未帰還者#2/11
煉はそう言ってベッドから立ち上がった。
「……ごめんなさい」
去り際、煉は謝罪を言い残した。
「ははっ今更かよ……」
ドアを閉め、錠の落ちる冷徹な音のあと、煉の足音は遠ざかって行った。
謝罪か。俺の娯楽を邪魔した事は許されない。
だが、それに対して謝罪する程気が回るとは思えない。
……あぁ、手荒な真似をしたことを謝ったのか。
白々しい。
しっぽにする相手を気遣うなんて、なんて甘さだ。
いや、油断させるための演技か。
信頼などするものか。
煉……いや煉に限らずだ。
一人残らず……
俺の手で死ね。
……改めて部屋を見回すと俺の鞄が少々雑にベットの下に放られていた。
蓋が半開いている……。中を見られたのか。
別にやましいものはない、手袋と懐中電灯くらいだ。
だが、妙に腹が立つ。
なんなんだ。なんの権利があって俺の荷物を覗き込むんだ?
……まあ捕虜の荷物くらいチェックするだろうさ。
道理ではある。納得は行かないが。
中身を見たらポケットに入れていたはずの財布や携帯も入っていた。
……携帯を野放しにしている?
無用心過ぎやしないか?それとも警察に連絡しようものなら即座に殺せると言うことなのか?
幸い辛うじてだが電波はあるらしい。
……警察になんか連絡するものか。俺も能力に関しては知られたくない。
捜査がどう及ぶかわからないし、能力絡みのことは一切口外しない方がいい。
そんなことより、また竹中にメールを打とう。
……これをすればほぼ必ず動くはずだ。
文面は……そうだな。
『驚かないで読んでほしい。里中の死体を見つけた。その他にも沢山の死体が隠されていた。
俺はあまり関わりたくないんだけど、警察に相談するべきなのか?
俺はどうすればいいのかわからないんだ。』
こんなものか……。
この推理ごっこも、これで終わりか。
まあまあ楽しかったか。
†
翌朝、といっても、窓も時計も無いこの部屋では時間がわからない。
煉が朝だと言って起こしたんだから朝なんだろう。
何時間寝ていたのか。
この状況でもやはり寝れた。
おかげで麻酔はもうすっかり抜けた様だが……
「ぼーっとしてる。寝不足?」
煉は俺の隣に座っていた。あまつさえ、煉が部屋に入ってきた時に起きれなかったなんて…
不要になって、殺される時に事前報告は無いんだぞ?
熟睡した事に危機感を覚えつつも、俺はベッドから起き上がる。
「さ、行こう」
俺は手を引かれ、煉と一緒に牢獄を出た。
「な!?」
煉と廊下に出た瞬間、俺は立ち眩みに平衡感覚を失って、卒倒しかけた。




