未帰還者#2/2
鉄格子か。
鉄格子の向こうは天井に備え付けられた照明が半端についていた。薄暗い室内。
こちら側は裸電球の様なものがぶら下がっていた。
どうやら目を覚ましたらしいが、まだ頭の奥がぼんやりしてちゃんと動かない。
気力の抜けた重たい身体にむち打ち、ベッドから起き上がる。
ふわふわとした浮遊感を感じながら、以前何をしていたか思い出そうとした。
そうだ、西園に俺は……。
西園にどこまで話したか。
何故だか寝覚めが悪い。
悪いなんてもんじゃない、空前絶後に酷い。
頭はまるで、潤滑油の代わりに粘土を流し込まれた機械の様だ。
脳の芯が痺れたように働かない。
西園とはもう売られてもないカードゲームをして、
それから……
たしか一敗したんだったか。
それから2戦目の時、大山が割って入って来て…
なんで割って入って来たんだっけ?
あぁ、そうか。
ミイラの廃寺について鎌をかけたんだったな。
そして、去り際に全て知っていると話したんだったか。
……そこから……?
電車に乗って……駅について……っ!?
そうだ!黒いローブ!
ローブを追って、廃墟の路地裏で……。
鼓動が一回だけ大きく跳ねた。
捕まった……?
ここまで考えて漸く俺は、自分がどこに居るのかという疑問にたどり着く。
そんな自分が自分であまりに滑稽に見えた。
頭がまだ本調子じゃないのだから仕方ないが。
次に、自分の身体を見るとズボンはそのままだったが服は脱がされて、ところどころ簡単に包帯を巻かれていた。
止血材のような分厚い布はなく、包帯を取ってみると薄いガーゼが貼られていて、その下は痣と、よく見ないと判らないような小さな傷があった。
この傷の様子からして、廃墟の窓から狙っていたあれだけの銃は、全て麻酔銃だったらしい。
幸か不幸か……。連中は俺を殺す訳には行かない様だ。
嘆息を漏らす。俺は連中に生かされている……その事実が屈辱だ。重苦しい……憂鬱だ。
あれだけの麻酔銃を撃ち込まれたんだ、頭がぼんやりするのも身体がダルいのも無理はない。
麻酔が完全に抜けるのを待つしかないか。
それより、ここを抜け出して連中に一泡吹かせてやらないと気がすまない。
まだ万全ではないが身体を引き摺ってでもこの檻から逃げなくては。




