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童話集「下駄箱」

たぬき村

作者: 星野紗奈

どうも、星野紗奈です(*'▽')


とある童話賞に応募して落選したものを置きに来ました。

今年はちょっと病んでたので、作品への影響がとても大きいです(笑)

子供と大人に考えてもらえる童話をかけないかな?と頑張りました!

お楽しみいただければ幸いです(*^^*)


それでは、どうぞ↓

 昔々、あるところにとても優しいきつねがいました。きつねは、小さいけれど美しい村に住んでいて、そこで女の子と仲良く暮らしていました。

 そんなある日、村にたぬきがやって来ました。ところが、それはとてもずるく、いじわるなたぬきだったのです。けれど、たぬきは頭が良かったので、みんなと仲良くすることができました。誰もたぬきがいじわるなやつだなんて思いません。たぬきは村人に優しくしたので、すぐに村の人気者になりました。

 するとたぬきは、ここを自分の村にしてしまおうと思い、村人にこんな事を話しました。

「ここで牛を飼ったらいいさ。ここは広いから、沢山の牛を育てれば十分な牛乳が手にはいるよ」

 それを聞いたきつねは慌てました。原っぱのあちこちに、小さい綺麗な花が咲いていたのです。そこで、きつねは村人にこう言いました。

「お花が食べられてしまったら大変だ。それはやめてくれよう」

 村人は心優しいきつねに賛成しました。仕方がないので、たぬきは諦めて帰りました。

 次の日、たぬきはまた村人に言いました。

「この森の木を切って、畑を作ろうよ。そうすればきっと野菜に困らなくなるよ」

 きつねは、小鳥が隣の村へ行く途中に、この森の木の上で休憩していることを知っていました。焦ったきつねは、急いでそれを止めに行きます。

「だめだよ。小鳥さんが休む止まり木が無くなってしまうじゃないか」

 村人は今度も思いやりのあるきつねに賛成しました。だから、たぬきは何も出来ませんでした。

 巣に帰ったあと、たぬきはかんかんに怒りました。きつねが邪魔をするので、いつまで経っても村を自分のものに出来ません。

 そこでたぬきは考えました。そして、きつねには仲の良い女の子がいることに気がつきました。たぬきは、女の子が居なくなれば何か変わるかもしれないと思いました。

 次の日になると、たぬきは言いました。

「もし雨が降らなくなったら、僕たちの食べ物は無くなってしまうよ。女の子を差し出して神様にお祈りしておこう」

 女の子と仲の良かったきつねは、とても驚きました。大切な友達を失いたくないきつねは、たぬきに言いました。

「神様に誰かをあげるのは間違ってるよ。みんなで頑張ればきっとなんとかなるよ」

 しかし、村人はみんな目をそらして、こちらを見てくれません。それでも、きつねは訴えます。

「なぜあの子なんだい? 何もしていないのに可愛そうだよ」

 するとたぬきがこんなことを言いました。

「きつねさんが僕に反対ばかりするから、この村は良い村にならないんだ。もし僕の言うことを聞いていれば、村はもっと大きくなって、村人さんたちは皆幸せになれたのに。食べ物が無くなったら、僕たちは死んでしまうんだよ」

 それを聞いた村人は、皆たぬきに賛成しました。自分が死ぬのは嫌だからです。

 それでも諦めずに、きつねは村人に問いかけ続けました。

「なぜあの子を生け贄にするんだい?」

 すると、村人はこう答えます。

「僕たちが死ぬのは嫌だからだよ。たぬきさんはとても頭が良いから、彼の言うとおりにすればきっとうまくいくさ」

 きつねは信じられませんでした。皆で助け合って生きてきたのに、大切な友達が死んでしまうのを黙って見ていることなんてできません。

「本当に、神様にお祈りすれば、雨が降ると思っているのかい?」

「信じるしか、道はないのさ」

 村人は安心したような顔をしました。誰でも死ぬのは怖いから、いつでも自分が逃げられる道を選んでしまうのです。けれど、どうしても女の子を助けたいきつねは、思いきってこんなことを言いました。

「生け贄は僕じゃだめなのかい?」

 すると、村人は驚いたような顔をした後、こう答えました。

「君は人間じゃないだろう」

 驚きのあまり、きつねはそこから動くことができませんでした。自分は人間ではないから。たったそれだけの理由で、自分が身代わりになって女の子を助けることができないのです。ようやく体を動かせるようになると、きつねは震える足で走って巣に戻り、一人で静かに泣きました。

 村人が女の子を生け贄にすることを決めてからも、彼女が死なないように、きつねはいろいろな事をやってみました。あるときは、隣町から牛乳をもらってきました。またあるときは、一日中畑を耕しました。それから、川の魚をとってきたり、いろんな家のお手伝いをしたり、ときには森の果実を集めてたぬきにお願いしたりもしました。しかし、何をやってもたぬきと村人はきつねの言うことを聞いてくれませんでした。そして、とうとう女の子はいなくなってしまいました。

 きつねは、あんまりだと思いました。なぜなら、きつねは小さくても美しく、強く生きるこの村が大好きだったからです。悲しくなったきつねは、村から出ていってしまいました。

 それからしばらくして、村はたぬきの思うがままに支配されました。その村はいつからか、たぬき村と呼ばれるようになりましたとさ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました♪

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