未帰還者#2/17
自分でもバカな事をと思ったが、参考までに聞いておきたかっただけだ。
それから通学路を歩き続ける。
通学路はいつもと変わらないのに、俺の周りは劇的に変わっていた。
死神、殺し、ガスマスクの組織。
死神を手に入れてから、命のやり取りをする羽目になってしまった。
なのに、世間は何も変わってない。何もだ。
コイツは何の冗談だよ?
俺だけ世界に置いていかれたのか?
改めて見ると、道いく車や歩く人々も普段通り。
通りすぎた電化製品店のショーケースのプラズマテレビでニュースがやっているが、死神や能力については触れられていない。
心底、愉快だ。
直接手を下さずに人を殺せる力を手にいれたって言うのに、世間はまだ気づいてない!
今のうちにやれることをやろう!
そんなことを考えながら歩いていると自宅の側まで来てしまった。
自宅に着くと、居間に連を待たせて俺は風呂に入った。
そのまま着替えを着て、居間に移動。
レンチンだけで済む冷食のカルボナーラを食いながらどこに行こうかと頭を巡らせる。
というか、このまま煉を家に置いておきたくない。
監視対象の俺が出掛けるなら着いてくるはず。
フォークで巻いて口に運ぶ。
うん。このカルボナーラはやっぱ旨い。
「紫苑」
ゲーセンなら作戦予定時刻まで時間を潰せる。
一応他の選択枝も考えてみようか。
カラオケなんてどうだ?
いや、煉の歌う姿なんて見たくない。
「し、紫苑」
喫茶店……煉が居ては落ち着かない。服屋。金がない。映画……見たいものがないな。釣り。炎天下だ。勘弁してくれ。漫喫。うっかり時間が来たら煉が煩くしそうで嫌だ。
「紫苑~」
「なんだよ、人がせっかく聞かないふりをしていたのに」
背筋をきちっと伸ばしてテーブルの向かいに座っている煉が困ったような顔をして此方を見ている。
と、子熊が唸るような、情けない音がした。
煉の代わりに返事をしたのは煉の腹の虫だった。
「……申し訳ない。その、しょ、食事を提供して欲しい」
どこまで図々しいのか、この疫病神は。
これが普通の客人ならまだ対応は違ったが。
コイツは俺の敵。
いつかは命のやりとりをする間柄だ。
しかし、忘れた頃に腹に鳴かれては煩わしいのは確か。
「冷凍庫に同じのあるから。自分でやって食えよ」
溜め息に乗せて投げ付けるようにそう言った。
面倒な奴だ。
まあいい。
久しぶりの我が家も気のおけない物だ。
「ごちそうさまでした」
食べ終わると煉はそう言って、食器を片付け始めた。
「食器は水にしばらく浸けとけ。俺は出掛ける」
「わ、わかった」
やはり、ゲーセンが安定か。
なんだか落ち着かない。
だからといってこのまま家に居ても落ち着かないのは変わらないのだから仕方ない。
俺は家を出て、煉が出てから鍵を掛けた。
今見たら、妹の靴がないので出掛けているのかもしれない。
鞄からPRPウォータを出して折り畳み式のヘッドフォンを装備する。
ウォータを見るといつも複雑な心境になる。
最近のゲーム機はゲーム機と言うよりメディアプレーヤーとしての側面が強い。
音楽はおろか、動画も見れればネットも繋がる。
ネットを繋げて音楽、動画のダウンロードすら出来るので外部機器要らずだ。
もはや何でもありなところまで来ている。




