未帰還者#2/19
「紫苑この方は」
「紫苑?この娘まさか」
「「彼女?」」
何故かピッタリハモる。
コイツら初対面の癖にその息の良さはどこから来るんだ。
「どっちも願い下げだ」
「えっそんな!?」
「……紫苑。久々に会ったばかりとは言えもっとこうなんか……」
そして二人ともなんだかやりきれない表情になって萎んでしまった。
これが俗に言うシンクロニシティってやつか。
「お前ら初対面なのに息ピッタリだよな」
「紫苑。嬉しくない」
「そうだよっ!私達ピッタリじゃないから!」
いやピッタリじゃないか。
どっからどう見ても。
端から見ててなんだかちょっとだけ面白い位ピッタリ合ってる。
「さて、俺は出掛ける。悪いが退いてくれ」
「あ、ちょっと」
大山を押し退けて先を急ぐ。
ここ数日、我ながら大山に対する扱いが酷くなっているが。
あっちが此方に踏み込んでくるのが悪い。
ちょうど良い距離感を保っていたい。
まあ、奴も幼馴染みを自称するならわかってくれるだろう。
「ちょっちょっと?紫苑!」
……わかってくれるだろう。
「ちょっと!ちょっとちょっと!」
「ネタが古い!」
大山が無理やり前に立ちふさがってきた。
どうやらわかって貰えないらしい。
「紫苑!昨日何してたの?家に居なかったよね!?」
「言う必要性はない。お前に迷惑掛けてないだろ。つまり関係ない」
「迷惑なら掛かりましたー。私ーあれから紫苑を一人で探しましたー。埋め合わせして下さいー」
ギャルっぽい憎たらしい口調で大山は詰め寄ってきた。
ぶん殴りたくなる衝動を必死に堪えながら俺は深呼吸した。いや、嘆息か。
「おう、ご苦労様」
大山を回り込む様に先に行く。
「行かせないぽよ!」
と大山が再び立ち塞がる。
「なんだ、不服か」
「当たり前田のクラッカー!」
いちいちネタが古い。
これ程、同年代とジェネレーションギャップ感じる事になるとは思わなかった。
「ふん、お前。コイツと今からカラオケ行ってきてくれないか」
後ろでお腹の前で両手を重ねて粛々としている煉に、ダメ元で大山を押し付けてみる作戦。
「名前で呼んでほしい」
「名前で呼んだらこの馬鹿と二人だけでカラオケに行くのか?」
「私の任務は紫苑の監視。紫苑の側を離れる事はできない」
「ちっ」
やっぱりダメか。
まあ期待してなかったから良いけどな。
「露骨な舌打ちをしないでほしい」
「監視?あんた変態じゃないの!?行こう、紫苑!コイツヤバイよ!」
大山は大山でなんかテンション高いし。
もうやだ帰りたい。
ああ、ダメだ帰ったところで煉も馬鹿も着いてくるか。
俺は物言わぬ貝になりたいと初めて心から願った。
せめてコイツらを阻む堅牢な甲殻が欲しい。
防音、不透過、360度完全防備の。




