

ぼんやりほんわりと書き続けております。

のんびりとお付き合いください。

リクエストも募集中です♪

 黄昏よりも


 九月九日の水曜日。

 都内には、いくつもの映画館があるのだが、いわゆるオタク向けのアニメ映画を積極的に上映する映画館は多くはない。

 その数少ない映画館の中で評判の良いとされる映画館に今日は俺一人で来ている。

 まだ金曜日からのライブが残っているのに、何でこんなところにいるのかと言うとそれなりの理由がある。

 以前からアニメ映画に水城を声優として出演させることを試みてきたのだが、あまり上手くいっていないのが実情だった。

 名前のないキャラとしては参加をしてもらっていたが、水城加奈として参加するタイトルはしっかり選びたかったこともある。

 それに東大路グループが本気で推せば、良い仕事も取れるのだがそれは別の機会に使いたいと思っていた。

 吟味を重ね、声優・水城加奈として初参加した作品がこの夏に公開されていたのだ。

 収録は七月に終わっていたのでライブツアーへの影響はない。

 そうして、俺はライブツアーが終わって気が抜けてしまう前にこの映画をどうしても見たかったのだ。


 今日の俺は、絶対に身バレをしてはならないので、しっかり変装をしてきている。

 チェック柄のシャツ、デニムのダメージパンツ、スニーカーにバックパックを背負い、いつもよりもフレームの太い伊達メガネ、そしてベースボールキャップ、秋葉原で観察した結果がこのオタクフォームだ。

 四谷さんがとても心配そうな顔をして見送ってくれたが、気にしないでおこう。


 映画館で今日の目的の映画を選び、チケットを買う。

 タイトルは『宇宙要塞ナデシコ ザ プリンセス オブ ダークネス 』だ。

 この映画は、一九九六年にテレビ放送され、話題になったアニメの続編にあたる。

 以前の記憶の俺は、このアニメのことを大学院時代に知る。

 なぜかガンガムだけは好きだった俺にアニメ好きの先輩が、ガンガムが好きなら見た方が良いといくつかのアニメを紹介してくれた中の一つになる。

 此のころの俺は、いわゆる『萌え』と言う言葉を知ってはいても謎の言葉としか認識しておらず、このナデシコで『萌え』を知ることになった。

 サブヒロインの星川ルリが可愛すぎるのだ!

 何か良くわからないがとにかく可愛い!

 ネットの巨大掲示板で、ナデシコスレを見つけたので覗いてみると放送が終わって何年も経つのにルリの決め台詞『バカばぁっか』が溢れかえっていた。

 本当にバカバァッカのスレ住民である。


 今の時間軸に来てからは、当然のようにリアルタイムで視聴したし、この映画のことも注目していた。

 残念なことにゲームやノベルまでは手が出せなかったのは惜しいが、水城をこのアニメ映画に参加させられたのは僥倖としておこう。

 映画館に入り、座席に座る。

 周囲は平日だけあって、あまり観客は多くないようだ。

 収益が気になるところだが、それは今は考えないようにしよう。


 このアニメ映画では、タイアップを取りに行ってはいない。

 むしろ、以前の俺が知っているナデシコを作ってくれるだけで満足だ。

 それに、純粋に声優としての水城加奈が参加することに意義があるので、タイアップは邪魔になると考えた。


 映画が始まり、美麗な宇宙空間の映像が流れる。

 ルリの登場シーンでは、アニメの映像とは言え、見惚れてしまいそうだった。

 宇宙要塞であるナデシコの登場シーンでは、重厚感のある雰囲気が良く出ていて、こちらも良い。

 それから物語が進み、前作主人公と一緒に謎の少女ラピスが現れた。

 このラピスが水城加奈の役だ。

 確か以前の記憶では、後に大河ドラマなどで主役を演じる女優さんがこの役をやっていたと思うが、そんな歴史はどこかへ行ってしまった。

 彼女の出演は、大人の事情からだったようなので、これで良かったのだろう。


 すでに名無しのキャラとは言え、声優の仕事をしている水城加奈なので、浮くこともなく周囲と溶け合っている。

 そうして物語は終盤となり、前作キャラたちが集合して終わって行った。

 残念なことは、この物語の終わりがバッドエンディング気味なことだ。

 東大路グループとは言わなくてもブラウンミュージックとミストレーベル一同で後援をしたなら続編を作ってくれるとは思うが、好きな作品がバッドエンディングでも良いとも思う。

 DVDが発売されたら、すぐに買いに行こう。

 本当に良い作品だった。

 もちろん何が良いかなんて言うまでもない。

 ルリが可愛いから良いのだ!

 ラピス……、あ、うん、可愛かったよ。


 同時上映の『ドラゴンがまたいで通るリナ』の通り名を持つ自称美少女魔導師リナの物語も良作だったと思う。

 彼女の得意とする魔法を放つ時の『黄昏よりも~』で始まる詠唱文言は、後のライトノベルたちに強く影響を与えている。

 その後に続くライトノベルの方向性を定めたシリーズでもあるので、傑作シリーズとしている人たちも多いのだろう。

 個性的な仲間たちと旅をする様子は、ファンタジーの定番なのかもしれない。

 確か今年の秋から『魔導師オーエン』と言うライトノベル原作のアニメも放送されるはずだ。

 そちらも旅をする話だった記憶がある。

 後期の曲が決まっていないなら取りに行っても良いかもしれない。

 後で問い合わせておこう。


 映画は一人で見たい派の俺なので、有意義な時間を過ごせて満足だ。

 アニメに皆を推していくのなら、こんな機会もまたあるかもしれないので、そんな時は今回と同じくひっそりと見にこよう。

 パンフレットやグッズを購入して映画館を後にする。


 ついでなので秋葉原まで出かけてみる。

 今年の六月にWindows98が販売開始されている。

 この初期バージョンは不具合が多く、一説によると開発元のミクロソフト社のビル・ゲイルが、テレビ収録での演出としてWindows98を立ち上げたが、ブルースクリーンになり収録が止まった出来事があったとも言われている。

 それほどに常用するパソコンのOSとしては危険な代物なのだ。

 だが、来年の秋ごろに修正パッチが流通するようになる。

 このパッチを適用させて、マシンスペックを高くしたなら、一つOSをスキップさせて次々世代のXPに乗り換えても問題はない。

 それよりもリンゴーコンピュータから発売されたアイマッキンの方が気になる。

 こちらは、リンゴーコンピュータの操作系統さえ覚えていれば、無難に使いこなせる。

 あえて問題点を言うなら、モニターとコンピュータ部分が一体化しているので、ロースペックのバージョンを購入すると、乗り換えが早くなることくらいだろうか。


 そんなことを考えながら、秋葉原に到着し、ショップを見て回る。

 全体としては、アイマッキンの方が優勢に感じる。

 やはり不具合を気にして購入する者が多いのだろう。

 カタログだけを手に入れて一通りを見終えた。

 この手の品は、事務所を通して購入すると、何かと都合が良いのであとでアイマッキンを発注しておこう。


 ランテスビルにも言ってみたが、井之上さんは不在で、知り合いのスタッフにしか会えなかった。

 服装がいつもと違うことに驚かれたが、気にしないでおこう。

 一階のサテライトスタジオを見に行く。

 折角ミックスパイにも使ってもらおうと作ったのに、しばらくの間、桃井の独占状態になりそうだ。

 伝通には、本格的に痛い目にあってもらわないといけないな。

 紀子さんから連絡を受けた洋一郎さんは『よろしい、ならば戦争だ!』と言ったとか、そんな感じで随分と上機嫌になったらしい。

 洋一郎さんは、昔は凄腕のビジネスマンだったのだから、ひさしぶりに本気が出せる機会が来て楽しいのだろう。

 存分にやってくれたら良いと思う。


 九月に入っても暑いままだが、秋から冬も忙しくなるのだろうな。

 そうして黄昏時になり秋葉原を後にして帰宅することにした。


あんた、ばぁかぁ?

も良いけど

バカばぁっか!

も忘れないで!

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― 新着の感想 ―
[一言] 宇宙戦艦ナデシコ懐かしいw 昔々、ナデシコの二次創作活動してましたワイ ラピス役の人は何が不満で黒歴史化させたのやら…
[一言] 確かにナデシコの最後はバッドエンディングみたいでモヤモヤした。続編が出るのならばまだしも、あのような終わりかたをする位ならば、映画化して欲しくなかったという記憶がある。 同様に鋼錬のシャンバ…
[気になる点] 映画で思い出しましたがこの頃ハリポタの翻訳関係もう取られちゃったのかな? 吹き替えとして活躍するなら是非とも参加する為に関わっておきたい処だけど1997年6月26日にイギリスで発売され…
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