未帰還者37
「……なんだ、知ってたの」
「ああ、知ってた。君の母親が亡くなった事も。この家が、西園君の現母方の叔母の家だって事もな」
空気が変わった。
西園君の表情が変わった。
それ以外何も変化はないが、この場は
本当に楽しそうな笑顔から能面のような笑顔に変わった。
三日月型では有るが、探るような暗い瞳だった。
「……そう。でも僕はここをそんな風に思った事はないよ?」
彼はまた、カードを場に出したが、もはや俺はもう小学生時代の玩具なんてどうでも良くなっていた。
「叔母さんや……お、お母さんは僕にとっても優しいしさ」
お母さんと呼ぶのを躊躇った。
家庭に問題がある。
少なくとも、こいつはストレスを抱えている。
「なら、わざわざあんなところに入り浸るのかな?」
「え……」
机の横にある、マーキングがされた地図を指して言った。
「俺は近隣の心霊スポットは全て行き尽くした。誘われても断るほど、飽きるまで出入りしたんだよ。その心霊スポットは、あのマーキングされた場所だ」
西園君の張り付けたような笑顔が僅かに歪んだ。
「僕は、オカルトが好きだから、そうしているだけだよ。いつもいる訳じゃない」
「そうかな。なら何故……あの寺に君は居たのかな?あんなおかしな寺に……」
顔色がみるみる変わっていく。
机の横の地図の赤い点でマーキングされた場所には、吉津根美山……人食い寺も含まれている。
そして彼は居た。
間違いなく。
「あんなに沢山の……木の塊の様なものが横たわる寺にさ」
「僕は……何も知らない……ただ……やり返して欲しかったから……願っただけだよ!」
彼は顔を真っ赤にして取り乱して願ったと言った。
……願った……?
里中への殺害を何に……願ったんだ?
神か……?
いや、何にせよ知らないはずない。
しっかり地図にマーキングされている。
それにこの話題に願ったって……
やはり何か知ってる。
いや、ひとつしかない。
例の赤い黒羽の天使……。その能力者。
「願って誰に……?」
もうここまで来たら西園宗一郎が使い手で間違いないだろう。そう思っていたが……違うのか。
こうなったらもう一押し……
「はいはいストーップ!」
な……
追撃するための文言を考えていると、西園君と俺の間に大山が割って入ってきた。
手を床についてハイハイの1っ歩目の様な姿勢だ。
一応カードを踏まないように気をつけて居る。
そして、まずは西園君の方に顔を向けた。
「西園君!落ち着いて!紫苑!一体何の話をしてるの!?」




