未帰還者#2/3
邪魔な包帯をベッドに投げ捨てて、ゆっくり立ち上がろうとするも、四肢全てが血が止まっていた様に力が入らずに、ベッドに尻餅をついてしまった。
「くっ……」
厄介だが、これでは歩くことすらままならないな。
何か掴まるものは。
隅は目を凝らさないとならないほど、薄暗い部屋を見渡すが、天井、壁、床共に白い金属質なまっさらでベッドと汚い便器しか存在しなかった。
鉄格子の向こうは、立て掛けられた3つほどのパイプ椅子と扉だけの無地のコンクリの壁がただあった。
ここを出て、地上に向かうにはフロア中央の……エレ……ベー……タ……?
動揺しながら、円滑に進んでいた思考を止める。
……なんだって?
……何故俺は、エレベーターの位置を知ってるんだ?
だいたい、何故ここが地下だとわかった?
窓がないから?
いや、それで何故エレベーターの位置や、今いる場所がわかる?
何故。
俺は、まさか。
ここに来たことがあるのか?
……今は、それどころじゃない。
いや、地理がわかるなら好都合だ。
外に出て、調べればその理由も分かるだろう。
敵がウロウロしているだろうが、死神でねじ伏せてやる!
今度は上手くやるさ。
俺の西園に対する娯楽を邪魔した罪は重いぞ…
万死に値する!
俺は人が嫌いだ。
そして……プライベートを馬鹿な他人に妨害されるのが一等嫌いだ。
俺の中には抑えがたい怒りが溶岩のように渦を巻いていた。
それはすぐに周囲への殺意に代わり、薬で鉛のようになった身体を突き動かす衝動と欲求を与えた。
「俺の邪魔をするやつは……皆殺しにしてやる!全部……全部だ!!」
脳内で指示を出すと以前と同様に、黒い影を纏ったような死神がどこからともなく現れ、俺と外界を遮断する格子を切り裂いた。
「クククク……アーッハハハハハハ!!」
堪らない。
自分の得た力で嫌いだった人間を退けられる。
面倒だった世間体を気にする必要ももうない。
気に入らないなら壊せばいい。
邪魔なモノは処分すればいい。
不都合な人間は殺処分してやる。
あの組織の連中……散々邪魔をしてきやがって。
証拠となる凶器も死神なら残らない。
捕まる訳がない。
素晴らしい。
素晴らしい快感が身体を走った。
ここまで満ち足りた感覚は産まれて初めてだ。
身体中にみなぎるような充足感が、皮膚のしたまで張り裂けんばかりに詰まっていた。
髪をかき挙げ、膝まづいた死神の肩を支えに立ち上がる。




