死神5
『もしもし庚?』
「ああ、竹中か。どうした?」
竹中からか。前の席のヤツで良く話すが、休みの日に電話してくるなんて。
ちょっとだけイラっとしつつ、ヤツの話しに耳を傾けた。
『CD買った?マイコミの新アルバム』
「おー、学校帰りに買った」
竹中のやつが、その話題を振るってなると……
ふむ……曲をパソコンにコピーしておくか。
……まぁ、これもクラス内部で居場所を確立するため。
正直、こうして人間社会に溶け込むのは神経を使うから疲れる、勘弁してほしい。
煩わしい……が、どんなに憎んでも人類は居なくなってはくれない。
『ワリィ、今度貸してくんね!いつでもいいからさ!金欠なんだわ!』
「お前今月出たファイナルクエストでも買ったんだろ?」
社会に溶け込むしか、生きる道はない。
妥協することでしか……生きられない。正直、死にたくなる。
『な、見抜かれていたか……』
「自称ゲーマーだもんな。明後日ならいつでもいーよ」
今にも死にたくなるほどにどっかりとのし掛かる憂鬱感を振り払い、机に向かってパソコンを立ち上げるとディスクドライブを操作する。
『でさ、話変わるけど……』
間もなくモニターの横がパカッと言って、ディスクを入れるプレートが生えてくる。
「うん」
コンポに手を伸ばして、CDを取り、ディスクを入れた。
間もなくオートでコピーが始まる。
無意識に終了までの時間を示すゲージをなんとなく死んだような目で追っていた。
……なんで俺がこいつのためにこんな事を……。
どの道コピーする予定だったとはいえ……。
『今朝のニュース、見た?』
ピタッと手が止まった。
ニュース。
そう言えば今日はまだ見てないな。
何かやっていたのか?
「いや見てないけど…なんだよ、ニュースって」
『あっそう、なら良いんだけどさ』
ん?
竹中が話を終わらせようとしている。
……ひっかかるな。
「なんだよ、言えよ。何がやってたんだよ」
まさかこれから調べに行くアレについて報道してたんじゃないだろうな。
昨日のアレについて……だとしたらマズイ。
しばらくは現場には戻らない方が良いと思っていたが……
『いや、その。さっき、九納屋市の地下鉄で……爆発事故があったってラジオで』
「……爆発?」
この田舎町の地下鉄なんて廃線になったあの駅しかない。
でも、廃線の地下鉄で爆発事故?
……そうか。
かわりに相手側が証拠隠滅してくれたのか?
確かに、相手側も公には知られたくはないだろう。
『実際あの地下鉄が動いてたら怖いよなーって話。…………ん、庚?どうしたよ』
いかん、考え込んでしまった。
「いや?でも爆発なんてする理由あるのか?廃線だろ?」
『さあな~誰かがイタズラでもしたんじゃないの?』
竹中はそう言って笑った。
いや、どんなイタズラでも爆発はやり過ぎだろ……
その後しばらく下らない世間話をしながら適当に切り上げ、全ての曲をパソコンに転送したのをしっかり確認して電源を落とした。
その世間話の中に一つ厄介事があった。