未帰還者#2/18
確かに昨今のゲームは出尽くした感が否めない。
だが、それを理由に多機能化してハードで差別化を図ろうとしている風潮が、どのゲーム会社でもみられる。
もし、それでゲームがアプリケーションの様に手軽な物になり。
最終的に内容自体が薄くなるのではないかと、危惧している。と言っても……。
まあ、危惧したところで一般人の俺にはどうともならないのだが。
「紫苑。私と一緒の時はヘッドフォンを止めてほしい」
……はぁ。
「不要なコミュニケーションを取るつもりはない。必要ならその都度肩を叩くなりして呼べばいい」
「紫苑、私と仲良くなろう」
「断る」
何故こうも馴れ馴れしいんだ。
この敵は。
「お願い。もう離れたくない」
もう離れたくない?
もう、だと?
……やはりか。
デジャヴはただの思い過ごしじゃないな、煉とは前に会った事がある。
「俺はお前と会った事があるんだな?」
「名前で呼んで」
「俺はお前に家に上がる許可ばかりか、食料までも提供した。見返りを要求する」
煉が無表情を少し崩して、瞳孔を開いたり収縮させたりして目を白黒させた。
どうやらこいつの意表を突いたらしい。
「……ずるい」
はんっ。そんなのお互い様だ。
付け入る隙を与えたお前の負けだ。
「嫌ならカルボナーラ返せよ。あと家にあがった分もあるからな」
「紫苑。卑怯」
「せめて狡猾だと言え」
俺は手段を選ばない。
壁があるなら回り込むか、または無効化すればいい。
不都合があるなら取り除くか無視する。
煉は俺の人生において不都合極まりない存在だ。
しかし、今抗えば復讐を成就する前に始末されかねないから従っているに過ぎない。
時が来たら……
「……じゃあ、紫苑の質問に一つだけ答える」
「不十分だ。家に滞在した2時間半。それと同じ時間だけじっくりしゃべって貰うぞ?」
「そんな……そこをなんとか……」
「あー紫苑!!」
瞬間的に額に青筋が出現したのがわかった。
そして、煉に対して抱いた感情とは違う殺意が込み上げる。
どうしてだ……どうしてこのタイミングで……!
「紫苑。あの人、誰」
煉が俺の後ろに手を差し伸べる形で尋ねた。
流石に初対面の人に指を指すような無礼な事はしないらしい。
恐らくその手のひらはアイツに向いている。
全力で知らないと言いたい。
全力で知らないと言いたい。
大事な事なので二回思った。
「ちょっと紫苑!?あんた、え?その娘。誰よ!」
こっちの馬鹿は煉に指を指した。
煉との育ちの差が知れる光景だった。
「大山、うるさい。それから、他人に指を指すなよ」
俺の敵とお邪魔虫が一様に顔を揃えた。
正直グランドゼロって気分だ。
……なんだか殺意と同時に無性に切なくなってきた。
なんだこの眼前に広がる双璧は。やっぱり世界は俺を見捨てたのか?
いや、死神に関しては見捨てられてもいいが、これは困る。




