未帰還者36
カードを片付けていると、大山は俺にどうなったのかと訪ねてきた。
どちらが勝ったのかわかってない様だ。
まあ端から見たらそうだろうと思うが当然、勝ったのは俺だ。
逆転である。
基本的に低いクリーチャーレベルほど安値で手に入る。
小学生の小遣いでは満足なカードを揃えられず、ランダム5枚入りのパックを宛もなく買ってはレアカードを思い浮かべたもんだ。
ハズレカードが大半で、大抵クリーチャーレベルは1~4が大半だった。
このブラックセメタリーファングはその1パック5枚の中、たまたま引いた唯一のレアカードである。
このカードがあれば、低いレベルを集めて数字比べに負けて行けば今回の様に逆転が狙える。
経済的なデッキだ。
当然成功率は低いが、幼少期の俺には最強の秘密兵器だった。
ある意味このカードもハイリターンなカードではある。
と言うような事を西園君と二人で説明すると大山はわかってるんだかそうでないんだか、「ふぅん?逆転サヨナラホームラン的な?」と言った具合の返事をした。
まあさておき、試合が終わっても興奮冷めやらぬ彼は、墓場の番人。ブラック・セメタリー・ファングを3枚渡してきた。
レベル1同名のカードは4枚まで入れられる。
デッキにカードを入れられるのもクリーチャーレベル毎に「何レベルは何枚まで」等決まりがあったのだが、詳しく覚えてないなこの辺のルール……。
デッキを切り、2戦目をしながら俺は考えた。
西園君の中の暗い過去について。
だが恐らく、鎌をかけるなんて回りくどい事はしないほうが良い。
直球で勝負してしまわないと…
彼の中に眠る物が姿を表す。
「西園君が学校にこない理由を考えたんだけどさ…」
俺はカードを置きながら呟いた。
クリーチャーレベル4、天秤天使。
「西園君…もう里中は居ないんだぜ?」
パチリと、西園君の置いたカードが音をたてた。
親指の腹に僅かに角を引っ掛けると、カードの元の形に戻ろうとする力で床に叩きつけられてパチリとなった。
クリーチャーレベル6死を拒絶する天使。
「……僕は、里中なんてどうだって良い。里中より、あの学校が嫌いなんだ」
彼の非常に弱々しい声が、核心を突いた事を実感させた。
「そう?でも、君にはこの家も……」
カードを5枚裏の状態で捲りながら、西園君の真似をして置くときに親指でカードを弾いた。
パチリ……
「居心地は悪そうだって思うけどね」
パチリ……
「だって、」
パチリ……
「君にとってこの家は」
パチリ……
「他人の家なわけだろう?」
パチリ……




