未帰還者#2/9
何故泣くのか俺には解らない。
さっきから疑問符ばかり浮かぶ。
整理するにはまだ、情報が少ない。
でもこれだけはわかった。
俺は、彼等の強いる"俺を生かした目的"からはただでは逃げられないらしい。
†
「失礼した」
俺は少女に起こされた。
少女は寝起き早々の俺に淡々と謝罪した。
「……寝ていた?」
っていうか寝落ちしていた。
敵がそばに居るという、ある意味極限状態の最中眠ってしまった。
ベッドに寝転がっていたというだけで、眠ってしまったのか……
ああ、麻酔の残りのせいか。
「可愛い寝顔だった」
……なに?……な、なんだって?
今は理由があるから生かされてるにせよ、命のやり取りをする相手に言う台詞じゃないよな。
……なんなんだ?
この女、読めない……。
いや、バカにされたのか?
「申し遅れた、私の名前はレン。火に東で煉」
……レン?
煉と言うのか。
……レンか。
そんな知り合いが昔居たような……気がする。
誰だったか。
「早速だが、お前。俺に何か」
「私の名前は煉。お前ではない」
……は?
しゃべってる最中に言う程のことじゃないだろ。
昔から、しゃべってる時に横から遮られるのは大嫌いだった。
大したことでなくても、大変不愉快に感じる。
まさかこの女、俺の嫌がるツボでも知ってるのか。
「いいから本題を明かせよ」
俺とこの女の間にはには礼儀は必要とは思わない。
訂正せずに話の続きを促す。
いずれは殺し殺される間柄だしな。
「その前に一ついい?」
「なんだよ。早くしろよ」
煉は俺の手を握って、上目遣いに此方を見てきた。
ははん。
なるほど、色仕掛けか。
下らない。
人間嫌いな俺には通用しないぞ。
その程度の自制心はある。
眠った事で俺の頭の調子も戻りつつあるようだ。
「私の事を、煉。……って呼んでほしい」
「断る」
「お願い」
眉が斜めにキュッとキツくなる。
真剣な証拠だ。
……別に気圧されてなんかいない。
呼ばなくては話が進まなそうだな。面倒くさいが、呼ぶだけで済むなら、済ましてしまうか。
「……れ……煉」
呼んでやった。
俺がいつか必ず殺す名前を。
今は泳がせるが……必要なら、不意討ちでも……
いやいや、ここは下手に焦らない方がいい。
殺すタイミングはじっくり検討するべきだ。
まだ話が終わってないしな。
「……し、紫苑……」
煉は恥じらうように肩をモジモジさせながら、呟くように俺の名を呼んだ。
俺の名前を知ってるのか。
……まあ敵を調べるのは当然か。問題はどこまで知っているのかだな。
そして、今からお前らの事も調べあげてやる。内側から……じっくりとな。
まずは、まあこの位なら聞いても良いだろう。
「俺の名前を知ってるんだな?」
すると煉はためらってからコクンと頷いた。
目を丸くして、少し眉が下がった?
どうしてだ?
いや、いずれ解るだろう。
それより、今は隙を見て監視下から離れる事。反逆の狼煙はそれから上げる。




