未帰還者#2/5
よし、歩ける!
浮かぶ盾もある、俺自身を攻撃から身を守ることには、不自由しない。
敵が出てきたら、杖がわりにしてる死神から手を離し、殺させて。俺はその間、盾に隠れて休んでいればいい。
戦える!戦えるぞ!
「殺す。何もかも、気に入らねぇもんは全てぶっ壊して処分してやる!!」
「ダメ」
内から沸き立つ殺意の奔流が、俺を呑み込んで押し流した。それに逆らえず、少し衝動を発散させようと吐き出すと、女性の声が否定する。
その声は、か細く弱々しいが、キッパリと凛とした張りのある声だった。
……早速、獲物が来たか。
声がした方を見る。
扉が開いていて、包帯を持った、同い年くらいと思われる少女が立っていた。
青い、ドレスの様なフリフリのついたワンピースを着ている。
下に穿いている白い薄手のスカートが見えるところは、リボンがクロスしていた。
薄暗い室内の上に、扉の向こうのが光が強く、逆光になっていて、目を凝らしても顔のディテールは、よく分からない。
まあ、いい。
これから殺す人間だ。
どうでもいい。
「代えの包帯を持ってきた」
そして、檻を破壊して死神を盾に今にも脱走しようとしている者に対して、普通にそんな事を言う。
なんだか、拍子抜けのあまり勢いが削がれた。
だが、身体の奥にある赤黒いどろどろとたぎる様な怒りまでは忘れてはいない。
「不要だ。そこをどけ」
殺す。こんなやつ、邪魔をするなら殺してしまえばいい。
「捕まったあなたを生かしたのは私、だからあなたは私の指示に従う義務がある」
……なに?
生かしただと。こいつが主犯か?
確かに、俺を生け捕りになんてせずに殺してしまえば済む話。
どんな理由があってか、俺を生かした。
実際、死神を使えるようになって、最初に出会ったあの拳銃のオッサンも、俺を殺す気でいた。
だが……。
「ふん」
この女は選択を誤ったに過ぎない。殺そうとしている相手を救うとは……。いや、捕虜が脱走しているのに、殺されるとも思っていないのだろう。
暢気な女だ。自分の無防備さを呪いながら、ここで朽ち果ててしまえ。
死神が俺から離れ、少女に飛び掛かる。
「ひゃっ!?」
重厚な刃が鋭く少女の身体を切り裂いた。




