未帰還者#2/10
煉は悲しそうな顔のまま説明の開始を宣言した。
「我々はある団体を追跡している、その団体を殺害する事が目標。紫苑にはその手伝いをしてもらう」
団体、つまり複数の殺人。
ふん、俺には関係ない命だ。幾つ消えようと問題ではない。
問題は他にある。
「殺人か?警察関係が黙って無いんじゃないか」
当然気になるのはここだ。
犯罪を犯すとなれば、ここは気になる。
「警察は関与出来ない。この件は公にはされないし、凶器にするものも絶対に発見されない」
ふむ、能力で殺せと。
霧のように消え、霧のように現れる凶器なら発見はされないし、凡人相手なら抵抗する間もなく殺れる。
その時殺人現場に居たと言うアリバイの方が心配だ。
「我々もアリバイまで面倒は見れない。ヘマをすれば捕まるし、必要なら捕まる前に……紫苑自身を始末する」
煉は悲壮感にうちひしがれた様に顔を歪ませてる。
泣き出しそうだ。
良くできた演技だ。役者の子かこの子は?
にしても使い走りにされた挙げ句、しくじれば団体とやらと同じ始末される側か。
「はっ。酷い話だな」
皮肉と嘲笑を込めて鼻で笑いながら、俺は煉を見下した。
蜥蜴のしっぽ切りってやつか。
能力で殺す以上、能力者が能力を明かさない限り知られることはないが警察、あるいは世間の追及に対する能力者の忍耐力に頼る以上、それでもまだリスクが高い。
能力が公になるのは奴等も、俺にとっても旨味はない。
しっぽを切ってバレずに済むならそうしたいだろう。それに捕虜が能力者ならば、確かにしっぽに適してると言えるだろう。
はなっから情も不要ってわけだ。
……その判断をした事を後悔させてやる。
「で、団体とやらの特徴は」
「平均13~18才の男女、現在確認してるのは計11名」
「なんだって?」
ヤクザとか、公的機関とか、きちんとした大人の組織の類いじゃないのか?
……俺と同じ中高生の集団だと?
「……どういう事だ」
単なる子供の集まりが集団で命を狙われる程の大逸れた事を?
何をしたらそうなる。
「知る必要はない」
答えて、煉は顔を反らした。
まるで見られたくないようだった。
ふん。
まあ、教えて貰えないなら仕方ない。
自分で調べるさ。
「……あと、加えて言うならばその団体は」
煉は震える声で小さく言った。
華奢な背中は小鹿の様で、あまりにもか弱い。
また泣いているのかもしれない。
「全員が能力者」
「なに?」
思考が止まる。
能力者だと?
11人全員がか?
つまり、一方的な殺しではない?
対等な"殺し合い"か?
「彼らを野放しにしておけば、能力の事が公になるのは明白。だから殺すの……でも安心して。貴方が殺す必要はない」
殺す必要はない?
「手伝いをするんだろ?俺は殺しの手伝いをさ」
「そうよ、でも大丈夫。私が全て殺す。貴方が手を汚す必要はない」
……こいつ、何を考えている?
殺す事に意味があるのか?まさか得点制なのか?
高得点で報酬でも出るのか?笑えるぜ。
「……なら、俺はどうすればいい」
「後ろで見ていて。貴方は私が守るから」
「今日、私と吉根美山に向かい、敵を殲滅してほしい。後で迎えにくる」




