死神6
西園 宗一郎。
西園は不登校の同級生らしい。
母親を事故で亡くしてから学校に来なくなったそうだが……
登校を促すために友達になれと言われてもな。
そんな事に時間を掛けるつもりはない。
俺にはやらなければならない事が沢山あるんだ。
……だがクラスでの立ち位置を確固たるものするためには必用か?
別に確固たるものにしなければならないほど、困ってはいないが。
浮きすぎず、目立ちすぎず。
影が少し薄いくらいが適切だ。
どうする?断るか?
いや、ここで竹中にCDの事に加えてさらに恩を売っておくのも悪くないか。
竹中は生徒会の役員。なにかと利用出来そうだしな。
それは置いといて、ゲームでも初めようか。
趣味は良い。苦痛である無為な時間に目的を与えてくれる。
他人との触れあいは俺にとって苦痛以外の何物でもない。
皆が利己的なんだ、自分がそれに巻き込まれるなど全く無為なものだ。
恩を売り、引き換えに利用するのも最低限にしたい位だ。
少しでもそれらから離れて、影響されてない環境下で自分のしたいことをする。それこそが有意義だろう。
他者は有害な存在だ。
あの俗物共め。
さて、夜も更けてきた。
せっかくの夜だ。
地下鉄はもうダメだな。
しかし、やるだけやらなきゃ気がすまない。
アレについて調べるだけ調べなきゃ気がすまない。
俺がこれまでの生涯、集めに集めた文献にも書かれていなかった。
俺は昔から多趣味だった。なんでも興味を持って取り組んだ。
それが終わってからまた、新しい楽しみに取り組み、またそれが終わってしまうと次の楽しみを探した。
今は、ファンタジー小説にこのファイナルクエスト。
7月の中頃に出たこのゲームは日々コツコツプレイしていた結果、もうラスボスの手前まで来てしまった。
タイミング的にはちょうど良かった。
ファイナルクエストが終わって、アレの調査が始められる。
これほどまでに惹かれる物はなかった。
着たままだった制服を脱ぎ、ジーパン、フードに羽毛の着いたパーカーを着こんだ。
夏なのでパーカーはノースリーブ。
その下はTシャツだ。
「さあ……行こうか」
ソイツの存在を感じると、ヤツは姿を現せた。
紫色の死神。
裾の方に行くに連れ、紫陽花のように紫から青に染まっているコートのようなものを羽織った男性形のそれは、ほんの少し出てこいと念じれば次の瞬間には俺の後ろに立っていた。
昨日興味本位で廃墟と化した地下鉄に行った時現れた、まだ正体不明のなにか。
だが、俺自身には忠実そのもの。訳のわからない刺客から守ってくれた。
今、俺の興味はここにある。
この死神が何者なのか。そして、あの追っ手が何者なのか。
追っ手の手際のよさ。日本の、ましてやこんな田舎じゃ入手しずらいはずの拳銃を携帯していた事から……恐らく組織的に俺を狙っているはずだ。