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新たな人生、平穏を目指す

神によって選ばれた王が邪神を奉ずる他の有力者を打ち滅ぼし、脈々と続くその後の王たちが勢力を伸ばしていく過程を描いた歴史の序章譚。


国が統治された後のドロドロの王家の身内争いや地方貴族の覇権争いはあったものの、文化的に成熟し人々の精神の成長を促した歴史の第二幕。


複数の自然災害が重なり国が荒れ、武力を司る武人たちが力を付けて国政に介入してくるようになった第三幕。


貨幣という概念が誕生し、歴史は更なる分岐点を向かえ新たな道を進もうとしている。



歴史のあらましをまとめるとこんな感じらしい。

どこかで聞いたことあるような、ちょっと違うような…

どの国も同じような道筋を辿るのかね、歴史ってやつは。



俺の前世は普通の公務員だったんだ。

小中高と地元の公立高校に通って、大学は勉強して親元を離れた地方の国立大学に進学。

大学卒業を機に、何かあった時には親の面倒も見れるように地元から少し離れたところで公務員になった。

まさか親より先に自分が死んでしまうとは思わなかったけどな。

高校で出会った唯一無二ともいえる親友二人と飲んでいた帰りに、居眠り運転の車が交差点に突っ込んできて死んでしまった。

人は死ぬ直前に色々な事が頭をよぎる走馬灯を見るっていうけど、あれは嘘だね。

車に引かれた次の瞬間には俺は赤ん坊になっていたんだ。

しかも俺が生まれ育った地球とは異なる世界、時間軸の異世界の赤ん坊だったみたいだ。


まあいわゆる転生…英語で言うとリインカーネーション[Reincarnation]ってやつだね。

英語でいう意味は全くないけど、言ってみたかったんだ。


転生物の鉄板といえば剣と魔法の世界。

でも俺が転生した世界は魔法がなくて、地球の日本と似たような世界線を辿っている国で、生活水準は前と比べると涙が出てくるほど発展していない。

あとは特別な力を授けられてウハウハな異世界ライフを思い描いてみたけど、どうやら俺にそんな特別な力はないみたいだ。

まだ特別な力が目覚めてないだけだと信じたいけど、期待せずに待ってるよ。

人並みに中二病を患った前世の学生時代、「右目が急に(うず)く…」みたいな展開は大歓迎である。


あと重要なのは俺の転生先の身分だな。

理想としては大貴族のお坊ちゃん、はたまた誇り高い騎士なんてものも憧れた。

そして俺の転生ガチャの結果としては何の変哲もない農家の三男坊。

奴隷に生まれて成り上がりハードモードストーリーとかは嫌だったけど、まじで地味で普通で変哲のない人生を送るみたいだ。


家の手伝いをしながら6歳まで、なんとか病気もせずに生きて来られた。

医療技術なんてなくて祈祷に頼るようなこの世界、病気がすぐに死に直結する。

不潔とかいってられない農民の生活でも必要以上に清潔さを保ち、食事にも気を使った。

でもやっぱりこんな生活には耐えられない。

なんとかして農民生活から抜け出せないか考えてみたところ、俺に1つの妙案が思い浮かんだ。



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科学が発展していないこの時代、神様ってやつはやっぱり信じられていて、それは俺の家の一般農民家庭でも一緒だった。

このまま農民として過ごせば、畑を耕して人生を終える。

しかも俺は農家の三男坊だから親からもらえる農地なんて多分ない。

それと、もし戦争なんて起きてしまったら兵役で戦争に駆り出されてしまうかもしれない。

農耕の重労働から解放されて、兵役も免除されている職業といったら、俺に思い浮かぶのは神職に殉じることだった。

商人になることも思い浮かんだけど、前世では安定を求めたバリバリの公務員。

平穏で平和で安定した生活の為ならば、念仏でも聖書でもなんでも唱えてやるという心意気だ。


そう思い立った俺は6歳になった機会に少し大きな町の教会で洗礼を受けた。

適当に「神様からの声を聞こえた」って言ったら教会に迎え入れられた。


神様万歳!


6歳まで育ててくれた両親と兄弟姉妹との別れは少し悲しかったけど、農民には家族の倫理観なんてないこの世界では、両親はマンパワーが減って残念って言って、兄弟姉妹は口減らしになって食料の取り分が増えるって喜んでいた。

感動なんてしてる暇なくて渇いた笑いしかでなかった。



シュガーソング村の農家の倅のコルクとしての人生は終わり、神職に殉じることになったため名前も新たにフーコーキとして平穏無事な僧侶ライフが始まった。



この世界の神様は二十(はしら)いる。

神様だから数え方は柱らしい。

最上神である陽光神(ようこうしん)様、その(つがい)月光神(げっこうしん)様の夫婦神(めおとがみ)

夫婦神の5人の子供の火炎神(かえんしん)水氷神(すいひょうしん)、|、樹木神(じゅもくしん)金鉱神(きんこうしん)岩土神(がんどしん)

夫婦神の眷属で空の神々である青空神(せいくうしん)赤空神(せきくうしん)紺空神(こんくうしん)白雲神(はくうんしん)翠嵐神(すいらんしん)黄雷神(おうらいしん)

子供神の眷属で大地の神々である人命神(じんめいしん)鳥獣神(ちょうじゅうしん)海魚神(かいぎょしん)農耕神(のうこうしん)武具神(ぶぐしん)詩歌神(しいかしん)

そして最後に夫婦神が生まれる前から存在し、日の当たらない世界の影の神である零黒神(れいこくしん)



二十柱もいると、一般人には覚えきれない。

俺も教会に入るまでは(おぼ)ろげにしか把握していなかった。


一般人が知ってるのは夫婦神と子供神と人命神くらいだろうか。

うちは農家だったから農耕神もお世話になってたみたいだけど。


夫婦神と子供神がそれぞれ7つの曜日を司る。

人命神はこの国「ラビエンス王国」の初代国王となり、国の統治や人の生き死にを司っている。

他の大地の眷属の神々は農民には農耕神、狩人には鳥獣神、漁師には海魚神、武人には武具神、芸術家には詩歌神を崇め奉る祭事をおこなっているから比較的身近な存在だな。


うっすらと前世の記憶にある日本神話やらギリシャ神話に似ているし、曜日も陽光から岩土の7つで一周している類似点があることから、もしかしたら過去に俺と同じ転生者が宗教を作ったのかもしれないな…

まあそんなことは実証も出来ないから、「神のみぞ知る」ってやつだろう。



ちなみに神様は信じられていて、祈祷や祭事は頻繁に行われているけど、魔法の(たぐい)は一切ない。

俺の前世が手品師(マジシャン)とかなら、新しい宗教とか開けただろうな。

手品の一つでも覚えておけば良かった。




教会に入ったことで、最初に学んだことは神話のこと。

そして文字の読み書き、歴史と簡単な算学。


朝は日の出と共に起床して、掃除と炊事と祈祷。

朝食を終えると、勉学として神話や文字について学ぶんだけど、前世の上積みが少しあった俺は飲み込みが早くて、2ヶ月でほぼ完璧に覚えた。

農民の時はなかったが、嬉しいことに僧侶になると昼ごはんが出た。

昼ごはんを終えると、夕食までは自由時間だ。

娯楽なんてないこの時代、軽く身体を動かすのに時間を使ったり、あとは何をするでもなく風に当たりながら空を眺めていた。


この教会はだいたい30人くらいが暮らしている。

1番偉い司教様、司教様の手伝いの司祭様3名と助祭様5名。

俺みたいな僧侶見習いが3人。

下働きの下人が20人弱。


同年代の子どもが俺以外にいなくて遊び相手がいないのは悲しいな。

僧侶見習いのほかの2人は二十歳前後の俺よりお兄さんだ。


ちなみにこの教会に来て半年くらい経ったけど1番偉い司教様はいまだに会えていない。

なんでも領主様に頼られて領地運営に携わっているんだとか…

宗教関係者が政事に携わると混乱が起きると思うんだけど、この世界には政教分離などという概念は存在しないみたいだ。

フーコーキの物語が始まりました。

少しでも皆様に楽しんでいただけますよう頑張ります。

ちなみに彼の前世の名前はコウキです。

僧侶になる時にたまたま前世と似たような名前になりました。

2019/11/28 更新

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