未帰還者#2/23
……バカな。煉のヤツ……
機体が初期装備ではない?
黒光りする重厚な装甲に固められたどっしりとした台形のフォルム。
その体格の背後に備え付けられた2本の重迫撃砲が伸びている。
キャタピラの脚部パーツ、両手には近接型を牽制するためのショットガン。
火力と防御力に特化した重装備型だと!?
コイツ、マジか。
何故だ。何故イクシオン・ゼロスのユーザーなんだ。
「何故だ」
「紫苑が負けたらプリクラの刑」
「はぁ!?」
あれ、ダメだ。頭こんがらがってきた。
何故イクシオン・ゼロスをプレイしているんだ?
しかも全くの素人じゃない?
いや、身辺調査で俺がイクシオン・ゼロスをやってる事くらい判るか。
そう思うとなんだか、怒りが込み上げてきた。
「くそ、バカにしやがって……」
「紫苑、容赦はしない」
「良いだろう、今から徹底的に叩いてやるからな!」
愛機のバーニアを吹かすと俺の機体は銃弾や、榴弾。光線の飛び交う空へと舞いあがった。
†
煉の隣で俺はカメラを見ていた。
『はい、チーズ♪』
シャッター音がして、落書きタイム。
……激闘の末、煉に負けた。負けてしまった……この俺が……。
対接近戦の機体で、更に回り込めない狭いビルの間から迫撃砲を飛ばしてくるだからしっかり直撃した。
しかし、まともに戦うにはその狭くて動きの取り難いビル群の中にいる煉機に接近しなければならない。
デフォルトでHPが低いので自慢の機動力を奪われてはもう、虫の息もいいところだ。
たった3発で撃墜された。
迫撃砲の弾速も速かった。
それから4時間は同じ様に火花を散らして戦っていた。
長距離狙撃、重装備型、航空爆撃型、罠設置型。
様々なバリエーションで戦ってみたが一向に歯が立たない。
煉との差はどこから来るのか…
考えられるのは、俺が所詮素人だからか。
結果、プリクラを撮る羽目に。
煉はどこか満足気に鼻からふんすと空気を吐いた。
「満足したみたいだな」
それを携帯に張り付けている煉に掛ける声にも、我ながら力がなかった。
なんだか、悔しいを通り越して疲れた。
ただの時間潰しが煉に振り回される形になった。
最早苦痛で苦辛だ。
苦しさは通常の2倍の凄まじさといった感じか。
「紫苑、楽しい」
普段表情の変化に乏しい煉には珍しく、笑顔でそう言った。
世の中の男性は女性のこういう表情にときめいたりするらしい。
「そうか」
作り笑顔で返事をする。
どうやら俺は例外だったみたいだ。
ピクリとも反応しねえ。
興味が無いのだから仕方がない。
それより、この後の事を考えよう。
「煉、吉津根美山には何時に行くんだ」




